「……え……?」
静寂の中、風の音だけが鳴っていた。
目の前にあるのは――
階段の下、ぐしゃりと倒れたブラックの体。
動かない。
返事もしない。
血が、ゆっくりと床に染み込んでいく。
頭が真っ白だった。
時間が止まったみたいに、体も思考も動かない。
だけど――数秒後。
「……やばい……」
その言葉が、口からこぼれた。
「見られたら……俺、きっと……!」
震える指先。息が詰まりそうだ。
「みんなに知られたら…………」
あのときの声が脳裏にこだまする。
「「ふざけんなよ…いつも冷静ぶって…!」」
その言葉が、そのまま“殺意”になるなんて……誰にも、知られたくなかった。
俺は、ゆっくりと階段を下りた。
足音が異様に大きく響く。
ブラックは……動かない。
目も、口も、開いたままで。
「ブラック…?そうゆうドッキリなんだな…?」
声は震えてた。
けど、その手はゆっくりと、ブラックの腕を掴んでいた。
「ここに、いちゃダメだ……誰か来たら……」
手を引く。
けど、体は重い。
ブラックの頭が、階段の下段に“ゴトッ”と当たった音がした。
「っ……!」
俺はすぐにもう片方の手と足を抱え上げ、体をずるずると引きずった。
冷たい床を、血の跡がにじんでいく。
「ごめん、ごめん……!ちがう……ちがうんだ……!」
繰り返しながら、
体を押し入れの奥、まだ使われていない物置き部屋へ運ぶ。
誰も、見ていなかった。
見られていなかった…。それが、唯一の救いだった。
けど。
俺はもう、知っている。
この手が、
この腕が、
この心が
確かに、大切な仲間を殺したんだ。
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わお