あかねside
アクアくんの可愛い寝顔を眺めながらも、私はある問題に直面し、頭を悩ませていた。
私だとアクアくんを運べない…!
あかね)えぇ…どうしよ……
スマホを取り出し、連絡先をみる。アクアくんが誘拐された時、繋がりがあった人たちと全員と連絡先を交換した。友達が増えたみたいで嬉しいけど、今は冷戦状態になってしまい、気軽に会えなくなった。それは悲しくて、寂しいことだけど、みんなアクアくんの事を思っての行動だって事は同じ。お互いそれは分かってるから、余計に辛くなる。
ふと、1人の名前を見つける。
あかね)あ、この人なら……
私は、意を決して電話掛けることにした。
鏑木)やぁ、あかね君。待たせてしまって済まないね
あかね)いえ、それにいきなりお電話を掛けたのに、来てくださってありがとうございます
鏑木)あかね君の頼みだからね
電話を掛けたのは鏑木さん。この人なら頼りになるし、色々と縁がある。それに、アクア君をあまり外に行かせたくないという考えも一緒だから、警戒する必要もない。
鏑木)アクア君は僕の車で送って行くけど、あかね君はどうする?
あかね)私もついて行ってもいいですか?アクアくんを最後まで送り届けたいので
鏑木)構わないよ
鏑木さんはそう言うと、アクアくんの方に目を向けた。少し口角が上がっているのは気のせいだと思いたい。今は別れているけど、彼女の前でそういう反応をされると嫉妬してしまう。
鏑木)アクア君を見るとは久しぶりだ。やっぱり、綺麗な顔をしているね
…選ぶ相手間違えたかな。
もう少し慎重に選ぶべきだったと思った。
あかね)鏑木さんが綺麗な人が好みなのは分かりますが、少しは自重したらどうなんですか?
鏑木)言ってくれるね。かなちゃんに似てきたんじゃない?
あかね)そんなことありません
思わず、即答してしまった。恋敵であるかなちゃんと一緒にされたくないし、今は敵対関係でもあるのだから尚更。
鏑木さんがアクアくんをお姫様抱っこしたのには敢えて触れずに会計を済ませ、外にでた。
因みに、45800円だった。
鏑木)それより、最近のアクア君はどう?
あかね)どうって、言われましても……
車での移動中、話すことがなくて変な空気が流れていたが、鏑木さんが話題を出してくれた。それは良いんだけど、内容が内容だから、言葉選びには慎重になってしまう。
あかね)私も、今日久しぶりに会ったんですよ。アクアくんの事は、ルビーちゃんに任せっぱなしですので
鏑木)へぇ…意外だねぇ。あかね君のことだから、もっと積極的に動くのかと思ってたよ
その言葉に、心が沈んでいくのを感じた。
あかね)私じゃ、ダメだったんです
鏑木)…どうして、そう思うのかな?
あかね)アクアくんを救えなかったんです。あの日、アクアくんの人生を狂わせた人と話す為に、会いに行こうとしたんです
あかね)『これ以上アクアくんを壊さないで』って、言おうとしたんです
鏑木)…それはまた、思い切った事をしたね
あかね)話せば、分かってくれるかもしれないと思ったんです
あかね)でも、彼は私が思っていたよりも常軌を逸してた。私だけじゃ、彼に太刀打ち出来なかった…!
鏑木)アクア君を、救いたかったんだね
あかね)はい……
あかね)アクアくんは、私を助けてくれた恩人なんです。あの時、自殺しようとした時…目に映るものが全部真っ黒で、何も見えなかった。アクアくんがいなかったら、私はもうこの世にはいなかった
鏑木)……
あかね)あっ、鏑木さんを責めている訳じゃないんです!あれは、私が弱かったから……
鏑木)いや、あれは流石にやりすぎたと思ったよ。アクア君にもかなり怒られたしね
あかね)えっ、アクアくんが…?
鏑木)彼とは、その時期くらいからの付き合いでね。話す機会が多かったんだよ
鏑木)アイ君に関わるの情報を提供してたんだ
あかね)アイの、情報……
鏑木)あの頃は色々と疑問が残ってたけど、今になって母親を殺した父親の存在を捜してたんだと思うと、あの瞳にも納得したよ
あかね)あの瞳…?
鏑木)本人には言いたくないけど、ヒカル君によく似ていたよ
鏑木)全てを吸い込むような黒く、それでいて美しい……アイ君とはまた違った、天性の瞳だよ
あかね)……
鏑木)少し話しすぎたかな。アクア君に知られたら怒られてしまうよ
あかね)どうして、私に話してくれたんですか?
鏑木)口が滑っただけさ。さっきの話、アクア君には内緒で頼むよ
あかね)…はい
鏑木)そろそろ着くから、連絡を頼むよ
そう頼まれた私はスマホを取り出し、パスワードを入力したところで手が止まる。
あれ、どっちに連絡しよう……。斎藤さんとはまだあまり面識がないし、ルビーちゃんにしようかな。えっと…アクアくんが言うには、電話じゃないとすぐに気づかないんだっけ。
私は今となっては随分過去の会話に感じる内容を思い出し、ルビーちゃんニラ電話を掛けた。
ルビーside
インターホンが鳴り、私は慌ててドアの方に向かった。でも、相手が誰なのかの確認は忘れない。ママみたいな事は起こさせたくないし、何よりお兄ちゃんの精神がさらに不安定になっちゃう。
ルビー)あっ、あかねちゃんだ!
相手があかねちゃんだと分かり、私は安心してドアを開けた。
あかね)ルビーちゃん、夜遅くにごめんね
ルビー)全然大丈夫ですよ!鏑木さんもお兄ちゃんを送ってくれてありがとうございます!
鏑木)いやいや、アクア君には色々としてもらってるからね。ちょっとした恩返しだよ
ルビー)あはは……
私は正直、この人が苦手。悪い人じゃないのは分かってるんだけど、あの映画では色々と言われたから少し思い出しちゃって嫌になるだけ。それに、お兄ちゃんとの関係を意味ありげに言ってくるのもなんか癪に障る。
ルビー)お兄ちゃんはどこですか?
あかね)今は車の中で寝てるよ
鏑木)今運ぶよ
ルビー)いや、大丈夫です!
私がそう言って断ると、あかねちゃんと鏑木さんは驚いた顔をした。
あかね)ルビーちゃん、アクアくんを運べるの…?
ルビー)いやいや!私が運べるわけないじゃん!
鏑木)じゃあ、誰が運ぶのかな?
ルビー)それはですね……
私が名前を言おうとすると、後ろからバタバタと足音が聞こてきた。
?)ごめん、遅くなった!
ルビー)あっ、来た!
あかね)えっ……?
私はあかねちゃんの目が大きく見開くのを、笑いを堪えながらみていた。
あかね)ケンゴ、くん…!?
ケンゴ)あれ、あかねも来てたんだ
ふふん。ドッキリ大成功って感じだね!
続く
コメント
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あ〜〜〜〜まじで同じ人間か疑うレベル 視力が潤ったぁぁぁ
続きが楽しみ~ッ!!