────── リアル鬼ごっこ
※ 王様 「あっきぃ」
王子 「しおん」
そう言われても、そんな方法を考えようとする者は誰一人おらず、ましてやそんなものを考えたくもない、というのが本音であった。
しかし、王様の機嫌を損ねないように、誰もが考える素振りを見せていた。
馬鹿王の顔色を常に窺っていなければいけない側近たちも、いささか疲れているに違いあるまい。
「どうした?何でもよいぞ、遠慮なく手を挙げて発言するがよい。お前は何か考えはないか?ん?」
そう声をかけられて実の弟は体をピクっと反応させて俯きながら、
「い、いえ……今は何も……」
あだ名どおりの馬鹿王め!
と心の中で軽蔑しても、口には出せない。
そして、再び沈黙が訪れた。
王様もその場で腕を組み、”う〜ん”と喉で声を出しながら考え込んでいる様子だった。
王様に忠誠を誓う側近たちも、そして実の弟ですらも、さすがになんの提案もしなかった。
物音一つしない静けさが部屋中に漂っていた。
皆下を向き、それぞれが考えるふりをしていたが、1人2人と上目遣いに王様を見た。
するとどうだ、あの王様が苦渋に満ちた顔をして真剣に考えているではないか。
今まで、国の政事(まつりごと)に関してさえもこんな表情を浮かべたことはないのに、馬鹿げたことだけは真剣に考えているのだ。
“馬鹿王”とあだ名されるのも頷ける。
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