終わりなんて告げさせない
記念日まであと1日
あした
仕事が終わり1時間早く帰ってこれた。
だめだ汗が止まらない。
時計
あと少しで鳴海さんが帰ってくる。
ふと視線を落とした。その先。
ふたりで撮った写真、
わざわざ飾りたいからなんて言って印刷して額縁にまで丁寧に入れちゃって
嬉しそうに置いてたな
そんなところまで全て好き。
好き
好きすぎる
こんなこと
自分以外の人にもやっているのだろうか。
もうあの笑顔も
すぐ拗ねるところも
目が合うと微笑んでくれて
不器用で少し言葉足りずなとこも
整理整頓が苦手なとこも
少しの変化でも気づいてくれて
少しのケガでも本気で心配してくれて
何かあったら一番に気づいてくれて
たくさんの愛を伝えてくれて
たくさん甘えてくれて
優しく激しく求め求められる夜
毎日、見た優しい寝顔
自分だけ
全部
全部ずっと自分にだけ向けられてると思ってたよ
あの日あの時
見なければこんな事にはなってなかった
何も思わず立ち直れば良かった
何も深く考えなければ良かった
全てが
全部全部失敗だった
未練
それしかない
やると決めた。最後までやり切る
~
がちゃ
「ほしなただいま」
……今日も来ない
無事終われるかな
「ほしな」
「…おかえり」
「弦くん」
「…ぇっ、……ウン、…」
「ただいま……そうしろぅ、…」
あぁ、ほんとに名残惜しい。
弦くん
って呼ぶと必ず宗四郎って返してくれる
何度も聞いた。
2人きりのとき。甘えてくるとき。セックスしてるとき。ねるとき。おきるとき。
まだちょっと。普段こーやーって呼ぶと少しだけ照れる。照れてすぐ視線を外すクセ。それでもちゃんと自分からも。と、しっかり名前で呼んでくれる。
いつかこーやって名前で呼んでも照れずに、毎日ちゃんと、いつでも名前で呼べる日が来たのかな。
離れたくないなあ、…
ずっと、一緒にいたい
ずっとふたりでいたかった
思い出しかない
心臓が裂けそうだ
「なあ、弦くん」
「ん、?」
「僕らもう終わりにしましょ」
「は????」
は、??、
だらだらと冷や汗が止まらない
なんで
目の前が暗くなりそうだ
「は、…ぇ、…ほ、ほしな、????」
「なんで、……」
声が出ない。震える。ちゃんと言葉として届いてるだろうか
「……もう、…僕弦くんのこと好きやなくなったみたいや」
嘘
嘘
そんなの嘘
ずっと好き
ずっと好き
誰よりも好き
ずっと一緒にいたい
でもこうしないと
鳴海さんが幸せなら別にいい
自分じゃなくても
あの日見た人にもし惹かれてるなら
この関係は自分から切ってあげないと。
きっとこの人はどこまでも優しいから。
そんな優しさに溺れて沈んでかないように
自分からキッカケは作った。
あとは出てくだけ
今。
しんとした部屋。椅子を引く音
「ずっと好きでした」
短い廊下。すごく長く感じる。すくむ足を前に出し歩き始める
「は、まっ、……ほしなッ、!!!!」
ぐいっと引っ張られた
「………は、????」
「なんで」
「泣いて、……」
だめだもう抑えが効かない
溢れないように我慢してた
もう無理だ
ほんとにもう戻れなくなってしまう
「っ、…さ、……触らんといて、もう、……」
手を振り払い早足で扉に手をかける
がちゃ
何も無い
音すらしない
今一番大切な人に振られた
目の前で出てった。
追いかけなきゃ行けない。
足が動かない
行きたいのに。
どこで間違えた??何かした??なんで今??
だめだ思い当たる節がない
なんで
ボクらはずっと順調だったはず
どこで間違えた
何がいけなかった
なんで
目元が熱い
部屋でひとり
とまらない
ずっと出てくる涙
気持ちの整理がつかない
呼吸が荒くなってる気がする
もう、、好きじゃなくなった、??
いや嘘だ
絶対
探しに行く。
端末とスマホ、財布をポケットに乱暴に詰めた
外寒、
探す
あんな一方的に言われて、
全部分からないまま終われるか
嫌われたならまた惚れさす
ボクにかかればあんな攻略イージーだ
絶対に
「終わりなんて言わせない」
ねくすと70
じかい!







