夢を見ていた…
『シン、今日もアッチーなぁ…』
『お前、すっげえな~』
『シンちゃん脇弱いんだな』
『楽しんでるか?シン』
出てくるのは、嬉しそうに笑顔話かけてくる湊ばかりだった。
「湊さん…」
うわ言の様にシンが言う。
『俺、笑ってるお前の顔好きなんだよ…』
(俺も湊さんの笑ってる顔が好きですよ………)
「あっ…起きた」
明日香が気がついた。
「すみません…俺…」
ハッとして、湊を見る。
「まだ目開けてないよ」
シンの聞きたい事を察して明日香が答える。
「少しは疲れ取れた?」
柊が聞くと、シンが頷く。
「丁度よかった。そろそろ面会の時間終わりだって。付き添いは1名だけだそうだから、俺達は帰るけど」
「はい…ありがとうございました」
立ち上がってシンはお礼を言うと、
「軽食とドリンク。明日香に下の売店で買ってきてもらったから」
柊は袋を差し出しシンに差し出す。
「とりあえず何か口に入れなさい」
「わかりました…」
差し出された袋を受取る。
「じゃ、行くね」
「じゃあね、シン」
そう言って2人は個室から出て行った。
夜の病院は一層静かだった。
湊の寝息意外聞こえてくるものはなかった。
薄いカーテンから月の光が差し込んでいる。
「今夜は満月か…」
シンはカーテンを開け、月灯りを室内に取り込む。
寝顔なんてもう、何度も見ているのに月灯りに照らされた湊の顔は今までに見たことのない程幻想的に見えた。
「湊さん…」
頬に触れる。
「起きてくださいよ…」
切実なシンの願いは湊にはまだ届かない。
顔を上げ窓の外の月を見る。
「なんでもするから…だから…どうかこの人を俺に返してください…」
縋るような思いで月に祈る。
その後、シンは湊に話しかけ続けた。
返答はない事は重々承知だったが…
眠ったままでも耳の機能は動いているはず。
自分が話しかける事で少しでも回復に近づけば…
そんな思いを込めて…
助けてもらった日の事。
初めて会った日の事。
笑った日の事。
喧嘩した日の事。
付き合った日の事。
一緒に住んだ日の事。
笑いながら、時には涙を浮かべながら。
たくさんの思い出話を朝までシンは続けた…
「おはよう。シン…」
ガチャン!!
「えっ?」
朝1番で訪ねてきた明日香がドアを開けた瞬間、部屋の奥から何かが倒れる音がした。
「どうしたの!!」
慌てて部屋の奥に駆け寄る。
「湊さん!!」
大きな声で湊を呼ぶシンの姿があった。
「まっぶしぃ…」
湊の声だった。
「アキラさん!」
明日香も驚くが
「俺!先生呼んでくる!」
すぐさま部屋を飛び出す。
「なんだ…騒がしいな…ってか、身体中痛い…」
ゆっくり起き上がりながら湊は自分の身体を確認するように触りながら確かめる。
ふと、横を見ると涙をボロボロ流しながらその様子を見ているシンに気がついた。
「なんて顔してんだよ。シン」
少し呆れたように笑う。
「せっかくのイケメンが台無しだぞ」
ほら。
やっぱり。
予想通りの言葉が出た…
可笑しくなって、泣きながらシンは笑った。
「なんだよ~」
いつもと変わらない湊が目の前にいる。
頭で考えるより先に身体が動き、湊を抱きしめていた。
「いてぇよ、シン」
昨夜のシンの願いが叶った瞬間だった。
ずっと…ずっと待っていました……
湊から離れると、涙を拭い湊の顔を見つめ約束の言葉を告げる。
「おはようございます。湊さん…」
「おはよう。シン」
おしまい。
【あとがき】
やっと終わりまで書けました。
いかがだったですか?
初の長編作。いや〜本当に言葉が出てこなくて何度も何度も書き直してやっと完結できました♪
この作品を思いついたきっかけを少し…
作者はほとんど毎日の様にみなしょー見ているオタクです笑
Season3がやるとしたら?から気がついたのが、Season1.2共に誰かが入院している設定があると言う事。だとしたら、Season3があればまた誰か入院するんでは?なんて、安易な考えから思いついた作品です。
ドラマとリンクしながら、この作品を楽しんで頂けたら嬉しいです。
続き楽しみです♪なんてお言葉も頂けて舞い上がってしまいました笑
次回作はすでに書き始めていますが、また、ちと長くなりそう…
しんみな の困難を作者目線で描けたらと思っています。
その前に、ちょいちょい短編も書けたらいいな~
それでは、最後まで、拝読いただきありがとうございました♪
また、次回作でお会いできますように…
月乃水萌
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