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9:45 P.M.
15分でバイトが終わると齋藤くんと話していた時だった。
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無機質な来店音。
「いらっしゃいませ。」
「腹減ったー、イヌピーなにか食いたいもんある?」
「飯。」
「一くんダメだよ、青宗甘やかしちゃ。」
「赤音さんも欲しいもんあったらカゴにいれていいから。オレが買ってやりたいだけだから、買わせて欲しい。」
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──────── 嫌な予感がした。
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ぐるぐると回るようなそんな感じ、吐き気とは違うのだけれど、人間の本能が動いたようなそんなもの。
「齋藤くんあれは」
「特攻服っすね。」
「特攻服着てくるやつって顔がいい人ばっかだね。」
「彼氏いないんですっけ。」
「別れた、好きじゃなくなったし。」
「お疲れ様っす。」
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白色のコートみたいなのはセンスいいな、っていうことを考えた。でもいいな、あーゆーのは欲しい、凄く好み。
残り5分前になって、検品と値付けも済まし、時間が過ぎるのを待つ。
いや、待ちたかった、ごとっと目の前に置かれたのはカゴ2個。しかもてんこ盛り、ふざけんな。
その様子をもうひとつのレジで、仕事帰りのサラリーマンの会計をしている齋藤くんは、私の方を見て微笑んでいた。
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「いらっしゃいませ、袋のご利用はどうなさいますか。」
「袋お願いします、適当にいれて大丈夫ですよ。あっ、私袋いれますよ!ほら、青宗も入れていって。本当に一くん大丈夫なの?こんなに沢山、お父さんお母さんから、お金盗んでたりとか」
「赤音さん、ちゃんと稼いだお金だって。」
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目の前 ” 赤音さん ” と呼ばれた女性だけが、私に好印象しかなかった。いや、今日来た三組のうちここがまだマシかもしれない。嘘。
カゴ2個分は殴り飛ばしたくなる。
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「ココ、プリン食いてぇ。」
「は?おま、イヌピー、会計終わる前に言うなよ。また今度な。店員さんにも申し訳ないだろ。」
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嘘、やっぱ好印象グループ、また来て欲しい。
「いいですよ、全然(笑)」
「ほらも〜青宗、さっさと持ってきなさい。本当にごめんなさい、すいません。」
「いえいえ、プリン美味しいですもんね。」
「あ〜もう恥ずかしい!青宗はやく」
10:00 P.M.は過ぎていた。
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コメント
1件
赤音さんめっちゃいい人やん…