「米子さんにとって、ポップスって何ですか」

俺は話を変えるのが、やっとだった。

「君にとってはどうだい」

「何で答えないんですか」

「俺の答えより、自分自身の答えの方が、何倍も大切なはずだよ」

この人は、いくら挑発してもその力を吸収してしまう。だとしても。こちらだって、負けるものか。

「わかりました。なら正直に言います。ポップスの会社って、クズですよ。リスナーの魂に深く刻まれるわけじゃない、ただ耳障りがいい、表面的なものを作るために命掛けになるなんて。それって、カネが儲かるから一生懸命になれるってのが、本当のところじゃないんですか？　そういう資本主義が、帝国主義が、世界のアートを殺しているんだと思います。それって、音楽に対する冒涜だと思います。心の中のポリシーに忠実に生きないなら、音楽なんかやるべきじゃないと思うんですけど」