此方を見る戸惑いの瞳。
ぱっちりと開かれたその二重の齎す幼い印象。
その瞳が今、何故か此方を見ていて。
その原因に思い当たったときは何とも謂えぬ感情がせり上がってきた。
先程のお茶目で明るい印象は消え去り、小動物のように怯え、助けを求める少女の姿。
人間らしいその行動。
他の人間より少し薄く見える瞳が戸惑いを纏って助けを求めている様子が堪らなく可笑しく思えてきたのだ。
首領も同じことを思ったのか、ふっ、と堪え切れずに笑っていた。
当の本人は目を白黒させて頭上に疑問符を3つほど浮かばせながら先程よりも色の濃くなった戸惑いの瞳を右往左往、忙しなく動かしていて。
少し、ほんの少しだけだが、面白いと思ってしまったのだ。
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愛想笑いしたは良いもののどういうこと、!?
頭の中を疑問符が駆け巡る。
何でこんなに微笑ましい雰囲気なの?
何で混乱して居るのが私だけなの?
もしかしてもしかしなくても現状を理解出来て無いの私だけ?
等々。
頼みの中也さんも苦笑と微笑み、眼の前の人に至っては微笑ましい通り越して心配の色すら纏って居る様に見える。
否違う。此れはプラシーボ効果なのだ。思い込みだ。
眼の前の人を見て、中也さんを見て、亦眼の前の人へピントを合わせる。
相変わらず微笑んでいる、が。
瞳の奥が冷たく思考している事を私は見逃さ無かった。
否、見逃せなかった。
子供を利用する親の様な。
子供を安心させる為の御手本とでも言う様な微笑みを浮かべ乍も、尤も有効に活用し様として居るのが私には判った。
逃げる方法は唯一つ。
未だ良く判っていない異能力を頼る事。
其れが私の中で尤も有効な脱出手段だッた。
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此方を見て愛想笑いと困惑、そして、”警戒”。
どうやら考えていることを何となくだが察されて仕舞ったようだ。
まァ、ポートマフィアから脱出なんて、余程の異能力者か頭脳を持った人間、か。
演技とは思えない。演技の可能性は限りなく低い。
演技なら未だ戸惑っている少女を演じるからだ。
詰り、演技では無い。
腹芸が苦手な人間を掌で転がすのは慣れたものだ。
私はそうやって今の座に就いたのだから。
少女は一瞬当惑の笑みを消し、思考した。
少なくともそう見えた。
少し諦めた様な苦笑いを浮かべる口元。
先程の愛想笑いと比べると少々違うことが分かる。
目には敵意と決意。
其れが光を失い絶望へ染まるのはもう見飽きるほどに見尽くした。
油断していたんだ。
否、油断するのは当たり前だ。
少女は決して腹芸は得意ではなかったし、此れと云って特技もなかった。
只、”異能力”、、、
この世の理に反する能力が、ずば抜けて有能で、奇特で、飛び切り変わった異能力だっただけだ。
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先程から少女の様子が変わった。
困惑し、助けを求めていた瞳は形を潜め、その瞳は今。
警戒し、同時に諦め、決意と敵意を宿していた。
俺が嫌いな目だ。
戦場に行けばこういう奴、つまり感情豊かな良い奴から殺されてく。
殺されないのは”あいつ”みたいな、目的のためならば誰だって切り捨てられるような人間だ。
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