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その日は、本当にただの帰り道だった。
夜風が少し冷たくて、〇〇はバッグを持ち直しながら、一人で歩いていた。
「もうすぐ家だし」って、自分に言い聞かせるみたいに。
——でも。
背後で、足音。
さっきから、一定の距離。
止まると、止まる。
歩くと、またついてくる。
「……気のせい、だよね」
そう思おうとした瞬間。
「ねえ」
低い声。
振り向く前に——
ぐっと、腕を掴まれた。
「っ……!」
力が強い。
振りほどこうとしても、びくともしない。
「や、やめて……!」
声が震える。
心臓がうるさくて、頭が真っ白になる。
「ちょっと話するだけだから」
「離して……!」
その時。
「——手、離せ」
はっきりした、低い声。
次の瞬間、掴まれていた腕が解放された。
「〇〇!」
振り向いた先にいたのは、もと。
ひろはすぐに〇〇の前に立って、迷いなく距離を詰める。
「何してるんですか」
声は静か。でも、完全に怒ってる。
りょかは〇〇の腕を確認して、優しく引き寄せた。
「……大丈夫?」
「……う、うん……」
もとが一歩前に出る。
「二度と近づくな」
「次は警察呼ぶ」
3人の空気に押されて、男は何も言わず、舌打ちして去っていった。
——完全に、姿が見えなくなってから。
〇〇の足から、力が抜けた。
「……っ」
りょかがすぐに支える。
「無理しない」
「座ろ」
ひろは周囲を確認しながら、もとに目配せする。
「もういない」
「……〇〇」
もとが、〇〇をぎゅっと抱きしめた。
「……ほんとに、一人で帰らせてごめん」
「……怖かったよな」
〇〇は声が出なくて、ただ、もとの服を掴む。
ひろもそっと背中に手を添える。
「来てよかった……」
「間に合ってよかった」
りょかは〇〇の腕を包みながら、優しく言う。
「痛くない?」
「……少しだけ」
「……頑張ったね」
その一言で、〇〇の涙が溢れた。
「……こわかった……」
「……呼べばよかった……」
「呼ばなくても来た」
もとがすぐに言う。
「偶然でも、必然でも」
「〇〇のところに、ちゃんと」
ひろは〇〇の目を見て、はっきり言う。
「もう一人で帰らせない」
「約束する」
りょかは〇〇の手を握って、微笑む。
「怖い時は、強がらなくていい」
「守られるの、〇〇は下手すぎる」
〇〇は小さく笑って、涙を拭う。
「……ありがとう……」
「来てくれて……」
もとが少し照れた顔で、でも真剣に言う。
「当たり前」
「〇〇は、俺らの大事な人だから」
帰り道。
〇〇は3人の真ん中を歩く。
誰かの腕が、必ず触れる距離。
「……安心する……」
その言葉に、3人は同時に息を吐いた。
この夜、
〇〇を一人にする選択肢は、
最初からなかった。
コメント
3件
くっそー(_`Д´)_クッソォォォォ! 出遅れました、
早いでしょー😎