テラーノベル
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シャー!っと猫パンチしてくるサバシロ猫をサッとかわすのは、紀和莉莉(きわりり)。莉莉は前話、「保護犬保護猫物語 はるばるやってきたやんちゃ娘(猫)」の猫、銀姫と姫乃の飼い主でもある。見てない人は見てからの方がすんなり納得できるだろう。
さて、莉莉はノネコの預かりボランティアを始めたばかりだ。筆巻由墨(ふでまきゆすみ)が「紀和さんは初めてだけど少しクオリティが高い子をお願いしてもいいかしら?クオリティは高いと言っても低いほうなんだけど‥」と言った。「いいですよ。こちらこそお願いします。ねえ、まさ。」「ああ。いいぞ。お願いします。筆巻さん」「では、明日にその子を送り届けます。」
そして翌日、由墨は車を運転して猫を送り届けた。その様子を、「6007」というナンバーのピンクの車の側に立っている白と水色のしましまのブラウスを着たピンクメガネをかけたおばさんが見ていたが猫はそんなのは目に入らない様子で鳴いている。「すっごい鳴いてますね‥」莉莉がつぶやくと正幸も頷いた。「初めての環境ですからね‥」「やっぱそうか」「では、この子をお願いします。名前はついていないのでつけてやってください。」そう言って由墨は去っていった。
「まさ。名つけてやってくれない?」「え?いいのか?」「ええ。だって私は銀姫と姫乃の名前つけたでしょ?だから今度はまさ。つけてくれない?」「い、いいよ。えっと‥じゃあ、姫花(ひめか)っていうのはどうだい?」「姫香、姫香‥」なんども繰り返したあと、莉莉はにこっと花びらが散るように笑った。「とってもいい名前だと思うよ」と、ピコン。スマホの着信音が鳴った。「あ、筆巻さんからだ。」メールには、こう書いてあった。『紀和さん、言うのは忘れてごめんなさい。実は今日送り届けた猫は猫エイズのキャリアです。お伝えするのが遅れて申し訳ございません。』「まあ。ねえ、まさ。姫香は猫エイズなんだって。」「そうなんだ。でも姫香は幸せにしないとな。」とまさは言った。「姫香、ご飯食べるかな」「一応入れておくか」莉莉はごはんと水を用意した。正幸は、カメラを設置した。離れていても姫香の様子を確認するためだ。
そしてごはんと水を置こうとすると‥「シャー!」っと威嚇したかと思うと素早い動きで猫パンチを繰り出した。「ひゃっ!」莉莉は悲鳴をあげた。「大丈夫か?」正幸が言うと、莉莉は穏やかにゆっくり言いました。「いきなり捕獲されて、飛行機に乗せられて、知らないところに連れていかれて。それはシャーシャーは当然。ゆっくり仲良くなろう。」「そうだな」
姫香はシャー!シャー!の連続でしたが、三ヶ月もすると、ゴロゴロ喉を鳴らすようになりました。
「りーちゃん。明日の譲渡会、参加しよう!」「ええ」「どうした?やけに元気がないじゃないか。」「だって…」「だって?」「この子は猫エイズでしょ?猫エイズは人には移らないし、他の猫とかわりないけど…飼い主は見つかりづらいわよ‥」「りーちゃん。病気やハンデを超えて幸せにするんだろ?」「だけど‥」「ネガティブだったり暗い未来を創造しないで。姫香も腹の子も不安になっちゃうよ」正幸の声に反応するように莉莉のお腹の中の子がゆっくり腹を蹴った。「そうよね。姫香、絶対幸せになるわよ!」
そして翌日。開始から1時間半たつと、「あの‥」というか細い声がかかった。「はい?」「姫香ちゃんを申し込みたいんですけど」「あ、はい!ではこちらの申し込み書の記入をお願いします。」「はい」申し込んできた人は一人暮らしの女性だった。「書き終わりました。」「はい。ありがとうございます。結果はのちほどご報告します。」その女性が立ち去ったあと、莉莉はガッツポーズを作った。正幸もだ。「よかったな!」「うん。嬉しい!よかったね、姫香。家族が見つかるかもしれないわよ!」
申し込んでくれた人は名を北崎阿露江(きたざきあろえ)と言った。平成生まれだの、キラキラネームだ。今は一人暮らしだが、数日後には10歳違いの甥、北崎真希宗(きたざきまきむね)。阿露江は先住猫が5匹いるが、一匹は先日なくなったばかり。そして驚くことに全員猫エイズ猫だった。「猫エイズは行き場が少ないのでそういう猫を救いたくて、姫香ちゃんに声をかけさせていただきました。」と阿露江はいいます。
そしてトライアルが始まり、そして…シャリリリリン‥シャリリリリン。阿露江の家の電話がなりました。「はい。もしもし?あ、紀和さん。」相手は莉莉だった。「はい。此度、姫香を正式に譲渡させていただきます。」しばらく阿露江は声が出なかった。「…!ありがとうございます」「では失礼します」莉莉は電話を切った。阿露江は、「よかったね!香姫!これからうちの子だよ!」阿露江は、姫香に新しく、香姫(かひめ)という名をつけたのだ。一方、莉莉は嬉しいやら悲しいやらですが、「おめでとう。ひ‥香姫」
コメント
2件
なんか…すごいですね