「またね」なんて言わなきゃよかった。
夏の午後。陽射しが優しく、公園の緑は輝いていた。
彼女はりうらの手を握りながら、無邪気に笑う。
「ねえ、今日はどこで遊ぶ?」
「かき氷食べたあと、川まで行こうよ。あの涼しいところでまた話そ!」
りうらの声はいつも通り明るくて、彼女の胸を温かく満たしてくれた。
二人は追いかけっこをしたり、かくれんぼをしたりして、時間を忘れた。
走った先の坂道で息を切らしながら、彼女は息を弾ませて言った。
「りうら、また、また一緒に遊ぼうね」
「もちろんだよ。約束!」
笑い合うその約束は、いつまでも終わらない未来を信じていた。
しかし、あの日の夜。すべてが変わった。
彼女は事故に遭い、救急車のサイレンが遠くで鳴る。
次第に意識は薄れていき、暗闇が近づいていた。
目が覚めた時、見知らぬ天井があった。
白く、冷たい光に包まれた病室。
身体が思うように動かず、呼吸も苦しい。
心臓の鼓動は弱く、あの公園の笑い声はもう遠く、届かない。
彼女は、薄くつぶやいた。
「りうら……」
病室の窓際、りうらはひとり、静かに座っていた。
「ねぇ、まだここにいる? 私はずっとここにいるよ」
彼の声は震えながらも強く、まるでその場から動かないかのようだった。
「戻ってきて。お願い、戻ってきて」
けれど、彼女の意識は曖昧で、その言葉は届かない。
りうらはそっと手を伸ばす。
でも掴めるのは冷たい空気だけ。
涙がぽたぽたと、白い床に落ちた。
「また、会えるって言ったのに……」
声が掠れる。
もう一度だけ、名前を呼んだ。
「お願い……もう一度、目を開けて」
彼女は目を閉じながら、かすかな記憶を辿る。
あの日の公園。 りうらの笑顔。約束。そして、最期の言葉。
「またね」
その言葉が、こんなにも残酷なものだと知らずに。
人は“夢を見るような意識”の中で、最期の数分間を過ごしてるかもしれない。
そんなことを信じて、りうらは何十分、何時間、最後の彼女との時を過ごした。
コメント
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書き方天才すぎ… ほんまに小6か??同学年か??
めっちゃ感動したッ_😭 書き方天才ッ_!✨