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1945年、8月15日。私は神の声を聞き、涙した。
潮風、揺れる船。私は祖国、日本を離れ、亜米利加の植民地、比律賓へと向かっていた。
真珠湾攻撃の後、1944年の1月、日本軍は比律賓に上陸、そして占領した。
だがまだ敵の残党が残っている。現地の日本軍を支援するため、私は送られた。
従軍看護婦。それは野戦病院などで兵士の看護を行う者。 私は、看護学校に通っており、卒業後直ぐこの地に送られることになった。
「あなたも看護婦?一緒ね〜」
海を眺めていると、後ろから声がした。
振り返ると、3人の女性がいた。声をかけたのは優しそうな長い髪の女性だった。
「私は廣瀬カナ。25歳よろしくね、 」
長い髪で、おっとりした声、母親の様な温かさがある。
「そしてアタシが相模涼子!19だ!
んで、こっちの弱っちいのが**村田チヨ。**あれ、お前幾つだっけ?」
強気そうな短髪の女性が次に自己紹介をする。「18歳です…よ、よろしくお願いしますぅ…」
涼子の後ろに隠れていた背の小さい三つ編みの女性、チヨが小さな声で話した。
「よ、よろしくお願いします、私の名前は**中野トワ。**チヨさんと同じ18歳」
「トワちゃん!よろしくね。私達、船の皆に挨拶してたの。一緒に行かない?」
カナが笑顔で話しかける。優しい笑顔が眩しい。
「はい、ぜひ」 「敬語なんて使わなくていーよ!もう歳が上とか下とかカンケーねーよ!」
「う、うん」
そうして私達四人は何人かに挨拶していた。
その時、軍服を着た女性を見つけた。
「あの人…兵隊さん?でも…女性の兵隊さんって…」
「こんにちはぁ〜」「あっカナのやつ!緊張とかねぇのか!?」
すると、その女性は振り向いてこちらを見た。
背が少し低くて、短髪。煙草をくわえていた。
「やぁ、君たち、看護婦?」
「ええ、あなたは…兵隊さん?」
「ああ、私は宇佐美アキ。16だ。階級は少尉」
「16歳!?」
16歳?16歳なんて私はまだ学校に通ってたのに… そんなに小さい子が戦いに行くなんて、と私は絶句した。
「じゅ、16さいぃ!?そんなに…まだ若いのに何故行くんです…?しかも女性には徴兵の義務は無いし…」
チヨが怯えた声で話す。話している相手は年下だが、目上の相手だ。怯えて緊張するのも無理は無い
「私の祖父が軍人でな。私は祖父に憧れてたんだ。まぁ、私が生まれる何年も前に死んだんだがね。完全に私の意思だよ。国に残って勉強もするのも、軍需工場でずーっと働くのもつまらないしな。 」
勇敢で、軽そうに話しているが、彼女にはどこか寂しさがあった。心を開いているようで誰にも自分の本当の心は見せない。そんなような…
「すげえな…ていうかアキ少尉殿よ〜煙草吸っていいのか?カナならともかく、20歳未満は吸っちゃいけねぇって…」
涼子が突っかかってくる。こういうちょっと強気なところが、いいのか悪いのか…
年下だが、少なくとも目上にする言動では無い…
「ははは、すまないすまない。ついハマっちゃってね、許しておくれ。私は恐らくその戦争に国が勝とうが負けようが20歳を迎える前に死ぬよ。のんびり待っている暇 はないんだ。
」
その言葉にはっとして、さっきまで笑顔だったカナも私達も黙り込んだ。そうだった。私達が今から行くのは戦争。決して観光地なんかじゃない。
地獄に往くのだ。
「ほら、島が見えたぞ。」
その島を見て、固唾を飲んだ。私達の運命は、この地に全て委ねられたのだと、実感した。
人物
主人公ー中野トワ 18歳 従軍看護婦
看護学校卒業後、すぐ招集されフィリピンへ
廣瀬カナ 25歳 従軍看護婦
幼い双子の子供がいるが招集された 子供は現在カナの両親の元で暮らしている
相模涼子 19歳 従軍看護婦
強気な女性。看護学校では皆の憧れ的存在だった。
村田チヨ 18歳 従軍看護婦
背が低い弱々しい女性。実は主人公と同じ町に暮らしていたが、広い町だったため2人はそれを知らない
宇佐美アキ 16歳 陸軍少尉
死んだ祖父に憧れて陸軍に入隊。両親は戦争で既に他界。祖母と共に暮らしていた。煙草が好き
※この作品で起こる出来事は、第二次世界大戦と、その中で起こったフィリピンの戦いをモチーフにしていますが、フィクションです。
これらの登場人物は架空の人物です。
間違えた知識も入ってる可能性があるので、あくまで小説としてお楽しみください。