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『群青色の心中』〜貴方となら海の底まで〜
第2話 『上書きして。他の男に触られた所なんて。』
『けて、ボスキ…!!』
ドカッ!
ドアが蹴られボスキが入ってくる。
『おい。主様に何してんだよ。』
『お稽古中に担当執事の介入は禁止とされていますが?』
『それは、主様が泣いていてもか?』
『……。』
『主人が泣いてても稽古だと貫き通すのが執事のやり方なのか?』
『…。そうですね。お嬢様、失礼が過ぎました。でも。貴方の運命は旦那様が決めます。逃げられると思わないことです。』
バタンッ。
『……。』
主様はカタカタと震えている。
『……主様。』
俺は主様に自分の上着をかける。
『ボスキ…。』
『…ごめんな。これくらいしか出来なくて。』
私はフルフルと首を振る。
仕事のうち、そんなの分かってる。だけど。
グイッ!
私はボスキの手を引っ張りベットへと押し倒す。
ドサッ!
『っ、おい、主様……っ!』
『消して。』
『は…? 』
『お願い…消して。上書きして、他の男に触られたところなんて。』
『……。』
『ボスキが私のことなんとも思ってないってことわかってる。でも、消して。』
『…っ。』
俺が…主様をなんとも思ってないって…?
そんな訳ねぇだろ。
視界が反転する。気付けば俺は主様を押し倒していた。
『……今は忘れろ。執事と主の関係は
今の俺とアンタは…男と女だ。』
『ん…っ。』
夕闇に染まる空。2人の交わる影だけが
そこには広がっていた――。
『ん、ボスキ…っ。』
『…ん、今は俺に身を委ねとけ。メリア。』
『ふぁ……っ。』
熱い身体と吐息が2人の愛を証明する。
『ボスキ……。』
『メリア……。』
お互いの愛を確かめるように。手を繋ぐ。
この想いも今日だけ。明日には執事と主に戻る。
貴方はただ私のことを慰めに抱いてるだけかもしれない。それでもいい。貴方に触れられる。
それだけで幸せ。
俺のこの気持ちなんて、理解してないかもしれねぇ。あんたにはどう思われてるかなんて知らない。今のこれも、ただの慰めだと思ってるのかもしれねぇ。そんなんじゃない。俺はただ一人の男として――あんたが好きだ。
あんたと繋がれるなら――どんだけ罪を重ねてもいい。どれだけ罰を受けてもいい。
貴方となら\あんたとなら――
どこまでも堕ちていけるから。
次の日――。
『おはよう。ボスキ。』
『おはようございます、主様。』
『クスッ。前も言ったでしょ、2人の時は敬語で構わないわ。』
『そうだったな。』
いつも通りの朝。貴方の声で目が覚める。
『おはようございます、お父様。』
『おはよう。メリア。今日は顔色がいいな。』
『そうですか?いつも通りですよ。』
『今日のことはボスキから聞いたか?』
『えぇ。今日もお稽古でしょう?
お父様の期待に添えるように頑張りますわ。』
『そうか。何よりだ。ソウマ、今日もメリアに稽古を頼むぞ。』
『かしこまりました。』
『…お父様。私から1つ頼みたいことがあるのです。』
『なんだ、言ってみろ。』
『私に男性の誘い方を教える相手をソウマではなく担当執事のボスキに変えて欲しいのです。』
『…!』
『それはどうしてだ?』
『昨日ソウマに男性の誘い方を教わろうとしたのですがあまりに強引で嫌だったもので……。私も女性ですから、こう…。やはりムードというものが大事だと思うので…お父様もそう思いませんか?』
流石だな、主様。旦那様を欺くのが得意だ。
まるで、蛹から美しい蝶に化けるようだ。
『私ももうこの歳ですからそういうのには敏感なもので……最近は書物を開いて勉強してるのです。やはり、子を成すにおいてそういうのは大事だと思いませんか?もちろん、稽古もちゃんとこなします。これは、これだけは私の我儘でございます。』
『メリア…。』
『ボスキは私の担当執事ですから私とは良好な関係を築けています。なので、間違いはありませんよ。お父様は私のことを信用できませんか?』
じっとお父様を見つめた。
『…分かった。これからはボスキを相手に男の誘い方を覚えるといい。』
『ありがとうございます。お父様。』
ニコッと微笑む。
俺には分からない。主様の考えが。
どうして俺にそれを頼むのかも。俺は、男としてあんたが好きなのにそれを命令としてあんたから下されたら従わざるを得ないのに。
『ボスキ、頼んだわよ。』
『仰せのままに。主様。』
主様の手を取りチュッと手の甲にキスをした。
そして、いつも通りの稽古が始まる。
『お嬢様、どうしてボスキに夜の誘い方を教わりたいと?』
『お父様の前でも伝えたでしょ。私乱暴なのは好きじゃないわ。』
『……昨日のことは申し訳ないと思ってます。でも……あいつは粗暴でお嬢様のことを――』
『ソウマ。ボスキは私が認めた担当執事よ。
それとも貴方はお父様の決定に逆らうのかしら。』
『……いいえ。お嬢様がそうしたければ構いません。』
『さぁ、ソウマ。今日は負けないわ。』
私は剣を構える。
『……。』
『…ふぅ。』
『お疲れ様、主様。』
屋敷に帰り、今日の復習をする。
『ありがとう、ボスキ。』
『……主様。なんで俺に……』
『…ボスキしかいないからよ。』
『!』
『ボスキにとって私はどんな存在かなんて知らないわ。でも、私は1番信頼してるのよ。優しくてかっこよくて私に忠実な執事…そんなところが大好きよ。ふふ、もちろん主としてね。』
『…そうか。』
どこまでもずるい人だ。俺はあんたにいつも
狂わされてる。この苦しみを…いつか理解して欲しい。伝えたいのに、伝えられない、この気持ちを。
次回
第3話 『変わられましたね、お嬢様。』
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