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グク「ヌナ、やっと起きたの?さすがに飲み過ぎだよ。はい、これ飲んで」
私「お水?あ、ありがとう」
差し出されたミネラルウォーターを飲むと、少しは頭痛が緩和される気がした。
ジョングクはラフなビッグシルエットTシャツと黒スウェットに着替えていた。
シャツを押し上げる厚い胸板と、太い腕っぷしに彫られた派手なタトゥーに、ドキッとする。
グク「ヌナ、起こしても起きないから、連れて来ちゃった」
私「うん、テヒョンから聞いた。迷惑掛けてごめんなさい」
グク「……一応言っておくけど、ホテルに入る所パパラッチには撮られてないから。それに部屋は人数分取ったし」
私「う、うん」
グク「…ねえヌナ、俺たちだってオトコなんだから、そんなに隙を見せたらダメだよ」
私「…?」
隙って、何のことだろう?
あ、そっか、ビジネスホテルとはいえ、BTSのメンバーと私情でホテルに泊まったことが世間に明らかになったら、たぶん処罰だもんね。会社に反省文を出すくらいならまだいいけど…
グク「それと…」
私「?」
グク「ヌナが気付いてないようだから俺が言うけど…着替えさせたのは、シャツを洗うためだから」
私「えっ?」
私は驚いて、自分の姿を確認する。
ボタンの白ワイシャツは脱がされ、ジョングクと同じようなビッグサイズのTシャツに着替えていた。
下は、ジーンズのままだった。
私「あ、あれ?どういうこと…?」
グク「だから、焼肉屋でヌナのワイシャツ汚れちゃったでしょ?シミになるといけないから、さっきホテルのワンコインランドリー借りて洗濯してきた。乾燥機もあったから、ここ出る時には着られると思うよ。その服はコンビニで買ったやつ」
私「ジョングクが洗濯してくれるの?ありがとう」
グク「………どういたしまして」
私「本当に、何から何までごめんね…全部でいくら掛かった?」
グク「ん?」
私「飲み代、ホテル代、洗濯代、シャツ代、あとミネラルウォーターも!お金返すよ」
グク「えーと…」
私「もしかして、タクシーとかも使った?ごめん、本当に」
ジョングクは、テヒョンに助けを求めるように視線を投げた。
テテ「そういうのいいから」
私「えっ、でも…!」
テテ「俺たちがそうしたくてやったんだから、ヌナは気にしないで」
私「うーん…困る…」
いくら相手が億万長者BTSとはいえ、私はヌナだ。お金や恩の貸し借りは作りたくない。
テテ「じゃあ、こうしよう」
私「?」
テテ「ヌナは、彼氏との事を俺たちに逐一報告すること」
私「えっ…」
グク「名案じゃん」
合いの手を入れたジョングクに、テヒョンは頷きを返した。
グク「そうしよう。それでいいね、ヌナ?」
私「でもそれって、二人に余計迷惑を掛けることになるんじゃ…」
テテ「迷惑とか思ってない」
私「えっ……?」
戸惑う私。どうしてそんな風に言ってくれるんだろう?
私「で、でも…二人にはもうこれ以上迷惑は掛けられないよ。お酒で失敗しちゃったことは謝るよ。だからちゃんとお金で返させて!」
今回は心が弱っていたタイミングでご飯に誘われて、ついつい乗ってしまったけれど…
原因は交際関係にあるといっても、ヤケ酒して眠り込んで二人に迷惑を掛けてしまったのは私だ。
それに、私は彼氏のことをまだ、ちょっとだけ信じたい。
私のことを大切にしてくれるんじゃないかって…
『彼との家に帰らなきゃ』
『彼に、無断で外泊してごめんって謝らなきゃ』
ずっと、そう思っている。
叩かれたり、暴言を吐かれたりしても…
私の帰る場所はあそこなんだって、そう思ってるから。
私が我慢すれば。
もう少し多く彼にお金を渡してあげて…彼の親の借金返済のサポートしてあげれば…
きっと、今だけ。
もう少し我慢すれば、きっと良くなる。
また付き合いたてのあの頃みたいに、二人で笑い合って…私のことを大切にしてくれる。
私「そ、それに、すぐ仲直りするから!そんなに気に掛けてくれなくても大丈夫だよ。私はほら、丈夫だし、元気だし!」
笑おうとして、頬の絆創膏が引き攣って、傷んだ。
私「…っ!」
痛いのは頬の傷だけじゃなかった。
胸が、チクチクと痛い。
鼻の奥がツンとして、涙が溢れそうになった。
テテ「ヌナ…!」
テヒョンが、私のいるベッドに腰掛けた。
そしてジョングクもベッドに腰掛けて、私の手を握ってきた。
イケメン二人に左右から囲まれて、私はどうしたらいいか分からなくなる。
グク「ヌナのそんな姿、見たくないよ」
私「………」
グク「ねえ、お願い。もっと自分のこと大切にして」
ジョングクが何を言いたいのか、本当は全部わかってる。
分かってるけど……
グク「ヌナが、カレシのことまだ好きなのは分かるよ。分かるけど…ヌナは、本当の自分の気持ちに気付いてない」
私「わ、私は…彼と話し合って、仲直りする……」
グク「でもそいつ、浮気してるんでしょ」
私「……!!」
ジョングクの声音が冷たい。それに、すごく怖い顔をしている。
グク「ヌナは仲直りするって言ってるけどさ、ヌナは悪くないよね?」
私「そ、それは…きっと私が何か、彼を怒らせるようなことをして…だから彼は…」
グク「ヌナが何をしたっていうの?」
私「…………」
グク「そういう考え方って、DV受けてる女の子の典型だよ。自分が悪いから殴られる、自分が悪いから浮気されるって…そんなのおかしい」
私「…………」
グク「俺なら、ヌナを幸せにしてあげられる」
ジョングクはそう言って、私の手をぎゅっと握った。
そして、私の目を真っ向から見据えた。
私「ジョ、ジョングク…?」
テテ「僕もいるし」
テヒョンが私の隣に座ってきて…
私と深く指を絡めて、恋人繋ぎをしてきた。
すごい…男の人の手だ…!
大きくて、力強くて、ゴツゴツしてて…あったかい。
テテ「彼との事、もう少しよく考えてみて」
私「テ、テヒョン…!」
テテ「ヌナには、もっと相応しい男がいると思うけど」
テヒョンはそう言いながら、恋人繋ぎしている私の手の甲を、自分の頬に押し当てた。
テヒョンに何度もメイクはしたことがあるけれど、それはブラシだったり、スポンジだったり。
…素肌に触れるのは初めてだった。
私「わっ…!」
ち、近すぎる…!!!
思った以上に柔らかいテヒョンの頬の感触。
長いまつ毛と、綺麗な瞳。
右目の下まつ毛の間に隠れたチャーミングなほくろまで、よく見える。
突然の甘い雰囲気にテンパる私を見つめながら、テヒョンは私の手の甲にチュ、と軽いキスを落とした。
私「!?」
私は真っ赤になって固まった。
キ、キスした…!?
えっ、えっ、えっ…!?
なんで………!?!?
グク「テヒョン、そういうのダメ!」
すかさずジョングクが割り込み、私とテヒョンを引き剥がした。
怒ったジョングクが面白いのか、テヒョンはニシシ、と笑って、サイドテーブルに置いてあったミネラルウォーターを一口飲んだ。
私「あっそれ私の…」
グク「テヒョン!もう!」
テテ「えへへ〜」
私とジョングクにダブルつっこみをされて、テヒョンは楽しそうにふにゃふにゃと笑った。
さっきまでのド・イケメンモードは何だったんだろう?すっごいドキドキしちゃった…!!
さ、さすがBTSのV!演技が上手いなあ…!!
テテ「俺たちの気持ち、伝わった?」
私「う、うん…」
グク「とにかく、ヌナはこれから俺たちに報告をすること」
私「わ、分かった…」