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半分以上眠りながら、嘘みたいに捌かれ続けた生徒の一人がレイブに聞いたのが切欠(きっかけ)だった。
「レイブさん、俺剣が得意なんですけどぉ、使っても良いですかねぇ?」
夢の世界に居たレイブは条件反射的に答えた。
「はいはい、どっからでも良いよぉ~、ムニャムニャ~」
「うおりゃあぁー! くたばれやあぁっー!」
ガキッ! バキンッ! ボロボロボロ……
「あ? あああぁぁぁっ! お、俺の、里の皆が持たせてくれた、『それ専用』の剣がぁー!」
「ムニャムニャ、狙いは良い、只、素直過ぎる、ムニャムニャ、フェイントも入れると更に良くなる、ムニャムニャムニャ」
「くっ、くうっ~、あ、ありがとう、ございました……」
「はいはい、次の子ね、来なさい、ムニュムニャ~」
「は、はいっ! アタシは槍です! だ、大丈夫ですか?」
「応っ! ムニャムニャ~」
そんな感じで暫(しばら)くの間、レイブに対して徒手で挑む生徒は皆無となった。
剣を槍を短刀を、変わった所ではモーニングスターや戦斧(せんぷ)、戦鎚(せんつい)、バルディッシュや青龍刀みたいな物まで持ち出す始末であった。
殆(ほとん)どが赤い金属で拵(こしら)えられた、例の『鍛治の里』製の高価な物ばかりであったが、レイブの体に触れた途端、粉々に砕け散ってしまい修繕不可能なのは素人の学生たちの目にも明らかである。
中には錯乱し、傍に落ちていた岩を拾い上げて襲い掛かった豪傑も居たが、数秒後彼は武器と同様、パラパラに砕かれた砂粒の残った両手を天に向けて、大きな慟哭を響かせたのであった。
あの男に対してはどんな武器も無意味、ものの役に立ちはしない…… そんな畏怖とも尊崇ともとれない理由から、『役立たず』のレイブ、改めてそう認知されて行ったのである。
そんな日から数えて現在、今日もレイブの声は物流倉庫もとい、学院の備蓄庫の中に響く。
「おいジョディ! どうなってるんだ? 次の荷が出来ていないってコリャ問題だぞ? 竜達は待ってるんだからな! しっかりしてくれないとぉ!」
「あー、それライアのピッキングが間違いだらけで今大至急やり直させてるんですよぉ! サンドラが検品した荷だったら仕上がってますけど、どうします? そっちを先に出しましょうかぁ?」
「だな、そうしよう! どうせ行き先は同じだし問題ないだろう、良し、皆ラストスパートだ! 頑張っていこう、ミスは駄目だぞ! QCなQC、クオリティ上げて行こうや!」
「「「はいっ!」」」
漸(ようや)く今日の作業が一段楽しそうなムードの中、慌しく働くレイブの元に、明日の工程表を持ったシンディが近付いて声を掛けたが、その声は少し焦り気味の物であった。
「あれ? センター長、じゃなかったレイブ師匠! 今日って選抜試験でしたよね? 行かなくて良いんですか!」
レイブは伏せている青竜の背中に巨大なコンテナを縛り続けながら答える。
「ああ、あっちはランディに行かせたから大丈夫だろう、あいつはおっちょこちょいな所はあるが馬鹿じゃないからな、殺したりはしないだろうさ」
「大丈夫ですかねぇ~」
「大丈夫、大丈夫♪ それよりそこにある送り状取ってくれよー!」
「はい、これですねー」
こんな感じである。
実の所、今から二ヶ月位前、出荷の効率性を上げようと一念発起したレイブの提案によって、選抜試験である模擬戦は弟子たち五人、ラマスも含めた六人へと業務委託されていたのである。
レイブには敵わないまでも二年もの間厳しい訓練を共にして来た六人の前では、優秀で克己心(こっきしん)溢れる若者たちとは言え、てんで相手にならなかったのである。
学院、と言うよりもレイブが学生たちの選抜試験官を務める様に! と割かし厳し目に言い付けてきたズィナミやパリーグの許可は得ていなかった物の、ここまで大きな問題は犯していない、弟子達でもこと足りている筈だ、レイブはそう思っていたのだが……