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医者パロ過去編最終話
青視点→最後(現在の)黒視点
「…ずっとあにきのとこにおったん…?」
尋ねた俺に、ないこは目を合わせることなく頷きもせずだんまりだった。
とりあえず家へ引っ張って連れて帰り、ダイニングのテーブルに座らせたところだ。
「なぁ、ないこ」
「まろに関係なくない?」
改めてその名を呼ぶと、尖った言葉が返ってくる。
…うん、そうやんな。分かってる、理屈はないこの方が筋が通っているし正しい。
それでも退くことはできなかった。
「あにきやからいいけど、それでもずっと迷惑かけるわけにもいかんやろ!?」
「だから、それがまろに関係あんの? あにきもさ、俺らのこと心配して『早くまろと仲直りしろ』って意味で帰るように言ってきたけど、そのことを除けば居候すること自体は迷惑そうじゃなかったよ。一応掃除も料理も手伝ったし、家事ならある程度はできるし『助かる』って言ってくれたから」
「でも…!」
「俺だってさ、まろ」
こちらの反論を封じるように、ないこは堅い声で遮る。
それまで逸らし気味だったないこのピンク色の瞳が、まっすぐにこちらを射抜くように見据えてきた。
「俺を必要としてくれる誰かと一緒にいたい。そういう意味ではあにきのとこは心地よかった。家事を手伝えば『助かる』って言ってくれたし」
「……っ」
「まろみたいに、俺のこと邪魔だなんて言わない」
「ちが…っ!!」
叩きつけたかった声は、完全な言葉にはならなかった。
でも圧だけは伝わったのか、淀みなく言葉を紡いでいたないこが一度押し黙る。
その隙に、回らない頭なりに何とか次の言葉を絞り出した。
「邪魔やなんて思ったことない! ないこのこと必要としとるんは世界で一番俺やって、自信もって言える…!」
今まで押し殺してきた感情は、一度言葉にすると淀みなく飛び出してくる。
流れるようなセリフの最後に、ぽつりと小さく付けたした。
「好き、やから…」
ダイニングテーブルの上に置いていた両手で、ぐっと拳を握り込む。
一度それに視線を落としたないこが、向かいの椅子から「…まろ」と呼びかけ直してきた。
「俺に、キスできる?」
問われた言葉の意図が一瞬汲み取れず、瞬きを深く繰り返す。
ないこは冗談でもなくまっすぐこちらを見つめ返していた。
「…だから…気持ち悪いやろ、幼馴染がこんな想いでいつまでも隣におるなんて…」
問いには直接肯定も否定もしない。…いや、できなかった。
遠回しに認めた答えを返したきり、俺は握った拳に更に力をこめる。
唇はぐっと引き結んで噛み締めた。
がたん、とないこが椅子から立ち上がる音がした。
そしてテーブルの上に身を乗り出したかと思うと、俺の後頭部に手を回してそのままぐっと引き寄せる。
「ない…」
その名を紡ごうとした唇が、あいつのそれに塞がれた。
そっと触れるというよりは押し付けるような少し乱暴なキス。
それはないこの中にある苛立ちや、俺への不満なんかが乗せられていたのかもしれない。
その感情全てを受け止めるように、ゆっくりと目を閉じた。
重なり合った唇からじわりと熱が伝わってくる。
それと同時に、それまでもやがかかっていたような自分の胸の内が嘘のように少しずつ晴れていくのが分かった。
「……」
突拍子のないような、ないこのこの行動の意味が分からないほど鈍いわけじゃない。
それを裏付けるかのように、一度唇を離したときに、ないこはさっきまでの不機嫌そうな表情を一変させて言った。
「好きだよ、まろ」
笑ってそれだけ告げたかと思うと、また唇を重ね合わせてくる。
今度はそれに応じるように、俺も自らないこの頭を掻き抱くようにして引き寄せた。
テーブルの向こうから回り込んでこちら側に来たないこを膝の上に乗せて、何度も何度も角度を変えてキスを繰り返す。
細い腰を引き寄せるように抱き竦め、今まで抑え込んできた感情と欲望が全て放出されるような感覚だった。
「ないこ…」
やがて唇を離し、こつんと額と額をくっつける。
夢中でキスに溺れながらも、その最中ふと気になってしまったことがあった。
「ちゅー、うまない?」
重ね合わせた唇を薄く開いてくるタイミングも、差し込んだ舌に自分のそれを絡め返してくるのも。
…とても初めてとは思えなくて、浮かんだ疑問を思わず言葉にしてしまっていた。
「…誰とも付き合ったことないと思とったけど、違うん?」
聞いてどうしようとしていたのか、自分でも定かではなかった。
だって肯定でもされたら、きっと今まで考えもしなかった嫉妬が湧く。
そうなったとき、今自分を理性的に留めておける方法なんて知らない。
そう思ったけれど、ないこは額をくっつけたまま「ふん」と鼻であしらうように笑った。
「誰とも付き合ったことないよ。何年お前のこと好きだったと思ってんだよ。そもそも自分の気持ちをごまかすために他の誰かとわざと付き合うお前とは違うし」
「……知っとったん?」
違う人に目を向けようとわざと他に彼女を作ったとき、決してないこには悟られないようにしていた。
それでもどこからかバレてしまっていたらしい。
俺の問いに、ないこは答えなかった。
代わりにおかしそうにいたずらっぽく笑う。
「お前としかしたことないよ。初めてじゃないって気づいたのはさすがだけど。何せお前が寝てる間に今までにも何回もちゅーしてるからね」
「は!?!?!?!?」
「この前気まぐれでキスマークつけてみたら、お前『蚊がいる!』とか言っててウケたなー」
「あれも!?」
目を白黒させて驚く俺を、ないこは声を上げて笑った。
「してやったり」とでも言いたげに楽しそうな表情で、「ところでさ」と話を改めるように口火を切り直す。
「結局、出て行かなくていいんだよね? 俺」
今更だろ。そう思ってないこの腰を更に引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。
「いいよ。その代わり勉強はちゃんとして」
「お前そればっかりだね。大丈夫だって言ってんのに」
唇をへの字に曲げたないこは、少しだけ不満そうに眉を寄せる。
…不満ついでに、もう一つ条件を付加してみせた。
「それと受験に集中してほしいから、合格して卒業するまではキスより先のことはせんから。覚悟して」
「はぁぁ!?」
聞いてない、とでも言いたげにないこは大声を上げる。
「受験まであと何ヶ月あると思ってんの!?」
「浪人なんかしたら最悪やな。1年延びるし」
「むりむりむり、絶対我慢できるわけないじゃん。っていうかお前だって我慢できないだろ、俺が毎日隣にいるってのに」
「俺は我慢できるよ、あと数ヶ月くらい」
ずっと傍にいながら、何年耐えてきたと思ってるんだ。
あと数ヶ月くらい何でもない。
隣にいることを…そして想い続けることを許された今なら、きっと今までよりも穏やかな気持ちで待てる。
「…そうだ、まろってそういう奴だったわ…」
諦めたように言ってから、ないこはびしっとこちらに指をつきつけてきた。
「でもせめて『合格したら』でいいだろ!? 卒業までは待たないからな、俺。何なら合格発表の日でいいじゃん」
ご褒美ご褒美、なんて都合のいい単語を出してくるものだから、眉を下げて俺は苦笑いを浮かべてしまった。
「ん、いいよ。約束な」
もう一度こつんとないこの額に自分のそれをくっつけて、俺は今度は自分でも驚くほど幸せな笑みを漏らした。
「あ、ないふだ」
研修会と称して集められた大会議室。
適当な椅子に座らされた俺の隣で、りうらがそんな声を上げた。
その言葉に促されるように視線を追うと、なるほど確かに一番後ろの席にピンク色と青色を見つける。
…こいつらいっつも後ろにおるよな。
若い医師は前に行けって言われそうやけど、そんなこと当人たちは気にもしないらしい。
まぁ特に今のこの研修会は若手のためのもので、大御所はいないから別にそんな些細なことを気にする人間もいないか。
「仲良いよね、あの2人。ケンカとかしないのかな」
あにきは見たことある?と呟くりうらに、俺は配られた資料の上に乗せた手で暇を持て余すようにペンをくるくると回した。
「この前ちょっと険悪なときあったやろ、外科にあの女医が来たとき」
「ナオ先生? 結局誤解ですぐ仲直りしてたし、それくらいじゃない? あんなに長い付き合いなのにないふがケンカしたとか聞かなくない?」
りうらの言葉に、これまでのないふの2人を思い浮かべてみる。
確かに目立ったケンカの話はこれまであまり聞いたことがない。
幼馴染だから幼少期は色々あったかもしれないが、高校で俺が出会ってからは、ケンカというよりもどちらかと言うとないこがぷりぷり怒ってまろが宥めて…の構図になることの方が多かった気がする。
「…あ」
違う、1回だけあった。
そう思い出した俺の様子に気づいたのか、りうらが横目でこちらを見やった。
「1回あったわ、まろが大学1年でないこが高3の時やな」
そう言って、俺はりうらに当時の一連の話を聞かせてやった。
まろの大学入学と共に同居を始めたけれど、しばらくしてその関係が破綻しかけた時のこと。
あの時ないこは実家に帰らずうちに転がりこんできた。
ほんの数日のことだったけれどよく覚えている。
「へぇーそんなケンカするんだ、あの2人。でもそれがきっかけで付き合い始めたってことかぁ」
話を聞き終えて、りうらは感心したように呟いた。
そんな赤い瞳を見返しながら、俺は一つの問いを投げかける。
「あの時…まろに出て行けって言われたないこがさ、実家に帰ればいいものを俺のところに来た理由、お前分かる?」
「えー?なんだろ、実家が遠くてめんどかったとか?」
「ちゃうちゃう」
笑いながら、俺は手を左右に振った。
「せいぜい数日でまろが迎えに来るって、分かっとったからやで。数日で戻るのに『ケンカした』なんて言うて実家に帰ったりしたら、後々めんどいことになるやろ?」
続けた言葉にりうらが一瞬息を飲み込むものだから、更に俺は朗らかに笑ってしまう。
「ほんま強かやでなぁ、ないこって」
「……まろが振り回され続ける姿が目に浮かぶよね、多分一生続くよあれ」
呆れたような感心したような不思議な口調のりうらに、「そうやな」と小さく同意した。
「一生」…普段なら何の保障もない言葉だと思う。
だけどあいつらにだけは、その言葉が考えられないものでも不似合いなものでもないと感じてしまう自分がいる。
ただただ、当たり前のように思う。
「一生」隣にいるんだろうな、あいつらは……なんて。
「覚悟せなあかんよなぁ、まろ」
あの自由奔放で策士なないこを制御できるのも、誰よりも深く愛してやれるのも、きっとまろしかいない。
そもそもないこが「そういう」ないこでいられるのは、まろがいるからに他ならないわけだし。
あいつは「一生」、そんなないこに喜んで振り回されていくんだろうな。
もう一度振り返ると、一番後ろの席で少し顔を寄せ合って何かを話しているまろとないこ。
耳元で交互に囁き合っては笑っている幸せそうなその姿を一瞥して、俺はもう始まるだろう研修に集中するために前を向いて座り直した。
コメント
2件
今おっきな喧嘩しないのも付き合う前にしたからなのかもしれないフフフフフ あと桃ちゃんに振り回される青ちゃん目に浮かぶわぁ!でもめっちゃ幸せそうな顔してるのも分かる…! 医者だからかな?「一生」?おらバカだからわかんねぇ( ;∀;) とりまないふ一生幸せになれぇ!! 長文失礼しました