「また大袈裟。特になんともないよ?」
「ちょっ、透子自分の人気わかってる!? マジでホント狙ってる男多いから気を付けて」
あぁ~なんでこの人はこんなに呑気なんだろ。
もうちょっと危機感持ってよ。
今まではたまたま何もなかっただけで、チャンスがあればマジでそういうのあり得るから。
「何で樹が必死になってんの!? そんなの今までなかったら大丈夫だよ」
それ自分が気付いてなかっただけじゃないの?
実際ホントはそういうの何度かあったけど、それをアプローチだって気付いてないとかじゃないの?
だとしたら余計危ないわ。
「は~。案外透子って天然?」
「いや、言われたことも自分で思ったこともないけど・・・」
「ならかなり鈍感なんだね。社の男どもが透子をどんな目で見てるのか想像しただけでオレはもう嫌で透子を籠に入れて閉じ込めときたいくらいなんだけど」
「ちょっ、何それ!もう全部大袈裟すぎる!(笑)」
オレが真剣に訴える言葉をこの人は他人事みいにケラケラと笑っている。
「いやいや。透子マジ危機感も自己意識もなさすぎるから。もうちょっと危機感持ってくんない?」
「え~だってそんな実感全然ないからそんなこと言われてもわかんない」
はぁ~。どこまで意識なさすぎなんだ。
これホントこの人今まで何もなかったのか心配になる。
ホントこの人縛り付けておきたいくらいの気分になるわ。
「透子どれだけ狙われてるかわかってないんだもんな~。透子をエロい目で見ていいのはオレだけなのに」
「ちょっ!どさくさに紛れて何言ってんの!?」
「えっ、嘘じゃないし。いつでもオレ透子エロい目で見てるの気付いてなかった?(笑)」
オレはいつでもあなたをあんな目でこんな目でずっと見てるよ。
いつでもあなたのすべてをオレのモノにしたいって、あなたのすべてを知りたいって思ってるよ。
まだあなたにはそこまでは伝えないけどね。
「知らないよ」
照れ隠しにそうやって意地張る姿見るのも可愛いけどさ。
「まぁそれは冗談だけど・・いや、冗談でもないけど・・いや、そんなことより、とにかく透子はそれだけの存在なんだからオレが遊びなワケないってこと」
それほどあなたは皆にとってもオレにとってもすごい存在なんだから。
遊びで手を出せるほどの存在じゃないって自分でちゃんとわかっておいて。
「だから本音言うと社内全員に透子と付き合ったこと大声で自慢したいくらい」
あなたを射止めたことはオレは社内どころか世界中に向かって自慢したい。
「そしたら透子を狙う男もそういう目で見なくなるし、オレとしては安心。だけど透子に迷惑かかるのも嫌だからそれはしないけどね」
そうすればきっとこれからは透子を狙う男はいなくなる。
そういう意味では安心だけど。
でも、実際オレも社内で目立つ存在なのは、自分で自覚もしていて。
特定の彼女がいないことで、何度も告白されているのも確か。
だからあえてそういう相手がいるという噂を流して、そこからは露骨なそういうのは少なくなったからやりやすくはなったけど、でもまだ騒がれるのは何ら変わりない。
オレはただ彼女を好きでいられればそれでいいのに。
だけど、きっと彼女と付き合ってるのがバレてしまうと、きっと彼女にも何らかの迷惑はかかると思う。
少なからず女子という生き物はそういう非難するのが好きなのもわかってるから。
オレが男どもに何言われても、適当にかわしておけばいいけど、きっと彼女はそうはいかないだろうから。
女性同士のやり取りは、きっと男のオレがわからない世界で、きっと何かしら彼女に影響があるはず。
今はそれは避けたい。
何より仕事が好きな彼女だから。
何より仕事に真剣に取り組む人だから。
だから、オレの勝手な理由で彼女に迷惑はかけたくない。
彼女が変わらず気持ちよく仕事出来る環境を維持したい。
彼女が他の男に狙われる心配は拭えないけれど、でもそれはなんとかなるはず。
それよりも仕事をして輝いている彼女の姿をオレはこれからも変わらず見ていきたい。
「透子きっと社内でそういうの噂されたら仕事やりにくいだろうし。オレは透子守る自信はあるけど、透子は多分そういうことじゃないだろうから」
だから、彼女が安心出来る環境を、例え彼女と付き合っても死守してあげたい。
「あ~もう!なんでそんな私のことわかってくれてるの!」
すると彼女は嬉しい反応。
うん。だよね。
あなたはそうやって反応してくれると思った。
大丈夫。あなたのことはオレが必ず守るから。
「当たり前じゃん。透子どれだけ見てきたと思ってるの。オレ透子がカッコよく仕事してる姿憧れだから」
「そう、なんだ」
オレがずっと憧れていたあなたのその姿。
オレはそんなあなたを見て恋をした。
そんなあなたがずっとオレは好きだから。
「樹と付き合うってなったら私も女子社員に何言われるかわかんない(笑)」
「あ~、オレ社内でも人気でモテてるから誰かのモノになったって知ったら嘆く女子も多いだろうね~」
「何その自信(笑)」
やっぱりそういう噂は耳に入っちゃうもんなんだよな。
てか、自分の噂は全然知らなかったくせに、なんでそんな知らなくていい余計な噂は知っちゃってるかな。
だから今までオレがやってきたことで、あなたに迷惑はかけたくない。
いつか大事にしたい女性が出来たら、今までやってきた遊びが足を引っ張るだなんてその時は思ってもいなかったけど。
でも今は痛いほどわかる。
そんな遊び方してきた自分がバカだったんだなって。
本気で好きになった相手に自分の気持ちも誠意もなかなか伝わらなくて信じてもらえなくて。
本当の恋愛がこんなに難しいモノだなんて初めて知った。
本気で好きになった相手を手に入れることはこんなにも難しいだなんて初めて知った。
だけど、どれだけ時間がかかっても、どれだけ辛い思いをしても、どれだけ努力してもいいから、この人はどうしても手に入れたい人だったから。
どうしても諦められない人だったから。