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※ 番外編
三枝明那 & 不破湊
〜 明那視点 〜
真っ白な、光だけが満ちる場所。
そこには校舎の影も、
自分を追い詰める冷たい視線も 、
何ひとつ存在しなかった。
先に目を開けたのは俺のようだった。
「……ふわ、っち……?」
自分の声が、泥を啜ったような掠れ声ではなく、澄んだ音色で響く。
足元を見ると、汚れきっていた制服は雪のように白く、
体中の痣や痛みは、まるで最初からなかったかのように消え去っていた。
数メートル先、ふわっちがゆっくりと体を起こす。
ふわっちもまた、あの屋上の縁にいた時と同じ、穏やかで少しだけ寂しげな、不破湊のままの姿でそこにいた。
「……あ、明那」
二人の目が合った瞬間、俺の視界が急激に歪んだ。
安堵か、
それともふわっちを道連れにしてしまったという罪悪感か。
あるいは、ようやく手に入れた
「誰にも邪魔されない自由」
への震えか。
「ぅ”ッ、あぁあ”……ッッ!!」
俺は子供のように顔を歪ませ、ふわっちの胸に飛び込んだ。
溢れ出した涙がふわっちの白いシャツに染み込んでいく。
「ごめん、ごめんふわっちッ……! 俺のせいで、ふわっちまで……! 本当に、これでよかったのかな……っ、俺、ふわっちのこと、殺しちゃったんじゃッッ……!」
しゃくり上げながら叫ぶ俺の背中に、大きな、温かい手が回る。
ふわっちは俺の頭を愛おしそうに撫でながら、
自分もまた、瞳から一筋の涙を零した。
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「何言ってるん。俺が、自分で行きたいって決めたんやん。……明那がおらん世界で一人で生きる方が、俺にとっては地獄やったんよ」
ふわっちは俺の顔を覗き込み、濡れた頬を親指で優しく拭う。
「泣かんといて。……ほら、見て。ここにはもう、明那を傷つける奴なんて一人もおらへん。俺と明那、二人だけ。……最高やん」
ふわっちの言葉に、俺は涙を流しながらも、ふっと小さく笑った。
「……最高、だね。……ズルいよ、ふわっちは。最後まで、かっこよすぎて」
二人はもう一度、今度は深く、深く抱き合った。
現世《あっち》では叶わなかった、濁りのない抱擁。
二人のすすり泣く声は、次第に穏やかな微睡みへと溶けていき、永遠に続く光の中に消えていった。