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9 - 第9話 消えたCIA諜報員

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2022年12月31日

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優しくノックして入ってきたのは、生徒会で、風紀部長の彼方倫だった。

「倫ちゃん。久しぶり。生徒会どうなの?」

「良い感じだよ。それより、相談したいことがあって……」

倫は胸ポケットから写真を取り出した。

「この人は?」

「彼を調べてほしいの」

写真の中には、眼鏡をポケットに入れている、ハイネックの男だった。

「名前は、夏畑海(なつはたうみ)。彼は、CIA諜報員だったんだけど、2年前に殉職してしまった」

「2年前に⁉」

倫は無言で頷いた。そのあとに、「まあでも、小6の時の卒業式で亡くなったから、正確に言えば、1年と1か月」と続けた。

「じゃあ、パソコンにあったあの記事は、この人の事だったってこと⁉」

「どうでしょうね。2年前と記載しているから、少なくとも1年8か月は経っているはず」

紗季と歩美は頭を抱えた。その様子に、倫は「えっ」と声を出した。

「どうして一般人であるあなた達がその事件を知っているの?」

「だって、いきなりパソコンを開いたら画面に映っていたんだもん」

歩美は不思議そうに倫を見つめ返す。

「その事件は、表向きは事故として処理された。その事件の詳細、及び資料を持っているのは公安警察だけなのに」

倫は俯き気味に考えた。

「じゃあ、公安警察がここに侵入してきて、あの記事の内容を調べていたってこと?」

倫が二人に問うと、紗季は「そう言う事になるわね」と答えた。

「2年前に亡くなったのは、また別のCIA諜報員。女性諜報員だったんだけど、死因は溺死。一方で夏畑さんの死因は銃殺。女性の方は何とか事故死にできたが、夏畑さんの方はそういうわけにはいかなかった。だから、事件諸共闇に葬ったの」

倫が冷静に淡々と話している様子を見て、歩美は訝し気な顔をした。

「ちょっと待って、この事件の内容を知っているのは、公安警察だけなんでしょ?なんで政府の人間である倫ちゃんが知ってるの?」

「それは、公安の仲間だっていう人が、私のところに来て、その事件を教えてくれたの。同じ小学校だったお前なら何か知ってるだろって」

倫は写真を指さして言った。

「この写真もその時にもらったもの」

「その公安の仲間だって言ってたのは誰だったの?」

倫は口を噤んだ。ただ、10秒ほどしてから、意を決したように、紗季の方を見つめながら言った。

「松村、松村龍雅が、私に尋ねてきたの」

「ま、松村が⁉」

歩美よりも驚いていたのは紗季の方だった。

「そう。どうやら、公安の協力者らしい。何のかは教えてくれなかったけど」

「うーん……よくわかんないけど……とりあえず、彼の事について調べればいいってことだよね」

歩美がそう言うと、倫は「そう」と言った。

「じゃあ、先払いで払っておくね」

倫は財布を取り出し、1,000円札を机に置いた。

「うん。ありがと」

歩美は1,000円札を手に取った。

「ねえ、CIAってことは、米秀小学校ってことだよね」

紗季は歩美の方を見ながら言った。

「うん。となると……米秀小学校の人間に聞かなくちゃね」

歩美は、スマホを取り出すと、ある人物に電話をかけた。


「はあ⁉俺に着いて来いって?米秀小学校に?」

尚は自分の方に指を向けながら言った。

「そーう。お願い」

「無理だ無理。俺今から仕事だから」

尚は家庭科室の帰りだったようで、小麦粉を大量に抱えていた。

「尚くんってなんの仕事だっけ?」

「たこ焼き屋。持ち帰りOKだよ!寄ってく?」

「大丈夫遠慮しとくわ」

紗季はそう言って、その場から去った。

「ああ、米秀小学校に着いて調べてるんなら、雪に聞けよ。アイツも米秀小学校の出身だから」

「うっ……うそでしょ……。雪ちゃんに聞くのー?」

「まあ、それ以外に居ないだろうし、今日は絵菜も塾の宿題が残ってて、付き合ってくれないだろうし」

2人はそう言いながら、4組に続く教室へと歩いていた。


「え何?あたしに依頼の協力をしてほしいって?」

雪は尚と同じように、自分を指を指して言った。

(さすが幼馴染、なんか似てる)

「うん。手伝って」

「うーん、ま暇だし、手伝ってやってもいいぜ」

「よし。ありがと」

歩美はそう言って写真を見せてきた。

「この人は?」

「彼は夏畑海。CIAの諜報員だったが、1年前くらいに死亡。同じく2年前に亡くなった女性は、名前は不明。表向きでは事故死として処理されている」

「ふ―ん」

雪は写真を手に取ると、その写真をじっと見つめた。

「分かった彼に着いて調べればいいんだな」

「うん。だから、さっそく米秀小学校に行くよ‼」

「え?今から⁉」

雪は驚いて、歩美の方を向く。

「勿論。善は急げだよ‼」

「はあ⁉」

雪は歩美に手を引かれ、米秀小学校に行くことになった。


紗季が小学校の門にあるインターホンを押した。

「すみませーん。あのー保護者なんですけどー」

「はい。えっと……では門を開けますので職員室にお越しください」

インターホンから声が聞こえてきた。

3人の計画ではこうだ。

まず、一番背の高い紗季が、紗季に小学校に入り、残りの二人を、小学校の裏口から引き入れる、という作戦だ。

学校の間取りは雪が遠隔で紗季に教える。

(なんであたしがこんなこと……)

雪は内心そう思った。

耳にイヤホンを取り付けた。

イヤホンの向こうから紗季の声が聞こえてくる。

「侵入に成功。ここからどこに行けばいい?」

「そのまま真っ直ぐ行って左に曲がったら裏口に出られる」

「分かった」

紗季はそのまま、真っ直ぐ行って左へ曲がろうとした。

その時、ふと左を見ると、立ち入り禁止と書かれた張り紙のある部屋を見つけた。

「待って、立ち入り禁止の部屋を発見」

「そこ、鍵はかかっているのか?」

紗季はドアノブに手を伸ばした、すると、軽い感触だった。

「開いてるわ」

「……入ってもいいぞ」

雪はまるで、自分が所有者のような言い方をする。

「雪ちゃん?入ってもいいって何?」

「……」

雪は黙ったまま、その顔とともに、左手を下ろして言った。

「いや、別に……」

雪の顔には暗い影が落ちていた。

「気になるよ。やっぱり……雪ちゃん何者なの?」

歩美は雪に問う。雪は息を吸うと、意を決したように言う。

「あたしはお前らを信用していない」

雪はそう言うと、左手を再びイヤホンに手を当てた。

「入ったのか?」

「ええ、でもここは……」

紗季の言葉に雪は悲しげな顔をして俯いた。

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