テラーノベル
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横合いからオーリが中々進まない話を促したのである。
「ねえ、サニー? アナタが一緒に行った所でナッキの無茶は変わらないでしょう? なのに何でそんな事を言うの? 死ぬわよ、アナタ」
このオーリの言葉にサニーは何時に無く凛とした表情を浮かべて答えたのである。
「違うよオーリ! 良いかい? ナッキはその身を捨ててでもこの池、『美しヶ池』を救おう、そう思っているんじゃないかぁ! だから僕、僕がその役に立たなければいけないんだよぉ! 良いかい、あの嵐の夜、僕は死んでいた筈だったろう? でも、ナッキのお蔭で生きる事が叶ったんだよ…… だからなんだよ! ナッキが無茶だろうがなんだろうがね、僕みたいな存在が彼を応援しなくちゃイケないんじゃない? 良いかい、オーリぃ? ナッキに貰った命だからとかそんな事を言っている訳じゃなくてね、どんな事でもナッキなら何とかしてくれる! そう心から信じられるのは僕だけなんだよ! だから付いていくのさ♪ そしてナッキの役に立ってみせるよ!」
「さ、サニー……」
答えられたオーリではなく、全幅の信頼を受けたナッキが呟きを漏らす中、オーリは胸を張るサニーに向けて言う。
「判ったわ…… でもアナタってカエル並に泳ぐの遅いじゃない、滝も一匹だけ登れないし…… どうするの?」
「えっへん、その事だったら心配無用だよ! ちゃんと考えてあるんだー」
「?」
サニーが同行する事を条件に、周囲を説得する事が出来たナッキは、大きな川の河口近い中洲を目指して猛スピードで泳ぎ続けていた。
必死に尾鰭を振るナッキにサニーは言う。
「ねえナッキ、ここら辺で丁度半分位来たと思うんだ、少し休憩して餌でも食べようよ」
ナッキは泳ぎを中断して答える。
「はぁ、はぁ、そ、そうなんだね、はぁはぁ、んじゃ、そうしようか、はぁ、はぁ」
「うん! 僕一回りして餌が無いか見てくるね!」
明るい声で言うとサニーはさっさと泳ぎ去って行ってしまう。
ナッキは息を整えながら思う。
――――最近池の中ばかり居たせいで大分鈍っていたみたいだ…… これからはこの川まで来て適度に運動しなくちゃな…… あと、ダイエット、か……
「ナッキ! あっちに美味しそうなボウフラが沢山居る場所があったよ! 付いて来て♪」
サニーが良い餌場を見つけて来てくれたらしく明るい口調で言う。
「あー、いや、僕はそこらの石に付いたコケで良いや、食べといでよサニー」
思ったその場から始めるとは、中々ダイエット向きの性格なナッキである。
お蔭で美味しいボウフラを独り占め出来る事になったサニーだったが、ナッキの傍に泳ぎ寄るとニコニコとした顔で、意外な事を口にしたのである。
「そうなの? じゃあ僕もコケで良いや、一緒に食べようねナッキ」
「え? う、うん、食べよう」
特段太っているようには見えない、と言うか人一倍小さいサニーがコケだけで良い? 疑問に思ったナッキは心中で分析をする。
――――ダイエットかな? そんな訳無いか、こんなに痩せっぽちで小さいんだから必要ないよなぁ、とすると…… あっ! 逆かな? 好き嫌いが激しいから大きくなれなかったとか? うん、理屈に適ってるじゃないのぉ~、だとしたら嫌味にならない感じで注意しておこうかな、うん、そうしよう! 友達なんだから当然だよね♪
そう決めたナッキは自分の横でコケを頬張っているサニーに声を掛けた。
「ねえサニー、『美しヶ池』で僕が子供達の面倒見てるのは知っているだろう? 最近、心配な事があってねぇ」
サニーは両の頬をパンパンにしながら顔を向けて聞く。
「モグモグ、そうなの? モグモグ、一体どんな事が心配なの? ゴックン、僕で良ければ相談に乗るよ?」
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