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【裕仁のターン】
俺はゆめの実家でゆめの帰りを座して待つ。
って言うとカッコいいけど、実際にはゆめが買い物から帰ってくるのをソワソワして待っているだけだ。
そんな俺にお茶を出してくれ、そのまま隣にお母さんが座り声をかけてくれる。
「裕仁くん緊張してるわね、ゆめが心配?」
「えぇ、まあ。ゆめなら大丈夫だと思うんですけど、自分が動けないってこうもどかしいって言うか……はい、やっぱり落ち着かないです」
そんな俺を見てお母さんが優しく笑う。
「このタイミングで、こんなこと言ってしまっては駄目なんでしょうけど、私はもうあなた達の結婚を認めてるわよ」
「え?」
「今までゆめが、あんなに真剣に物事に取り組むなんて無かったもの。ましてや料理をするなんて私は完全に諦めてたんだから。それがちゃんと作れるようになった。その事実だけで反対する理由なんてないでしょう」
試合前に結果が決まってる事実に驚きを隠せず、顔に出ているであろう俺を見てお母さんはニコッと微笑む。
お母さんの言葉にホッとする半面、今買い物に行っているゆめに伝えたいような、せっかく頑張っているところに水を差すのは悪いような気持ちとのせめぎ合いが生まれる。悩む俺の目の前に座ってきた環姉がお菓子を食べながら口を挟む。
「それって八百長じゃん! 敵は最後まで胸の内を明かしちゃ駄目だって。最後まで心を鬼にしてゆめにプレッシャー与えてよ。あの子が必死に頑張っているんだから最後までやらしてやんなきゃ」
「はいはい、ちゃんと最後まで作ってもらうわよ。ゆめも一年間練習してきた意地もあるでしょうし、こっちの考えは分かってて料理勝負に挑むんでしょうから私も最後まで悪役やらせてもらうわよ」
お母さんと環姉の話は続く。お父さんもちゃんといるけど一言も喋らない。
実は一番緊張しているのでは?
勝利こそ約束されているこの勝負だがゆめは今までの練習の成果を見せてお母さん達を驚かせるはずだ。
たとえお母さんの意図に気付いてたとしても最後までやり遂げ手を抜くようなことはしない。
頑張れゆめ!
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【夢弓のターン】
「え~と里芋、里芋……あった。次はゴボウとにんじん、それから……」
私は今スーパーで食材を選んでいます。
お母さんから出されたお題は『筑前煮』『鮭の粕漬け焼き』『ワカメのお吸い物』です。
私はレシピノートから書き写したメモを広げ必要な食材を探しています。
料理に少し自信が持てたころメモを持たずに買い物に行ったら直ぐに余計なことが思い付いておかしな物を買いそうになってしまいます。
多分私はこう言う人間。それならそれなりの方法を見つけて行動するしかないんです。
「60点を目指そう」そうひろくんに言われた。50点よりなんか良い感じで頑張った感じの60点。
気づかない内に100点を目指してた私にとって救われた言葉でした。
「結婚生活も60点位の2人でお互足りない所を補って75点位を目指せば楽しくやっていけないかな? 志し低い?」
って聞かれたけど私にとっては嬉しい言葉でした。
真弓りの
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正直、料理以外でも不安だらけの私に気を使っての言葉なんだろうけど本当に人間が出来てると思います。
最近ひろくんは神様かなんかの生まれ変わりではなかろうかと思ってるぐらいです。
そんなひろくんの為にもこの勝負、負ける訳にはいかないんです‼
「お母さん鬼やから変な料理出したら結婚出来ないのは分かっとる。絶対に気は抜けん!」
私のお母さんこと華穗さんは鬼なんです。
中学生の頃飼っていたウサギ『メロンちゃん』の爪切りが買いたいとお願いし、出された条件が今度の英語のテストで80点以上取ることでした。
勉強の末78点を取った私はお情け補正もあるし、爪切りゲットは約束されたものだと思っていた。
「80点以上って約束でしょ」
確かにそう言う約束だからお母さんの方が正しいです。
それでも買って貰えると確信していた私は泣いた。そしてこの日私の胸に母は鬼である刻まれた。今回もそうに違いありません。
だがあのときの泣くだけの私とは違います。必ず勝利してみせます!!
食材をカゴに入れる手に力が入ります。
***
買い物から帰ってきた私はひろくんを一目見て気合いを入れ台所へと入る。お母さんの厳しい視線が刺さるが耐えます。
買ってきた食材を並べレシピノートと見比べながら作る順番をよく考えます。
この辺りがまだ課題なのだけど平行しての同時作業が苦手です。ひろくんがいるときは上手く誘導してくれるけど1人の時は1品ずつ完成させていく方法を取ることにしています。
余計なことは考えず作業は箇条書きで簡潔に、そして効率とか考えずに淡々とこなしていく。時間はかかるけど失敗するより何倍も良い。
忘れない内にご飯をセットしておく。後、鮭の切り身を酒粕と調味料に漬け込みます。
まずは筑前煮から作る。鶏肉はひと口大に切り、干ししいたけは水でもどす。
にんじんを切り、ごぼうは乱切りにして水にさらす。
こんにゃくはスプーンでちぎり、里芋は皮をむいて大きめに切ってぬめりを水で取る。
鍋を温めて油を入れ、順番に炒めていく。だし汁を入れ落とし蓋をして中火で煮る。
後は煮詰めれば終了です。
話しは反れるが筑前煮の切り方は乱切り、そう本当に乱だ! 味が染み込み易いらしいが私はこの切り方が好き。あんまり考えなくて切ればいいって感じの名前が良いです。
ちょっと皮とか残ってるけど良いのだ。皮が上手く剥けずにオロオロする私を落ち着かせてくれるひろくんの事を思い出すと力が湧いてきます。
次のワカメのお吸い物に移る。
先にワカメを水で戻しておく。
鍋に水を入れネギを加えて火に掛け沸騰したら出汁と醤油・塩などで味付けをする。
戻したワカメと薄く切ったカマボコを入れて完成させる。
最後に鮭の粕漬け焼き。これはお父さんの好物だ。お母さんに試されてるのがひしひしと伝わる。
温めたフライパンに油をひき、酒粕に漬け込んでいた鮭を取りだしそっと置く。ここからは焼くだけだが油断は出来ない余計なことは考えず焼き具合を観察します……これが成功すればひろくんと、にへへへへ。
「はっ!? うちは何を! 気合いを入れないかん!」
両頬をパチパチ叩いて集中する。焼けた魚を皿へ移していく。後はそれぞれの料理を器に入れて配膳するだけです。
完成した料理を眺める。
初めて1人でここまで出来た。切り方とか不器用だし台所も片付いてない。でもこれで良い。
私は物事を平行してやるのが苦手だ、これを受け入れたとき大きく成長で出来た気がした。
達成感からなのか涙が出てくる。涙が溢れないように食器に料理を盛り付ける。
「出来た? 配膳手伝うけど……」
タイミングよく台所の入って来たひろくんが私を見て優しく微笑むと頭を軽くポンと乗せる。
「泣くのはまだ早いって。美味しそうな料理を冷めない内に配ってお母さんたちをビックリさせよう!」
明るく言ってくれたひろくんに背中を押された私は一緒に配膳します。出てきた料理を見てお母さん達が驚いた表情を見せるが油断はしません!
味にも自信はありますが、ひろくんとの結婚を認めてもらうまでは気を引き締めておかないと新たな課題とか言われる可能性だってありますから。なにせ相手は鬼なのですから。
そして遂にお母さんの口に私の作った料理が運ばれる。
私もひろくんもこの後の展開、そしてそれがもたらす結果を緊張した面持ちで待つのです……
コメント
1件
うわあ、ゆめちゃん頑張ったね…!一人でここまで作り上げた達成感、すごく伝わってきたよ。お母さんが実はもう認めてるって知ってるのに、最後まで真剣に勝負に向き合う姿勢にグッときた。ひろくんの「60点でいい」って言葉がゆめちゃんの支えになってるのが沁みるなあ。次回、お母さんの反応が楽しみすぎる!