──────れいまり視点──────
私がガンマスさんが生きているかを確認するために声をかけるが、その声はすぐにはかえってこず、表情を笑顔で保てなくなる。まさか、既に死んでいたのか?そんな焦りが脳を回る。しかし、その考えは違うようでガンマスさんから悲鳴に似た言葉が耳元で発せられる。
「れいまりさん!危ない!!」
耳元でガンマスさんの声がひびき、安心したのと同時に、耳がキーンと痛む。本当ならば、感動の再開とでも言うべきなのにどうやら私たちの身に危険が生じているらしい。ガンマスさんが私の腕から離れようとするものだからそれはすぐに引き止める。
しかし、これ以上ガンマスさんが傷つくのは私の本望ではない。素早く空中に御札を貼り、結界を作りだす。青白い光が私たちの周りを覆うように攻撃を防ぐ。どうやら襲ってきていたのはメテヲさん本人ではなく、様々な属性がまとった矢のようだった。あまり強い攻撃ではなく、結界にあたってすぐに空気に混じり、消えていった。
…手応えがあまりない。敵意がないのだろうか?そんな思考の海に入りかけるのをガンマスさんの言葉で意識を急浮上する。
「れいまりさッ!」
私は素早くガンマスさんの言葉を遮る。ただ、強く遮ってしまえばガンマスさんが不快になってしまうかもしれないのであくまでおちゃらけた様子で。
私は自身の唇に人差し指を軽く置き、片目をパチリと閉じる。俗に言うウィンクと言うやつだ。
さて、ここからは私が想定してないパターンだ。本来ならここで切り札を切り、1悶着したあと撤退、という流れにしようと思っていたのだ。面白い戦闘をしつつ、置き土産をして撤退。しかし、これは既に切り札を使ってしまってすることが出来ない。だから、ここからはガンマスさんを説得しなければならなかった。
「ガンマスさん。1時、撤退しましょう。」
そう提案すればガンマスさんは明らかに嫌そうな顔を浮かべ、それと同時に驚いているように感じる。…やはり、ここから戦おうと思っていたらしい。馬鹿なのだろうか、正直そう思ってしまう。先程の大技、体力をあまり消費しているように見えなかった。つまり、あちらにはまだ切り札を用意しているはず。正確に言えば、あれはメテヲさんの中では大技に入らないのだ。それに、今、明らかに隙だらけの私たちに攻撃を仕掛けに来る様子がない。これは暗に、帰れ、と言っているようなものだ。このチャンスをものにしなくてはならない。
「逃げ帰る…逃げ帰るんですか?」
ガンマスさんは無意識なのかもしれないが、私の服を強く握りしめる。それは可愛い、なんてことは無い。怒りによっての行動だってわかった。私は、ガンマスさんを怒らせてしまったらしい。私は素早く言葉を取り繕う。
「違います。戦略的撤退です。この情報を皆さんに共有しなければなりませんから。」
そう、そして2対1ではなく、他のメンバーも引き連れてくれば簡単、とまでは行かないが、犠牲を出さずに倒すことが出来るはずだ。
「それは、私が殺した天使があまりにも報われないと思いませんか?私がここで潔く死ぬべきなんですよ。」
…やっぱり、とでも言うべきか。ガンマスさんは死ぬ気だったらしい。そんなことを私が許すと思ったのか。しかし、私には無理やり連れ帰る方法がない。私は死後と地上を行き来する力を持っていないからだ。ここで引く訳には行かない。
「私は、ガンマスさんを救う為だけにここまで積み上げてきて、手札を切ったんです。引きさがれるわけないじゃないですか。」
私の声に怒気が混ざるのを感じる。本当は怒りたくなんてなかった。ただ、ガンマスさんが自身の命を軽んじているのが許せなかった。
「その言い方的には、こうなることがわかってたみたいに見えますけど?」
そこをついてくるのか。しかし、それに対する返答はいえもんさんと話した時に決めている。
「私、未来が見えるので。」
これは嘘だ。未来が見えるように振る舞うことは可能だが、見ることが出来るのはせいぜい1日後や、長くても1週間以内の出来事くらいだ。これを企てていたのはずっと、ずーっと前。未来を見た出来事ではないし、このことについては未来を見た事はない。
私の嘘がバレないように、あたかも誇らしげに空中でくるりと回転する。
「…なるほど?」
「あっさり信じてくれるんですね。信じてくれないと思っていました。」
驚いたような表情を浮かべつつ、そんなことはどうでもよかった。信じても、信じられなくてもどうでも良い事だったからだ。
今、脳にピーンとくる。これは、話をそらされているのだと。私は話を切り替える。
「…と、雑談はいいんですよ。それよりも帰りましょ?ね?」
私は、少しだけ圧をかける。ガンマスさんは観念したようにため息をく。
「わかりました…。帰りますよ。今回は。」
そうガンマスさんが宣言すると心の中でガッツポーズを決める。どうやら、最悪の未来は回避されたようだった。全身で喜びを表す。
「本当ですか!?わーい!!やった!!帰りましょ帰りましょ!」
私はそう言って拘束していたガンマスさんを手放す。私は死後と地上を行き来するゲートを作ることは出来ないけれど、ガンマスさんは作ることができるからだ。
いつ見ても禍々しゲートだが、今日はその中にある星が鮮明に見ることが出来る。私はガンマスさんを離さないよう強く、手を繋ぐ。ガンマスさんの体温が直接伝わってくる。温かい。ガンマスさんは生きている。
その瞬間、強い風が後ろで発生する。何事かと後ろを振り返ればガンマスさんの顔を覆っていた布が取れている。
「あ”ッ!?」
忘れていた。ガンマスさんは諦めの悪い人だったと。この風は手を塞がれているガンマスさんがわざと発生させた風なのだと。その目的は、私に瞳を見させるため。
私は見ないように目を閉じようとしたが、僅かに閉じ遅れた瞳が、その光を見てしまう。貪欲なほど暗い光。おぞましくも、見ずにはいられない。そう、これがガンマスさんが私に最後に与えた『救済』。ガンマスさんという鎖を消す、というのが救済らしい。それは、私の望む救済ではない。見誤ったのだ。ここまで順調だったから忘れていたのだ。…騙されていたのは私だったようだ。力が抜ける。離さぬように強く、握りしめた手は私の意思とは関係なしに緩くなり、離れていく。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!!!
ゲートがプツリと死後への扉を閉じる。暗闇の中で星のように輝いていた光は見えなくなる。暗くて、寂しくて。私は、選択を間違えた。心のどこかで侮っていたのだ。体の自由が聞かず、身体の流されるがまま、私はその導きに従うしかなかった。頬を冷たい水がつたう。先程まで温かかった手の感触は薄れていく。
間違えたのだ。ここまで、完璧にやってきたのに。最後の最後で油断して、馬鹿みたいだ。
なんのための、だいしょうだったのだろうか?
ここで切ります!昨日投稿できなくてすみませんでしたァ!!!ただの体調不良なので気にしないでください。今はある程度は大丈夫です!
れいまりさん編はあとひとつやってお終いにさせていただきます。ご了承ください!!次はめめさん編ですね…と言っても、めめさん編では特に戦闘をするつもりはなく、精神的なダメージを負いまくります!!はい!!お許しを…!!
それでは!みなさん、おつはる!!
コメント
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おおぉ、結構ヤバめの執着心のsrさん、 やっぱ神様のは意味が深い、 体調大丈夫???
SANチェック多いのか…