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🌸第2話 打ち上げの夜
学園祭の喧騒が落ち着き、夕方のキャンパスには涼しい風が吹いていた。
演劇部の打ち上げは、学内のカフェテリアを貸し切って行われている。
「春川くんも来なよ! 今日の主役なんだから!」
「いや、俺は……部員じゃないし……」
「いいのいいの! 来てくれたら嬉しい!」
陽はまた押されていた。
断れない性格が、今日も発動してしまう。
カフェテリアに入ると、すでに賑やかな声が響いていた。
「今日のヒロインだ〜!」
「可愛かったよ、春川くん!」
「ねえ、写真撮っていい?」
陽は曖昧に笑いながら、
「いや、もうメイク落ちてるし……」と小さく返す。
そのとき。
少し離れた席で、ひよりが紙コップを両手で包むように持ちながら、
静かに陽を見ていた。
目が合うと、ひよりは小さく会釈した。
「あ……小鳥遊さんも来てたんだ」
「……うん。誘われたから」
ひよりの声は柔らかい。
冷たさはない。
でも、どこか距離がある。
「さっきは助かったよ。ほんとに」
「……別に。気にしなくていいよ」
ひよりは視線をそらしながら言う。
その仕草が、陽にはどこか懐かしく感じられた。
(……なんだろう、この感じ)
胸の奥がざわつく。
「春川くん、こっち来てー!」
演劇部の女子が陽を呼ぶ。
陽はひよりに軽く手を振った。
「じゃあ、また……」
「……うん」
ひよりは小さく返す。
その声は、ほんの少しだけ寂しそうだった。
🌙第2話 ひより視点
陽が離れていく背中を見ながら、
ひよりは紙コップをぎゅっと握った。
(……また、気づかれなかった)
期待していたわけじゃない。
でも、胸が少し痛む。
(昔みたいに話せたらいいのに)
でも、もうあの頃の自分じゃない。
素直に笑えた小学生のひよりは、
転校先で傷ついて、どこかに置いてきてしまった。
(……はるくんは、変わってないのに)
陽の優しさも、困ったときの笑い方も、
全部そのままなのに。
ひよりはそっと目を伏せた。
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