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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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それから幾日かが過ぎた。

相変わらずシンは記憶を失ったままだった…



「珍しいな~。また、洗濯機壊れた?」

店を訪れたのは柊だった。

「いや…晃くんに話があって…」

「…?」



ガレージに場所を移す。

「どうぞ…」

柊の前に麦茶を差し出す。

「話って…?」

湊が切り出す。

「慎太郎とまた一緒に暮らしてるって明日香から聞いて…どうして?」

「あっ…えっと…どうしてって…言われても……」

柊の問に目を泳がせながら湊は答えた。

「明日香がもし慎太郎の様に俺の事忘れたとしたら、俺はきっと以前の様に明日香に接する事ができるか自身がない」

「自身がないのは俺も一緒です。だけど、そんな事どうでもいいって思える位…」

「……」

「あいつの事が大切なんです。一緒に居たいし、一番近くであいつを見ていたい。恥ずかしいけど…やっぱりシンの事……好きだから…」

照れ隠しのように頭を押さえて下を向く。

「……」

柊は少し考え込む。

「…柊くん?」

湊が声を掛けると

「記憶とは案外うわべだけの物なのかもしれないね…」

柊は湊を見てそう言った。

「…どういう意味ですか?」

「晃くんの事ほっとけないって…」

「えっ…?」

「慎太郎が明日香にそう言ったって…覚えている事が記憶の全てではないんだね。きっと眠った記憶の中にこそ真実が隠れているのかもしれない。慎太郎は晃くんの記憶そのものを失ってるわけじゃないから、無意識に。でもきっと今でも晃くんが一番大切なんだと思う」

「…だと嬉しいんですけどね……」

湊は苦笑いをする。

「互いに互いを想い合う気持ちって、俺にはまだ良くわからないけど…慎太郎と晃くんはすごく強い絆で結ばれているんだね」

「…ですかね……」

照れながら湊は頭を掻いた。

「湊さん…?」

「シン!」

学校帰りのシンが顔を出した。

「店覗いたら湊さん居ないから…ガレージの方から話し声聞こえて…柊さん?」

柊はシンの方を向くと軽く会釈をした。

「そろそろ行くね。仕事中に悪かったね」

「いや…」

柊は立ち上がりシンの脇を通り

「慎太郎また塾で…」

そう言って帰って行った。

「何話していたんですか…?」

シンが聞いてくる。

「…えっと……」

湊は言葉を濁した。

話すのを躊躇う湊にシンは

「湊さん。帰りましょう」

「おぅ…」


帰り道。

湊とシンは並んで歩いていた。

暫く歩いていると自然に… どちらかという訳でもなく引き寄せられるように… 互いの手を繋いだ…



「湊さん…」

片付けをしている湊の背後からシンが声をかけてきた。

「後は俺がやっておくから……」

シンにそう言うと湊は洗い物をしようと流し台に立ったが、真後ろでシンが止まった。

「シン…?」

シンは湊を後ろから抱きしめた 。

「…おぃ……」

「さっき…柊さんと2人きりでいるのすっげーイヤだった…」

「柊くんは明日香の恋人だろ…なんもねーよ…」

「柊さんが、とかじゃなくて…あんたが誰かと2人でいるのを見るのが…」

「嫉妬か〜笑。記憶がなくてもブレねーな笑」

「……」

「…どうした?」

「湊さん…キスしたい」

「えっ!?」

「俺達付き合ってるんですよね…?」

「……」

「観覧車(あのとき)俺達何もないって言ってたけど…キスもしてなかったんですか?」

「…それは……」

「俺はあんたにもっと触れたいし、もっと知りたい。前の俺がどんな風にあんたに接していたか知らないけど、今の俺はあんたを独り占めしたい…」

湊の肩を掴んで自分の方に向ける。

「ずっと我慢しようとしてたけど…限界だ…」

シンは湊の頬に触れた。

「ダメですか……」

シンの表情があまりにも寂しそうで…湊の方からシンに口づける。

「…!?」

予期せぬ湊の行動にシンは驚きの表情をする。

「お前が俺を避けたから…もしかしたらお前は嫌なんじゃないかと思ってた…」

「避けてないです!それに嫌なわけないじゃないですか!」

「…だったら…」

湊はシンの肩を掴む。

「だったらなんで逃げた?!」

「逃げてなんか…」

「逃げただろっ!お前がこの家に戻ったあの夜。眠れねーって言って部屋来たくせにさっさと逃げたじゃねーかっ!」

「あれはっ!!」

「さすがにあれはちょっと凹んだぞ…」

「……」

「……」

「……あんたを性の対象で見てしまったから…」

「…えっ……」

「あんたに欲情したんだ…」

「……」

「あのまま一緒にいたら俺はあんたを襲ってしまいそうで…自分が怖かった…」

「……シン」

「あんたを抱きたい…だけど…今の俺じゃあんたが苦しむだろうから…」

「なに言ってんだ…前も今も同じだろっ。俺にとっては同じシンだし、同じ位大切な恋人だよ」

「………ありがとう湊さん…でもこれ以上はやっぱりやめておきます」

「…なんで?」

「記憶が戻らなくても良いって甘えてしまいそうだから」

「俺はお前の記憶が戻らなくても大丈夫って…」

「じゃあどうして時々寂しそうに俺の事見るの?」

湊はハッとした。

見透かされていた…

「あんたは俺を見ながら、前の俺を探してる…どんなに頑張っても今の俺じゃ前の俺には勝てないって事ですか?」

「そんな事!」

「ないって言い切れます?」

「……」

「すみません…追い詰めるつもりはないんです。悪いのは全部俺だから…」

「シンっ!…」

「俺、先に寝ますね…」

部屋に戻るシンの背中はひどく淋しげだった…




【あとがき】

書きたい事が溢れて夢中になって書いてしまいました…

ここまではどうしても書きたかった話。ですが、この先はまだ迷走中です…

もう少し続くかな…

最後までお楽しみ頂けたら嬉しいです。

次回作で、またお会いできますように…

月乃水萌


みなと商事コインランドリー2.5【追憶の記憶】

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コメント

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めっちゃ良かったです😊 続きが楽しみです!(∩>ω<∩) 頑張って下さい! 応援してます!(p^o^)p

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