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葵
その日の夜。
初兎ちゃんたちが帰ったあとも、
俺の胸の奥は、ずっと落ち着かなかった。
「……」
時計の音だけがやけに響く。
聞くって決めたはずなのに、
いざまろの顔を見ると、喉が詰まる。
リビングでは、まろがいつも通りソファに座って、 スマホを触っていた。
“いつも通り”。
それが逆に怖かった。
「……まろ」
「んー?」
「……ちょっと、いい?」
「どした?」
優しい声。
その瞬間、余計に不安になる。
俺は、ぎゅっと指先を握った。
「……昨日の、スマホの通知」
「ごめん、見ようとしたわけじゃないんだけど」
「うん」
「でも、気になって……」
「あの人、誰なの」
まろはしばらく黙ったまま、
スマホの画面を伏せた。
その沈黙が長く感じて、
心臓が嫌な音を立てる。
(やっぱり、聞かなきゃよかったかも)
そう思った瞬間。
「……元カレ」
「……っ」
思わず息を飲む。
胸の奥が、一気に冷たくなった。
まろは視線を落としたまま、
ぽつりぽつりと続ける。
「かなり前の話やけど」
「色々あって、自然消滅みたいになった相手」
「最近急に連絡来て」
「“ちゃんと話したい”って」
「……」
「でも、俺は返してへん」
「……え」
「だって今、隣にいてほしい相手はないこやもん」
「っ…//」
「昔は昔やし」
「確かに大事やった人ではある」
「でも、今俺が好きなんは」
「ないこだけやで」
安心したのか、
怖かったのか、
自分でも分からない。
ただ、
張り詰めていたものが一気に緩んだ。
「……っ、俺……」
「うん」
「やっぱりまろのこと好き、大好き」
「….急に言われると、はずいわ//」
「取られるのかなって、思った」
「アホ」
優しく頭を撫でられる。
「取られるとかないから」
「俺が選んでるんやで」
「……」
「ちゃんと、ないこを」
俺は堪えきれず、
まろの服をぎゅっと掴んだ
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