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「稜雅って、好きな人いる? 」
なんとなく聞いただけだった
…そう思いたかった
稜雅はスマホから顔を上げる。
「急になに」
「いや、なんとなく」
「いるけど」
心臓が嫌な音を立てた。
「…そっか」
できるだけ普通に返した。
「どんな人?」
「言わない」
「えーなんで?」
「言ったらお前が変に意識するから」
冗談っぽく笑う稜雅。
「しないし」
ーーする。
めちゃくちゃする。
だって好きだから。
稜雅のこと。
ずっと昔から
「じゃあ祐基は?」
「俺?」
「好きな人」
「…いるよ」
今度は稜雅が黙った。
「誰」
「言わない」
「なんで」
「言ったら稜雅が変に意識するから」
「…いやしねーし」
「ほんと?」
「…ほんと」
ふたりとも笑った。
そしてふたりとも心の中で同じことを思っていた。
ーー自分じゃないんだ
その夜。
祐基はベットの上で思った
稜雅には好きな人がいる
だから、もう少しだけこのままでいよう。
稜雅も同じ頃、暗い部屋の中で思っていた。
祐基には好きな人がいる
だから自分の気持ちは言わないでおこう。
そうしてふたりは、
いちばん近くにいるくせに、
いちばん遠いところにいた。
コメント
1件
ああ、もう…これ、きついやつだ(笑)。「いるけど」「いるよ」でお互いの心臓が止まる瞬間、すごく丁寧に描かれてる。同じ台詞なのに「お前が変に意識するから」って言い合う対称性が美しくて、でも最後の「自分じゃないんだ」で全部が裏返る切なさ。いちばん近いのにいちばん遠い、って一文が刺さりました。続き、気になります。