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K side
酔っ払いの騒動から1週間くらい経った。あの日から毎日、少し酔ってた色気のあるルイさんを思い出しては身体が熱くなっている。あと、顔が近くなったあの一瞬も…。
ルイさんは変わらず毎朝来てくれて、会話も少しするようになっていった。でも困った事が一つあって…
R「まだおでこ痛みますか?見せて」
細くて白い長い指が俺の前髪に優しく絡んでくる。さっと見て終わってくれればいいのに、ゆっくり焦らすように髪をかき上げるのだ。
うわっ…、くすぐったい…。
K「ぁッ…ッ」
我慢しているのに不覚にも声が出てしまう。
ルイさんはそれを満足そうに笑って見ている。
そんなやり取りが例の一件の後、ずっと続いているのだ。もう大丈夫なのに、完全に治るまでと言って毎朝の確認をやめてくれない…。
『湯本くん、今日あの格好良いお兄ちゃん来ないの〜?』
パートさんに声をかけられる。
そういえばいつもの時間を過ぎている。
寝坊して立ち寄る時間が無かったのかな。にしても珍しいというか、初めてだ。
考えていると、
『あのさ〜、昨日店の前でこれ拾ったのよ、あのお兄ちゃんの免許証!』
ずいっと手渡される。
ほんとだ、真面目な顔の綺麗なルイさんの写真が付いている。
『来たら渡しといて♪どうせあなたに会いに来るでしょぉ〜』
ニヤニヤと笑うパートさん。
俺とルイさんが付き合ってるとかないとか、主婦さん達の間で噂になってるらしい。
K「分かりました。会えたら渡しますね」
その後、ルイさんは店に現れず、俺は昼過ぎに退勤。次の日の朝になった。
今日は会えるかな。
一日会えないだけで寂しい。
毎朝の怪我の確認だって、困惑しながらも期待してしまっている自分がいる。
K「…来ない…」
ルイさんどうしたんだろう。
事故とか怪我とかじゃないといいけど…。
こんな時に連絡先を知っていればと後悔する。
『湯本くん免許証渡せた? 』
K「いえ、今朝もお会いできず…これずっと持ってていいんですかね」
『ね、大事な物だし…車に乗る人だったら困るから、渡しに行ったら?住所書いてあるでしょ?』
突然ルイさんの家に行くという選択肢を示されて戸惑ってしまう。
玄関で渡して、すぐ帰ればいいんだよね。
部屋の中に入って…とか、よこしまな考えを消すように頭を横に振る。
K「はい、近いので行ってみますね」
確か21:00には帰宅してるとか話してたな、一回家に帰って待機してから向かう?でも心配だし、すぐに行こうか…。
あれこれ考えていたが、足はもうルイさんの家に向かっていた。
コンビニの最寄り駅の反対側が住宅街になっている。
そこから5分ほど歩くとおしゃれで綺麗なマンションが建っていた。
あ、ここかも。
マップと免許証と見比べて再確認する。
うひゃー、こんな高そうな所にルイさん住んでるの。俺と歳あまり変わらないのに…。
エントランスのインターホンを見つけて早速操作する。
K「6…0…1…と」
間違えないようにしっかり押す。
ピーンポーンピーンポーン…
………
出ない。やはり仕事だろうか。
念の為もう一度押す。
ピーンポーンピーンポーン…
R『…ガタッ……はぃ…ぁ、れ…カノンさん…?』
力の無い声が聞こえたあと、ロックがはずされ自動ドアが開く。
突然すみませんとか、免許証を渡しにだけ来ましたとか一言考えていたのにすぐに通信が切れてしまった。
嫌な予感がして足早に中へ入っていく。
【601】
ここだ。再びインターホンを押す。
出てこない。
もう一度。
反応がない。
どうしよう…。
試しにドアノブに手を掛けてみると動いた。
鍵がかかっていない。
開けますよー…心の中でそう言ってドアを引く。
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