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トモエは感嘆の息を吐いた。そこまで計算して戦闘を行える、やはりこの人たちは、トモエがこれまでの人生で遭遇した事がない、別の世界の人間なのだと思った。そう思ったら質問を躊躇する遠慮は吹き飛んだ。
「じゃあ次に、スパイとしての活動ってどういう事するんですか?
ヒミコはトワノに向かって言った。
「ちとややこしい話になるさかい、トワノ、ホワイトボード持って来てや」
「はい、おねえさま」
トワノが部屋の隅にあるキャスター付きの大きなホワイトボードをヒミコの前に運んで来た。ヒミコは黒のマーカーを取って、大きな文字で『OPEN SOURCE INTELLIGENCE 』と書き込み、『O』、『S』、『INT』の下に赤いマーカーで線を引き、その下に『OSINT』と書いた。
ヒミコはトモエの方に顔を向けて言った。
「諜報活動言うのもいろいろある、そう言ったやろ。これはオシントと読む。公開情報をぎょうさん集めて、それを分析して特定の人物や物事に関する、普通では気づかん情報を得る。そういう種類の諜報活動や」
トモエは首を捻って訊き返した。
「公開情報ってどんな?」
ヒミコが答える。
「新聞や雑誌の記事、テレビやネットのニュース動画、企業の決算報告書、政府の公開されとる支出報告書、そんなものやな」
「はあ? それが諜報活動なんですか?」
「たとえば、海軍の原子力潜水艦の基地に、食料品納めとる会社があったとしようか。原子力潜水艦は一度出航したら帰って来るまで一度も浮上せん。その基地に納入されとる長期保存の出来る食品、たとえばレトルトとか冷凍食品とかの量が、その気になれば誰でも見られるような形で食品会社の記録として公開されとったらどうなる? その潜水艦が連続で何日ぐらい航行可能か、だいたいの見当はついてしまう」
「あ! そんな事が? でもそれって法律違反になりますか?」
「ならんな、たいていの国ではな。せやさかい、大使館の職員とかが世界中で普通にやっとる。表に出んだけで、日本の外交官も海外で日常的にやってますやろ。諜報活動の七割八割はこのオシントなんやで」
トモエが呆気に取られて口を閉ざしたので、ヒミコはホワイトボードに『SIGNALS INTELLIGENCE』と書き込み、『SIG』と『INT』の下に赤線を引き、その下に『SIGINT』と書いてトモエに言った。
「これはシギント。日本語で言えば通信傍受みたいなもんか。電話、無線通信、衛星通信、そういった広い意味での信号情報を盗み聞きしてお目当ての情報を得る。いわゆる盗聴も含まれる。これやと、あんたの想像しとるスパイ活動のイメージに近いんかいな?」
トモエは無言でうなずいた。ヒミコが黒のマーカーを手にして言った。
「他にもいろいろあるけど、ウチらがやる諜報活動はこっちの種類や」
コメント
1件
おお、今回のエピソードめっちゃ面白かったわ!諜報活動の基本をこんなにわかりやすく説明してくれるなんて、しかも潜水艦の補給品の例えが秀逸すぎる。OSINTって言葉初めて知ったけど、確かに公開情報の積み重ねでとんでもない情報って得られるんだな。ヒミコの説明が本格的で、世界観にすごく厚みが出た感じがする。トモエが「はあ?」って驚いてるの、私も同じ気持ちになったわ。次が気になる!🔥