今日は私が担当している爆弾事件のカウントダウンfaxが届く日だ。そのため登庁していた。届いた内容はこうだ。
[我は円卓の騎士なり 愚かで狡猾な警官諸君に告ぐ 本日正午と14時に我が戦友の首を弔う面白い花火を打ち上げる 止めたくば我が元へ来い 72番目の席を空けて待っている]
「行くか」
私は工具セットを持ち術式を発動させる。飛んだ先には杯戸町のショッピングモールの大観覧車の近く。72番を目指す。そこには松田の姿。
「こういうことはプロに任せな」
『ちょっと失礼』
「セリ?!」
松田と共にゴンドラに乗り込む。
『はあ…何してんだか。君、担当じゃないでしょ?』
「セリだって違えだろ?!動いてんのは捜一だ」
『ここだけの話、裏で関わってんの』
爆弾を見る限り、術式を使われた様子はない。松田が解体し始め、私はスマホで上司に報告する。
『もしもし。術式の使用はありません。非術師と乗り合わせました。彼が解体しています。はい。いざとなれば。では』
「術式、非術師ってなんだ?」
『集中しなよ』
「…」
ドンッ
別のところが爆発する。
「チッ…水銀レバーのスイッチが入っちまった」
『犯人はこれが狙いだね。近くにいるな』
術師だったら誰か分かる。しかし相手は一般人だ。松田の電話が鳴る。どうやら下に居た女刑事と話してるようだ。
「勇敢なる警察官よ…君の勇気を称えて褒美を与えよう…もう一つのもっと大きな花火の在処のヒントを…表示するのは爆発3秒前…健闘を祈る…これがたった今液晶パネルに表示された文字だ…どうやら爆弾を止めてパネルの電源が落ちると、2度とそのヒントは拝めなくなっちまうらしい…つまり奴は最初から警察の誰かをゴンドラに閉じ込めて、この文字を見せるつもりだったってわけだ…」
《じゃあさっきの爆発は…この近くに爆弾犯がいるのね?》
「この人混みの中から奴を特定するのは難しいが、もう一つの爆弾の在処の見当はついてるぜ…」
《え?》
「faxに書いてあったろ[我が親友の首]って…円卓の騎士は中世ヨーロッパ!あの頃の騎士は大体、十字架がデザインされた仮面をつけてんだ…もう分かるよな?」
《びょ、病院の地図記号!?》
「ああそうだ!それが何処の病院かヒントを見たら連絡する…」
《れ、連絡するってヒントが出るの3秒前でしょ?》
「おっと、もう電池が切れそうだ…じゃあな…」
松田は電話を切る。
『さっすが刑事さん』
「セリも分かってたろ」
『まあね。私が爆発直前で止めるから、連絡入れてね』
「ああ…セリ」
『ん?』
「この案件、本当に公安なのか?そうだったら捜一は捜査出来ねえだろ」
『そうだって言ってんじゃん。私の部署はちと特殊なの』
「何処だ?」
『…公安課』
「嘘つけ」
『さあ、そろそろ時間だよ』
松田が連絡を入れる。場所は米花中央病院だ。私は爆弾を止める。
『お疲れー』
「ああ」
『どうすんの?爆処戻んの?』
「犯人は捕まえてねえし、まだ居るつもりだ」
『ふーん』
「…セリ、もし俺が居なかったらどうするつもりだったんだ」
『爆発するつもりだったけど』
「馬鹿言ってんじゃねえ!死ぬ気だったってことかよ?!!!」
『ブーメランだって分かって言ってる?』
「っ、」
『ま、生きてて良かったね』
「そうだな」
観覧車が動き出すまで時間がかかるそうだ。
『私のことは他言無用で頼むよ。何を聞かれても知らないで通してね』
「無理があんだろ」
『頑張って』
術式で飛びたいのは山々だが、松田の前でそれは出来ない。大人しくしていよう。
♪♪
私のスマホが鳴る。
『はい。爆発は阻止しました。犯人は非術師ですね。人混みから発見できませんでした。ええ。前の爆弾から見られた置換術式の正体が掴めません。そうですね。了解です』
引き続き私が担当することになった。面倒だ。暫くして観覧車が動き始めた。
「なあ、さっきから知らない単語ばっか聞こえるんだが、そりゃなんだ?」
『別に気にしなくていいよ。こっちの専門用語』
「ほおん」
『あ、そうそう。先降りてね。君達が感動の再会をしてる間にささっと姿くらますから』
「なんだ?感動の再会って」
『下の人達は松田が爆死するかもって思ってたわけよ。無事に帰ってきたら嬉しいもんでしょ』
「…そうか」
『そうだよ。そろそろだね』
「セリ」
『何?』
「…また、会えるよな?」
『…さあ。会えたらいいね』
「会いに行くからな」
『…楽しみにしてる』
「それから…」
『ん?』
「死ぬな」
『ふっ…約束はできねーな。でもひとつ、私と約束してくれるなら、私も頑張るよ』
「なんだよ」
『命は大事にしな』
「…おう」
下に降りると女刑事が泣きながら松田との感動の再会を果たしていた。その間に気配を消し、私はその場を去った。
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必ず会えてくれよセリさん