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gr「…………なぁ、本当にここなのか?」
sho「おかしいな…この辺りで館が見えてくるハズなんやけど…」
かれこれ三時間、館を探して回るもその館は忽然と跡形もなく姿を消していた。それはもう、異常なほどに。
kn「なあ……本当におかしくないか?あんなデカい館、見つからないハズないんやけど」
そう言って少々不安そうにキョロキョロと辺りを見渡した。右を見ても左を見ても、広がるのは静かな緑。時折聞こえる鳥の声とそよ風になびく木々の音たち。(また今度にするか?見つからなさそうやし)そう口を開こうとした
その時だった、
タァンッ!!
破裂音のような音が聞こえ、同時にすぐに周りの皆はその場から飛び退く。それは聞き慣れた銃声の音だと誰しもが認識したからだ。しかし次の瞬間シャオロンの頬にはピッと、一筋の紅い線が引かれた。ダンッっという銃弾が地面に落ちた音。ほんの数秒の出来事だったが誰しもが敵の存在にすぐさま気づき、そして冷静に武器を構える。
sho「……………誰や」
ワントーン低い声でシャオロンは問う。皆の目が一方に集まった。草むらから、ゴソッとなにかが動く音がする。
?「あれれ?外したかぁ…」
そこから現れたのはスナイパーを降ろし、少し残念そうな顔をした薄く緑混じりな黒髪短髪の女の子。しかし、確実に人間ではない。その頬にはあの時ゾムの頰に見た黒い鱗が生えていたのだ。彼女はこちらの視線に怯む素振りなくこちらに笑いかける。そして、何事もなかったかのように話し出した。
nt「やあやあ、僕はナツメ。君たち成功作の知り合いなんだろ?僕も連れてってよ」
爽やかな笑みで微笑む彼女に、気味の悪いものが心の奥から湧き上がってくる
gr「……………ほう…。成功作とはゾムというやつの子か?」
nt「ああ、ちょっと用があってね。」
em「ちょ、…なんで撃つ必要があったんですか…」
nt「ふふっ、ちょっとだけこの国の幹部様の力を見てみたくてね♪あぁ、黄色い子には悪いことしちゃったかな?」
そう言って銃を見せるように天に掲げた。
kn「…仲間を傷つけた奴を俺達が連れて行くとでも思ったん?」
nt「…あはは、あれー?僕嫌われちゃったかなぁ?」
嘘くさい笑い方をする彼女は銃を草むらに捨て、なんの躊躇いもなくスタスタとこちらに歩み寄ってくる
sho「ハッ…自ら殺されに来たんか?」
nt「まさかw僕はやらないといけない事があるんだ。」
そう言ってグルッペンへと1歩、また1歩と歩み寄る。勿論周りの幹部もそれに気づき、近づく度に武器を構え、こっちに来るなとオーラを放つ。それは誰もが恐れるような雰囲気なのだが、彼女は相変わらずニコニコしていた。それはまるで死を恐れていないような
nt「それと…………グルッペン……だっけ?鬱って言う奴が幹部にいるんだろ?僕に紹介してくれよ」
gr「…………」
nt「…シカトかい?…酷いなぁ」
em「…………大先生になんの用があるんですか?それに、あなたゾムさんのこと知ってるらしいですけど、何者なんですか?成功作?訳が分からないんですが」
nt「質問が多いよw僕はちょっとお話がしたいだけさ。そうだな…鬱のことは個人的な恨み。それと、ゾムのことについては頼みたいことがあるんだ」
ふふふっと絶えず口から笑いを漏らす彼に、一層周りの空気がピリピリしていく。嘘くさいような本当のことのような、そんな口調にグルッペンの視線も自然と鋭くなっていく。
nt「あぁそうだな、僕から一方的なお願いだと不公平だね。ならこういう条件はどうだろう」
gr「………」
nt「君たち、ここにいるってことは成功作の館が見つからないんでしょ?このままじゃ、見つけることは愚か、帰ることも出来ないね」
em「なっ………」
nt「成功作は君たちみたいに自分に興味がある人が嫌いみたい。だけど、この森を抜けることなら僕に任せてよ。こーゆーのは得意分野なんだ」
nt「ねぇ、どうする?」
スッと差し出された手。彼女の細く白い手は、まるで俺らとは違う、か弱い女の手だった。目の前のこいつの自信はどこからくるものなのか、心底疑問だ。しかし、彼女の頰の鱗から見るに、何かしらゾムとの血の繫がりがあるのだろう。
gr「…ふむ。それは本当なのだな?」
nt「あぁ本当さ。信じてくれ」
gr「…一時的な協力だ。用が終わったなら直ぐにどっかへ行け。俺は今、家族同然の奴らを傷つけられたことに腹がたっている」
冷たく淡々とした口調で言い終えたあと、彼女の小さな手を握るグルッペン。
nt「話の分かる人だね。良かったよ」
gr「ふん、不審な動きがあれば直ぐに殺すからな。」
nt「ふふっ、平気だよ。君たちの実力はよく分かったし武器は不要。」
そう言ってスナイパーを捨てた方向をちらりと見ると、彼女はこちらに向き直り微笑んだ。
nt「交渉成立。さっさと行こうか。日が暮れてしまうよ」
そう言って歩き出す彼女の背中を見つめ、周りの奴らの顔を伺う。大体『彼女のどこから何処までが嘘か本当か見抜けない』といったところだろうか、緊張したような呆れたような、そんな顔で彼女の背中を見ていた。
最初に彼女の背中を追いかけたのはシャオロンだった。それに続くようにゾロゾロと歩き出す皆。どうやらここでジッとしているよりはマシだと決心したのか、それともグルッペン総統直々の交渉許可が降りたからか、多分どちらもだろう。ぎこちないような顔を浮かべ、武器を構えて俺も後に続いた。
気づけば俺達は館の前に立っていた。ここまで来るまでの道のりは到底覚えられるものではない。というか、全くもって覚えていないのだ。ただ、彼女に手招かれるまま歩いた。それだけは疲れた足が物語っている。
nt「お疲れ様。どうする?少し休もうか?」
それに対し、全く疲れた様子がない彼女に呆れたシャオロンの口からは荒い息と共に「はぁ?」なんて言葉が零れた。
nt「まぁあんだけ歩けば無理もないさ。一休みしてからにするか?それとも、日が暮れる前に帰るために速めに行く?」
こてんと首を傾げるナツメ。動作は幼いが、表情には大人びた雰囲気を漂わせていた
gr「俺は速めに行くぞ。」
グルッペンは躊躇いもなしに即答する
nt「へぇ、なにか重要な用事があるの?」
gr「?違うが」
nt「…、じゃあなんでさ」
急に先程のヘラヘラした顔は消え、何やら真剣な表情でグルッペンの言葉に耳を澄ませるナツメ。
gr「…なんとなく……だ。俺はゾムに興味がある。彼をこの目で見てみたい。それだけだ。」
nt「……そう…変なの。興味だけで来ちゃったのなら、とんだ失敗だね」
gr「変なのとお前に言われる筋合いはない」
そんな会話をしながら門の前に立つ。あの時気づかなかった明らかに普通の館ではない雰囲気であることがひしひしと伝わってきていた。
nt「成功作は基本的に玉座にいるけど、今日はどうだろうねぇ。」
そう言ってナツメは先程の調子を取り戻したように薄ら笑いを浮かべて呟いた
kn「…シャオロン」
sho「おう!」
俺の声かけにすぐさま反応したシャオロン。二人であの時より余裕を持って開けていく。
ギ…ギギギギッ…
nt「ワーオ、君たちって素速いだけじゃないんだねぇ」
em「人によりますがね…」
nt「まぁいいや。ほら入ろう。もたもたしてると殺されちゃうよ」
そう言うとナツメはスタスタと館の内部へと入って行った。
zm「…」