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「…いってらっしゃい」
泣きながら呟く彼を他所に俺は口角を上げながら家を飛び出した。
やっと、やっと彼の口から聞けた言葉。
「いってらっしゃい」というその一言が俺の胸にじわじわと喜びを広げる。
2年、いや、それよりもっと待っていただろうか。その一言のために彼のそばにいて彼の言うことを聞いてきた。
でも、今日遂に聞けたんだ…!そう思うと感情が昂り体が震える。そして彼との思い出の道を走った。
都会の喧騒の中、彼と出会った場所へ、そして彼が俺を引き止める原因となった場所へ向かう。
少し物寂しくなって後ろを振り返ると辺りはビルも、彼といた家も全てがオレンジ色に染まっていた。まるで自分の背中を押してくれているような太陽に目を細め、
「大丈夫、俺が望んだ事だから」
とここには居ない彼に伝えるように呟いた。
そして、ようやく彼と出会った場所に辿り着き、立ち止まる。
耳をつんざくような金属と金属の擦れる音を聞きながら最後に一言、呟いた。
「逝ってきます」