テラーノベル
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『……りんちゃん、さっきの……って、本当…?』
夕暮れの体育館裏。
風が少し冷たくて、🌸は腕を抱いたまま足を止めた。
角名倫太郎は、いつもの半目でスマホをいじっていたが、
その一言でぴたりと指を止めた。
さっきの一言——
軽口のつもりで言った。
『そういうとこ、嫌い』
本気じゃなかった。
ただいつもの悪ノリ、いつもの距離感。
でも、🌸には刺さっていた。
角名は無気力に見えて、内側ではわずかに焦った。
(……あー、やったな俺。普通に傷つけたやつ)
スマホの画面を閉じ、ポケットにしまう。
顔を上げると、少し眉を寄せた🌸が立っていた。
「嫌いなわけ……ないよ」
淡々とした声。
でもその裏の本気は、ちゃんと感じる。
「むしろ逆。好きすぎて、調子狂って悪ノリしただけ」
🌸が驚いたように瞬きをする。
角名は首を傾け、いつものゆるい声で続けた。
「……ごめん。
言った瞬間、“あ、これ普通に刺さるやつ”って気づいたけど、止められなかった」
自分で言っといて、自分で反省するタイプ。
「🌸、泣きそうな顔してたし。あれ見て……ちょっと、胸痛かった」
そう言いながら、じわっと目線を落とす。
「俺の悪ノリに本気で傷つくの……可愛いけど、しんどい。ごめん」
彼は一歩近づき、
🌸の顔をそっと覗き込んだ。
「ねぇ、そんな顔しないで。嫌いとか……言うわけないでしょ。
俺がお前好きじゃなかった日、ある?」
言葉は淡々。
でも内容は重くて熱い。
「むしろ……好きすぎて、たまにやらかすんだよね、俺。
自覚ない? 攻撃力高いの、🌸」
彼はくすっと笑い、
不意に🌸の頬を指でつついた。
「拗ねるの可愛すぎて……ちょっと意地悪したくなる」
そして、小声で決定打。
「……泣きそうな顔、写真撮りたくなるくらい好き」
「撮らないからね?」と慌てる🌸。
角名は肩をすくめる。
「撮らないよ。さすがに今日は。……さすがに、ね」
“今日は” と言ったのを聞逃さないあたり、彼らしい。
一拍置いて、真面目な声に変わる。
「……ほんとに、ごめん。
傷つけたくて言ったんじゃない。
お前のことだけは、絶対嫌いにならないから」
手を伸ばして、🌸の頭をぽん、と優しく触る。
「帰ろ。
今日は……甘やかす日でいい?」
さらに、耳元で低く囁く。
「後で、ぎゅーして?
……俺、ちょっと不安だったから」
その言葉が、ゆるい雰囲気とは裏腹に刺さる。
「ご褒美に……抱きしめさせて。
好きすぎて、まじで困ってるんだよ、俺」
その顔は、普段以上にクーデレで、
普段以上に愛が重かった。
コメント
1件
すぅー好きだわ、そういう人