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翌朝の教室。
咲はノートを広げたまま、ぼんやりとペンを動かしていた。
黒板の数式が頭に入ってこない。
代わりに浮かんでくるのは――昨日の雨の帰り道と、悠真の横顔。
ふと視線を落とすと、ノートの余白に小さく文字が書かれていた。
「……えっ」
そこには無意識のうちに書いてしまった一文字――“悠真”。
慌てて手で隠すと、胸の奥が熱くなる。
――やっぱり、意識してるんだ。
認めたくないのに、もう誤魔化せない。
小さな文字は、咲の心の中でますます大きく響いていた。