「そろそろ家に帰りますか?」
彼の問いかけに「はい」と頷く。
観覧車を降りると、だいぶ日も傾いて夕暮れが近くなっていた──。
彼のマンションに行く前に、食材を買いに大きなスーパーへ寄った。
彼が持ってくれたカゴに、野菜や果物を二人で選んで入れるだけのことが、なんだかとっても嬉しいことに思える。
こうしているとまるで結婚してるみたいと、ふとそんな風にも考えたら、ちょっと恥ずかしくもなってくるようだった……。
──部屋に帰り着いて、「今日はお誕生日のサプライズで、料理は私が作りますね」と、ずっと考えていたことを伝えた。
「あなたが?」と驚いた顔を見せる彼に、「はい」と応えて、
「先生みたいに上手く作れるかはわからないけれど、この日のためにお料理教室にも通ったんで」
そう言うと、「今日のために?」と、さらに驚いた様子で聞き返された。
「少しでも美味しい手料理を食べてほしくて。だって先生には、いつもシェフも顔負けなくらいの料理を作ってもらっているから」
忘れてるものはないかと買ってきた物をひとつひとつ確かめながら話すと、
「……君に作ってもらえるというだけで、きっと美味しいだろうと」
彼が口にして、私が調理しやすいように包丁やまな板などの器具をキッチンに揃えてくれた。
「私は女性に手料理を振る舞ってもらったことはないので、楽しみにしていますね」
ふっ…と柔らかな微笑みを彼が向ける。
「そんな風に言われると、プレッシャーを感じそうですが、」笑みを返して、「だけど料理教室での成果を発揮できるよう頑張りますので、どうか楽しみに待っていてくださいね」と、彼にリビングのソファーへ座ってもらった。
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