昼休み。いつもならクラスの仲間と一緒にいる教室にいないことに気づいたはるは、不安な気持ちを抱えながら彼女を探しに教室を出る。
最初に向かったのは、かながよく一人でいるトイレだった。ドアの隙間から、ひっそりと中に入っていく姿を見たはるは、心の中で何かが引っかかるのを感じていた。
中に入ると、かなが個室の中で手首を見つめているのが目に入る。その表情は、まるで自分と向き合うのが怖いかのように暗く、どこか無表情だった。
「かな…」
はるの声に、かなは驚いたように振り向く。目の前には、普段見せないような辛そうな表情を浮かべた彼女がいた。
「…わ、私、別に…」
かなはすぐに言い訳をして、傷ついた部分を隠すように腕を引き寄せる。その仕草に、はるは胸が締めつけられるような思いを感じた。
「無理しなくていいんだよ、かな…」
はるは静かに歩み寄り、かなの手首をそっと掴んでその傷を見つめる。深い傷を見て、はるの胸が痛む。
「私、こんなこと…しても意味ないんだよね。でも、もうどうしていいのか分からなくて…」
かなの声は震え、目に涙がたまっていく。その瞬間、はるは何も言わずに彼女を抱きしめた。
「大丈夫だよ、かな。」
言葉はそれだけだったけれど、はるの優しさがかなの心に届いた瞬間だった。抱きしめられているうちに、かなは堰を切ったように涙を流し始める。ずっと溜め込んでいたものが、今になって一気に溢れ出した。
「もう、無理なんだよ…」
かなは泣きながら、はるの肩に顔を埋めて声を震わせる。その痛みを理解してもらいたくて、ただ一緒にいて欲しいと思っていた。
「そんなことないよ。私は、かなのことが大好きだよ。」
はるは優しく頭を撫でながら、力強く言った。その言葉に、かなは少しだけ心を軽くしたような気がした。
「大丈夫。大丈夫。」
そう言いながら、はるはさらにしっかりと抱きしめ、かなの背中を優しくさすってあげた。泣き止むまで、そのまま一緒にいてくれるはるの優しさに、かなは心から感謝する。
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