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ヒミコはホワイトボードに『HUMAN INTELLIGENCE』と書き込み、『HUM』と『INT』の下に赤線を引いて、その下に『HUMINT』と書いた。そしてトモエに向けて言った。
「これはヒューミントと読む。人間が標的の人間と、何らかの形で接触して、直接機密情報を聞き出したり、機密書類を渡すように仕向ける事や。スパイアクション映画なんかで描かれとるんは、このタイプやな」
トモエが興奮で体を震わせながら言った。
「あ、それです。あたしがイメージしてる諜報活動って。じゃあ、ヒミコさんたちは、敵に直接会って、情報を確かめて、場合によっては、この前みたいにその場で殺し屋に変わる。そういう事なんですね?」
「あの時のヤクザ連中は、海外のイスラム過激派組織と取引しとったんや。日本人の若い女を誘拐して過激派組織に売り飛ばす。イスラム過激派の連中はその女たちを自分たちのアジトへ運んで性奴隷にする」
「ひえええ! じゃあ、あたしもルリちゃんも、あのままだったら中東かどこかに連れていかれてそういう運命に? な、なんか、改めてゾッとする~」
トモエは青ざめてそう言った。だが新たな疑問が湧いて来て、ヒミコに訊いてみた。
「でもそれなら、警察にあの場所を通報すれば良かったんじゃないですか? なにもヒミコさんたちが直接手を下さなくても」
ヒミコは全く表情を変えず、能面のような顔つきで答えた。
「それが、ウチらの住んどる世界のえげつない所や。そのイスラム過激派に日本人が売り飛ばされる話はつい最近始まったわけやない。日本国内の取引相手であるヤクザ組織を一つや二つ潰したところで、後釜はいくらでも出て来る。暴対法と暴力団排除条例で締め付けられて、食い扶持に困っとるヤクザは掃いて捨てるほどおるさかいな」
「はあ、そういう事ですか。でも、ヒミコさんたちがやっつけたあの時のヤクザも、そのたった一つでしかないんじゃないですか?」
「ああいう裏の世界の人間は、裏の情報網を持っとる。あれがただのガス爆発やないちゅう事ぐらい、すぐに気づいて情報は伝わってるやろ。日本でこれ以上、ああいう人さらい続けるのはやばい、そう思い知らせるためには、ヤクザの集団を一個全滅させた方がええ。そう判断した政府のお偉いさんがいてはるちゅう事や」
「見せしめって事ですか?」
「せや。当分はイスラム過激派も国内のヤクザも、人さらいビジネスに関わるのはリスクが大き過ぎると思うて手は出しませんやろ。警察がやりたくても出来ん手段を代わりに取る。そのための蔭(おん)の白拍子として、ウチらにお鉢が回って来るわけや」
「な、なるほど。何て言うか、すごい世界なんですね」
「他に訊いときたい事はあるか?」
「ええと、情報量が多過ぎて頭がパンクしそう。今日のところは、十分です」
コメント
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ヒミコが「HUMINT」の概念をさらっと説明して、裏社会の実情まで繋げるのがめちゃくちゃリアルで震えました。トモエの「警察に通報すれば」という当然の疑問に、「後釜はいくらでも出る」「見せしめが必要」と答えるヒミコの冷徹さが、この世界の空気を一気に濃くしてる。設定の厚みが増す回でした。