カルドの『止まれ』という言葉に、オーターの体はピタッと止まった。
オーターはすぐに体を動かそうとするが、指一本さえ動かせなかった。
(体が動かない。これは・・・魔法か?だが、カルドが呪文を唱えた様子はない。だとすれば。)
「カルド。貴方、コーヒーに一体何を入れたんですか?」
カルドに背を向けたままの状態で、オーターは冷静に問いかけた。
「へぇ、流石だね。この状況でも冷静でいられるなんて。」
「もう一度聞く。コーヒーに何を入れた?」
オーターが低い声で圧をかけながら問いかけると、カルドはニッと不敵な笑みを浮かべたあと話し始めた。
「君が飲んだコーヒーの中にはね、一時的に相手の動きを封じて、意のままに操る事が出来る薬が入っていたのさ。」
「・・・なるほど。そのような危険な薬を何処で手に入れた?そして何故私に飲ませた?」
「ツララに上手い事言って・・・ね。快く作ってくれたよ。何故君に飲ませたのかは・・・それはオーター、君が一番よく分かっているんじゃないのかい?」
カルドはソファから立ち上がり、ゆっくりとオーターの方へと向かって行く。
コツ、コツ、コツ、コツ。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ。
カルドの靴音がだんだんと近づいて来るにつれ、オーターの心臓が嫌な音を立て始めた。
そしてカルドはオーターのすぐ後ろまで来ると、動けないままの彼の体に腕を回してギュッと抱きしめた。
「・・・捕まえた。」
ゾクッ。
「カ、ルド。」
「僕はね、オーター。この間君の事を怯えさせてしまったようだから、次会った時に怯えさせないようにしようって思っていたんだよ?・・・なのに君ときたら、あからさまに僕の事避けるんだもの。しかも部下を使ってまで。流石に僕もショックだったよ。」
オーターを抱きしめたままカルドが悲しそうに呟いた。
そのあまりにも悲しそうな声に、ズキッとオーターの胸が痛んだ。
「・・・・・ッ。」
「だからね、君がそうくるならもう容赦しないって決めたんだ。・・・・・今から君を奪う。」
「奪・・・う?」
「そう。ああ、こんな言い方じゃ分からない?君を今から抱くって事。」
「なっ!」
言葉を失くすオーターから体を離し、カルドは命令を下す。
「オーター。僕の方を向いて。」
「くっ・・・。」
「抵抗しても無駄だよ。ほら、こっちを向いてごらん?」
カルドの言う通りオーターの抵抗も虚しく、強制的に体ごとカルドの方へと向かされた。
お互いに向き合う形となり視線が絡み合う。
「ぁ。」
カルドと視線が合ったオーターが力ない声を上げた。なぜなら、カルドの糸目が開かれておりあの時と同じ、いやあの時以上にギラギラした目をしていたからだ。
オーターを見つめながら、カルドが続けて命令を下す。
「オーター、服を全部脱いで。僕に君の全てを見せて。」
「・・・・ッ。」
命令のままにオーターが震える手で服を脱いでいき、傷一つない美しい白い肌や細い腰が彼の目に晒され、カルドがほうとため息をついた。
「美しいね君の体。でもやっぱり僕の一番はこの瞳だな。」
「うっ。」
カルドがオーターの頬を掴み特徴的な螺旋状の瞳をうっとりと見つめる。
ーーーそして、こう告げた。
「さぁ、オーター。僕と一つになろうか。」
その言葉を聞きながらオーターは思った。
(ああ、私はどうやら誤った選択をしてしまったらしい。避けた事で彼の中の獣を目覚めさせてしまった。・・・もう逃げられない。)
オーターは観念するように、カルドが焦がれてやまない蜂蜜色に光るその瞳をゆっくりと閉じた。
コメント
4件
オーターさんの獣感めちゃいい!!!!主さん本当に天才すぎませんか?
こんばんは!Rhさん。コメントありがとうございます!オーター、カルドに捕まってしまいました。はい、ああいう薬が入ってました。ちなみに薬を作ってもらうのにツララには、手に負えない魔物や犯罪者相手に試したいと言ってあります。カルドの獣っぽさを感じていただけたようでよかったです。話は、もう少し続くので引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
オーターさんついにカルドに捕まってしまいましたね。 絶対コーヒーに何か入ってるんだろうなとは予測してましたが、ああいう薬が入ってたんですね、驚きです カルドの獣っぽさが凄くゾクッとします