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「ん? 妹ちゃん、なんか言ったか?」
隣を歩く悠真が、不思議そうに顔を向ける。
「い、いえっ! なんでもないです!」
咲は慌てて手を振り、誤魔化すように笑った。
悠真は一瞬だけ怪訝そうに眉を寄せたが、すぐに苦笑を浮かべる。
「……まあ、妹ちゃんが元気そうならいいけど」
(元気そう、か……。本当は全然、落ち着いてなんかいないのに)
咲は胸の奥で小さくため息をついた。
そのとき、少し先を歩いていた亮と美優が振り返った。
「おーい、二人とも! そろそろ屋台も閉まるし、帰るか?」
美優がりんご飴を持ったまま笑いかける。
「……そうだな」
悠真が答え、咲も小さく頷いた。
人混みから抜けた帰り道、咲の心にはまだ、花火の残り火のように悠真の言葉がくすぶり続けていた。