テラーノベル
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アスランズ王国、魔術学院は騒然としていた。
第一王子ルシアンの婚約者イソトマの不貞疑惑が報じられてから、学園でも噂が絶えない。
「見て、今日も別の男を侍らせていらっしゃるわ」
「あれではルシアン様がお可哀想」
「リリー様を選ばれるお気持ちが、わかるな」
ルシアンとリリーは相変わらず仲睦まじい。最近のイソトマは必要以上に近付かない。
「ルシアン様とリリー様だわ」
「あんなに仲が良かったのに、イソトマ様とはここの所、険悪だよな」
「優しくなられたと噂のイソトマ様も、性格が悪かった頃に戻ったようだね」
前からルシアンとリリーが歩いてきた。
後ろにディルクを侍らせ、セインと談笑しながら歩いていたイソトマは――。
目も合わせずに、ルシアンを通り越した。
ルシアンもまた無言で、イソトマを見ようとしなかった。
隣を歩くリリーだけが、ハラハラした顔をする。心苦しそうにイソトマを振り返る。
「やっぱり険悪なのですわ」
「イソトマ様が浮気なんかされるから」
「それを言うなら、先に浮気をしたのはルシアン様だろ」
「でも、イソトマ様は祝福されていたじゃない」
「だから、自分も浮気をされたのだろう」
噂が噂を呼ぶ。
尾ひれ背びれを付けた噂は大きくなって実しやかに語られる。
「ルシアン様とイソトマ様の婚約解消は、時間の問題」
そんな噂が、学園でも市井でも囁かれるようになった。
「噂がレイヴン商団まで流れてくれれば、リリーが流した情報の裏付けになる」
ルシアンの言葉に、リリーが頷いた。
「闇市の日にちは確定と思っていいよ。大型の搬入も始まっているから」
リリーの逆スパイのお陰で、日程は正確に特定できた。
「場所は王都の外れにある廃屋敷の地下。持ち主が貴族だから、今まで隠されてきたみたいだね」
セインの話に、イソトマは息を飲んだ。
「つまり、貴族が人身売買に関わっているってこと?」
「不思議じゃないだろうな。ほんの数十年前まで、アスランズ王国だって人買いは合法だったんだ」
「だけど……」
ノアルの説明は理解できるが、受け入れられるものではない。
「人身売買で財を得ている貴族がいまだに存在する。その貴族がレイヴン商団と繋がっているということですね」
ディルクの言葉に、ルシアンが頷いた。
「これまで国がレイヴン商団の摘発を躊躇した理由の最たるは、貴族の関与だ。それさえなければ、組織自体はいくらでも潰せた。だからこそ、今回は芋蔓式に捕縛する」
ルシアンが、仄暗い目を上げた。
「容赦も温情もなくていい。その場にいる人間は身分に関係なく全員咎人だ」
かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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ルシアンの強い言葉に、リリーの瞳が揺れた。
ルシアンの手が、リリーの頭を撫でだ。
不安そうなリリーの表情が、少しだけ落ち着いた。
その何気ないやり取りに胸を躍らせたのは、イソトマだった。
(今の頭撫で、慣れてる感じだった! 前より距離感近くなってる。ルシリリー!)
イソトマの中で、推しカプルシリリは復活を果たした。
ホクホクするイソトマに、ルシアンの視線が向く。
「摘発当日、私が主催の舞踏会を開く。その場所で婚約解消を大々的に名言するよ」
ドキリと肩が震えた。
(ついに来た。悪役令息の断罪イベント、婚約破棄。だけど――)
ゲームとは、かなり意味合いが違ってきた。
本来なら単純にイソトマを糾弾し、追放するイベントでしかない。
けれど、今は人身売買組織レイヴン商団摘発のためのお芝居だ。
「舞踏会での婚約破棄と、その後の流れはレイブン商団や関係貴族を油断させるための表向きのパフォーマンスだ。裏ではノアル率いる王立騎士団に動いてもらう。ようやく、重い腰を上げてくれたからね」
何度もプレゼンし、説得を繰り返して、ルシアンは王立騎士団を動かす許可を国王から得た。
ただし、王立騎士団を動かす許可を得られたのは一度きりだ。失敗は許されない。
だからこその、婚約破棄パフォーマンスだ。
(絶対に失敗できない。一度きりの大舞台だ)
イソトマにの緊張が込み上げる。
「当日の流れとシナリオは、僕が書きました。皆様に役回りを覚えていただきます。特にイソトマ様、台詞が多いので頑張ってください」
アルエに台本を渡された。
そこそこな厚さだ。
「僕もお芝居、するんだね」
リリーのように上手にできる自信がない。イソトマは息を吐いた。
「期待しているよ、イソトマ。僕らの芝居の裏でノアル、セイン、アルエは動いているのだから。僕らがレイヴン商団の団長クロウをどれだけ油断させられるかが、鍵だ」
ぞくっとした寒気と共に、イソトマに緊張が走った。
リリーの顔が強張っている。きっとまだ、クロウに思うところがあるのだろう。
「うん、頑張るよ」
イソトマはアルエがくれた台本を握り締めた。
「しっかり、考えて演じるといい。私も、よく考えるから」
ルシアンがイソトマの目尻を撫でた。くすぐったくて、思わず目を瞑った。
開いた片目で見えたルシアンは、困ったような顔で笑んでいた。
(ルシアンがああいう顔をする時は、どんな時だっけ)
これまでのルシアンを思い返す。
(そうだ……もう、結論が出ている時の顔だ)
決して正しくないと知っている。だから、困った風に笑うのだ。
イソトマの口端に笑みが乗った。
「うん、ちゃんと考えるね」
イソトマはルシアンの指を握った。きっともうこんな風に手を握る機会はない。だから今だけ、最後の温もりを覚えておきたかった。
コメント
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第39話読了ー!!📚💕 イソトマがルシアン&リリーの頭撫でに「ルシリリー!」って内心で萌え爆発してるところ、完全に推しカプ民の顔でワロタ😭❤️ 推しの距離感近づくと嬉しくなるよね、わかるわかる!! でも最後のルシアンとの指を握るシーン…「もうこんな風に手を握る機会はない」って台詞が胸にグサッときたよ…切なすぎる…🥺💔 本番の舞踏会、絶対成功させてほしいし、イソトマの頑張りを応援したくなる回だった!