テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
死体が幾千と転がる平野。見渡す限り、もはや敵兵の姿はなかった。
(—–もう、いない……。
兄様の元へ行ける……!)
ユイは馬上から、生き残った配下たちへ声を張り上げた。
「ユイ部隊!
セイカ将軍のもとへ戻るぞ!」
「はっ!」
配下を率いて先頭を駆け抜けるユイの姿は、
地獄と化した戦場の中にあってなお、あまりにも美しかった。
(やっと会える……兄様。
今夜は祝杯の宴だな……。
早く、二人きりになりたい……)
愛する人のもとへ向かう—–
その思いだけで胸が高鳴る。
凛々しく、美しい兄の姿を思い浮かべるだけで、
身体の奥から喜びがこみ上げてくる。
しかし—–
早脚で駆けていたユイの馬脚が、次第に緩んだ。
(兄様は……この辺りのはず……
……姿が、見えない……)
ユイの瞳に映ったのは、
セイカ部隊の側近たちが、なぜか皆、地に伏して泣いている姿だった。
(……泣いて……いる……?
なぜ……?)
愛する人に会えるはずの高揚は、
一瞬にして、冷たい不安へと変わる。
「ユイ様……
セイカ様の部隊の様子が……」
側近の声が、震えていた。
(大丈夫だ……!
なんでもない……!)
そう自分に言い聞かせ、
ユイは再び馬脚を早めた。
早めた—–はずだった。
だが、近づくにつれ、
その光景は、否応なくはっきりと視界に入り込んでくる。
ユイは、心の臓が引き裂かれるような感覚を覚えた。
(早く……!
早く……!
早く……!)
—–そして、この先に待つ光景が、
あの戦場の慟哭へと繋がっていく。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!