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時を忘れて、果てのない夜空を見上げる。


成哉は大きく背伸びした。それだけでは空が近くなったりしないが、敷き詰められた無数の星と目の前に佇む恋人を交互に見返す。

ここは昔と何も変わらない。

十五年前に訪れた山頂で、懐かしい匂いを感じている。木々に囲まれた何も無い場所。まるで世界から切り離された小さな箱庭。夜になれば満天の星が空を埋め尽くし、宝箱のような空間を作り出している。空が白まないなら、燦然たる星が見られるなら、もうずっとここにいたい。

けど朝日は昇る。星と月の光を奪い取るほど眩い輝きを放って。

だから大丈夫。

夜に震える時は終わった。苦しいことも悲しいことも、きっと攫っていってくれる。


「准さん。星、綺麗ですね」


声をかけると、彼は笑って頷いた。

十五年ぶりに訪れた地。十五年ぶりの時間。ずっと彼と、この景色を見たかった。


でも……ごめんなさい。

やっぱり、約束を果たしてもらったって言うよりは。────俺は、夢が叶ったとしか思えないんだ。

彼と交わした約束はあまりに古くて記憶にない。だから、その思い出は上書きされない。ひとつの結晶として頭の隅に保管している。

多分ここからだ。俺達のちょっと変な物語は、今やっと始まる。


「……長かったなぁ。俺ずーっと、准さんと星が見たかったんです」


首が痛くなるぐらい、空を見上げた。

かじかんだ手を暖かい手が包み込む。本当に、満たされすぎて怖い。

この時間は終わってほしくないけど、大丈夫。

これからは何回だって見に来られる。だからまた手を繋いで、引っ張り合って、迷ったときは上を見ればいい。


「成哉。ずっと待たせて悪かった。逢いに来てくれてありがとな」

「……俺の方こそ。また星を見せてくれて、ありがとうございます」


これからは道を見失ったりしない。今の俺は、誰にも負けないぐらい熱狂的に彼を想っているんだから。


もう夜が怖くない。何度でも目に焼き付けよう。


あの光を目印に、大好きな人。




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