「桜貝の思い出」
夕方の電車は、学生で混み合っていた。
ドアの前に立っていた私は、窓の外から 侑(ゆう)に視線を移す。
「そういやさ。 今年のオリエンテーション、いつもの海なんで無理だったの?」
「あぁ、茨城のこと? ビーチ周りを舗装してて危ないからって、今年は海を閉鎖するんだって」
「ふーん。 だから今年は房総なんだ」
侑の呟きを聞いて、ふと記憶の欠片が顔を出した。
(房総かぁ……あの時以来だな……)
ぼんやり景色を眺めていると、隣から大きなため息が聞こえた。
「…… 今さ、「房総」で思い出してるんだろ」
「え?」
「海で会った、ヒカルくんのこと」
驚いて顔をあげれば、侑が呆れた目を向けている。
「すごい侑! よくわかったね、そのこと思い出してたって」
「やっぱな……。 そんな目でぼんやりする時は、たいがいヒカルくんのことだよ」
「だって 溺(おぼ)*******
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