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**第11話: 幹部との対決**
トーマスとケインは、洞窟の最深部にたどり着いた。目の前には広大な地下空間が広がっており、薄暗い光が異様な雰囲気を醸し出していた。その中央に立つのは、今までの魔族とは明らかに違う威圧感を放つ存在だった。
「待ちかねたぞ、人間ども。」その男は、低く響く声で二人に語りかけた。彼の名はレグナス。魔族の幹部であり、この地を支配する恐ろしい力を持つ者だった。
レグナスは長い銀髪を持ち、鋭い赤い瞳が光っていた。彼の手には、黒いオーラをまとった杖が握られている。その姿からただならぬ魔力を感じ取ったトーマスは、一瞬で全身の緊張が高まるのを感じた。
「貴様がレグナスか。俺たちはお前を討伐し、元の世界に戻るための手がかりを手に入れる!」トーマスは力強く言い放ち、剣を構えた。
「戻る? その願い、かなえてやることはできぬ。」レグナスは冷笑を浮かべた。「だが、その前に…お前たちをこの地で終わらせてやる。」
その言葉とともに、レグナスが杖を振りかざすと、空間が歪み、黒い雷が二人に向かって奔流のごとく襲いかかってきた。
「避けろ!」ケインが叫び、二人は瞬時に散開した。
トーマスは素早くその場を離れ、雷が地面に落ちると同時に爆発音とともに岩壁が崩れ落ちた。レグナスの魔法は、圧倒的な破壊力を持っていた。
「こいつは手強い…!」トーマスは息を整えながら、距離を取ってレグナスの次の動きを見据えた。
レグナスは余裕の表情で再び杖を振り上げ、次々と魔法を繰り出してきた。黒い炎、鋭い風刃、そして地面から這い出るような影の槍。その攻撃はどれも一撃で命を奪うに足る強力なもので、トーマスとケインは必死にそれを避けるしかなかった。
「くそっ、近づけない!」ケインが焦りを見せた。
トーマスも同じだった。前世のテニスで鍛えた素早さと反射神経で何とか攻撃を避けてはいるが、レグナスとの距離を詰めることができず、剣を振るう機会が見つからない。中距離での戦いに対応する術を持たない彼にとって、この状況は圧倒的に不利だった。
「どうする…このままじゃジリ貧だ。」トーマスは、かつてのテニスの試合で追い詰められた時の感覚を思い出した。冷静に、相手の隙をつくことが勝利への鍵だと。
次の瞬間、レグナスが再び黒い雷を放とうとした瞬間、トーマスはある考えが閃いた。
「そうだ…この剣を使って…!」トーマスは剣の側面を巧みに使うことを思いついた。まるでテニスのラケットで打ち返すように、剣を構え直し、雷を迎え撃った。
雷が放たれた瞬間、トーマスは剣を振り抜き、その側面で雷を弾き返した。その雷は予期せぬ方向へと飛び、レグナスの足元に炸裂した。
「なにっ…!」レグナスが驚愕の声を上げた。
この瞬間を見逃すことなく、トーマスは一気に距離を詰め、剣を振り下ろした。レグナスは慌てて防御の魔法を展開するが、その動揺からか、完璧には間に合わなかった。トーマスの剣がレグナスの防御を打ち破り、その体に深く食い込んだ。
「ぐはっ…!」レグナスが血を吐き、膝をついた。
ケインも間髪を入れず、トーマスの援護に駆けつけ、レグナスに止めを刺すべく短剣を突き出した。
「これで終わりだ…!」ケインが叫び、二人の攻撃がレグナスを貫いた。
レグナスは苦痛の表情を浮かべ、最後の力で呟いた。「馬鹿な…これほどの力を…だが…お前たちには…戻ることはできぬ…」
トーマスは息を切らしながら、倒れゆくレグナスに問いかけた。「転生について…何か知っているのか? 現世に戻る方法を知っているんだろう?」
しかし、レグナスは不敵に笑うだけで、何も答えなかった。やがてその体は闇の中へと溶けるように消えていった。
「くそっ…結局、何も知らないのか…」トーマスは剣を握りしめ、悔しさを噛み締めた。
ケインも同じ気持ちだったが、二人はこの勝利が無駄ではなかったと信じ、前を向いた。
「まだ情報が足りない。次の手がかりを探すしかない。」ケインが言い、トーマスも頷いた。
彼らはまだ帰るべき道を見つけていない。だが、戦いは続く。二人は決意を新たにし、再び歩みを進めることを誓った。次なる敵、次なる手がかりを求めて。