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攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。『月〈前編〉』の続き。
ご本人様たちとは全くの無関係。
いつも以上にご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですので要注意。たくさんの愛はある。
相当な覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!
side.トップ
「…なんだ、やっぱりこの言葉知ってたんだ」
「当たり前だろ」
「じゃあちゃんと言うね?」
ジヨンはそう言うと、俺の手を握った。細くて綺麗な指なのに、どこか男らしいそれが好きだった。
「俺、タプヒョンのことがさ、好きだよ」
特に緊張した様子もなく、まるで挨拶を交わすようにサラッと告げられた。初めて聞いたはずなのに、もう何度も言われたことのあるような感覚がして、そしてなぜか俺も当たり前にそれを受け入れていて。ずっと昔からこうだったみたい。彼といるとふとした瞬間にそんな感情になる。俺たちは昔1つだったんじゃないかって錯覚するような、友達とも家族とも違う、不思議なもの。
「…ああ、知ってる」
「ふふっ、なにそれ」
だって俺も、ジヨンのことが、
自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。それに引っ張られるように意識が浮上して、ぼやけていた視界が徐々に明るくなった。目を擦ると見慣れた天井が見える。
(………夢、か)
どうやら深い眠りについていたらしい。今が何時かわからない。ベッドも枕も心地よい柔らかさで、また瞼が勝手に降りていく。このまままた眠りにつきたい。夢の中へ潜っていきたい。夢なら彼に会えるから。
「…ねぇ、ちょっと!いい加減起きなさい。起きないなら開けるわよ?」
コンコン、と乱暴にノックをされた。目をギュッと瞑って、掛け布団を頭の上まですっぽりと被る。このまま聞こえないフリを貫いて寝てしまおう。そうすれば確実に姉はそのドアをあけてズカズカと入ってくるやいなや俺を叩き起すだろう。分かってはいるが、今は身体を起こしたくない。
「ごめんなさいね、見苦しいところを見せてしまって…」
「いえいえ」
………誰かいるのか?
「タプヒョンは昔から、寝起きが悪いですから」
被っていた布団を跳ね除けてガバッと身体を起こした。先程まで眠ろうと思っていたことが嘘のように脳の奥が冴えていく。聞いたことのある声に、たまらず背筋が震えた。
ガチャっとゆっくりドアが開く。呆れたような顔の姉の後ろ、久しぶりに見た弟。
「……………テ、ソン」
喉になにかつっかえたみたいにうまく声が出なくて、掠れて震えたものになってしまった。
「……久しぶり、タプヒョン」
そう言って困ったように微笑んだ彼の笑顔に、俺は自分の顔が歪んでいくのがわかる。
「じゃあ、私は用事があるから。狭いところですけど、ゆっくりしていってください。」
離れていく姉に頭を下げてから、テソンが入ってきた。俺は身体が動かなくて思わず固まってしまう。彼はゆっくりと歩み寄ってくると、ベッドの脇にしゃがみ込んだ。
「すみません、僕が無理言って押しかけてしまったんです」
「…いや……だい…じょうぶ、」
「元気にしてましたか?体壊したり体調崩したりは?」
「………して、ない……元気だ」
「そうですか、ならよかったです」
少し痩せましたね、と笑う彼に、俺はどうしていいかわからなかった。なにか言わなければ。でも頭がぐちゃぐちゃだ。全部投げ出して、逃げ出して、あの夢に帰りたい。
「……テソン、」
俺は目を逸らして、そのまま頭を下げた。
「………ごめん。ごめんなさい。迷惑かけて……ほんと、馬鹿なことした。謝っても、許されないことだって、わかってる。わかってるけど……ごめんなさい」
テソンはなにも答えない。沈黙が怖くてたまらずギュッとシーツを握りしめる。
すると、その手の甲を彼が優しく握った。驚いて顔を上げる。そこには昔から好きだった、人懐こい笑みの彼がいた。
「……そんなに何度も謝らないください」
「テソ、ン…?」
「1回、あなたの口から謝罪の言葉を聞けたら、僕は許すって決めてました。だから、そんなに自分を責めないでください」
「…っ、」
思わず泣きそうになって唇を噛み締めた。今の俺はこの優しさに甘えてはいけない気がして、泣いたらダメだと思った。
失礼します、と言ってテソンがベッドに腰かける。
「戻ってきませんか、僕らの元に。ずっと…待ってますよ」
「そんな…戻る資格なんて、俺には…」
全てを裏切ってしまったことへの罪悪感が今の俺を形成してると言っても過言ではない。そうだ、俺は彼に、ただいまを言う資格なんてない。
「……幸せになって、いいはずがない。こんな俺が……」
「…………幸せになっていいかって、誰が決めるんでしょうね」
「……」
「僕は幸せになってほしいですよ。タプヒョンも……ジヨンヒョンも」
「ぇ……、」
突然出たジヨンの名前に、思わずテソンを見る。彼は眉を下げ微笑んだ。
「聴きましたよね?ジヨンヒョンの歌」
「………ああ」
「あの人があんなにストレートに愛を歌ったことがあったでしょうか」
「……」
「僕は、初めて歌詞を見たとき思わず泣きそうになりました。あのときの答えが見えたから」
「…答え?」
「覚えていますか?酔ったタプヒョンが僕に言ったこと」
月が綺麗だね、だってさ。そんなんで、伝えた気になってんじゃねーぞ、ばーか。
「あのときは意味がわからなかった。でも今ならわかる」
「……テソン」
「僕は昔から、あなたたち2人が不思議でならなかった。一定の距離を感じながらも、ふとした瞬間に混ざりあってしまうような、そんな感覚に囚われていました。別のものなのに、急にくっついて同じものに見える、みたいな……うまく表現できませんけど」
「……」
「僕は、今……その不思議な感覚が恋しい。ジヨンヒョンもタプヒョンも、まるで身体の半分がなくなってしまったように見えるんです。そんなわけないのに」
テソンはそう言うと、面白そうに笑った。
「あの歌はジヨンヒョンからの問いかけです。あなたに対しての。待ってるんです。ずっと、おかえりって言うのを。ただいまを聞くのを。今度はタプヒョンが応える番だと思いませんか?」
胸のあたりがグッと痛くなる。空っぽだと思っていた身体に、久しぶりに揺れ動く心を感じた気がした。
side.ジヨン
「乾杯」
グラスを軽く合わせて、一気に喉に流し込む。ビールの爽快感は何度も味わってもたまらない。
ワールドツアーを終え一区切りの今ちょうど休みだったのもあり、久しぶりのヨンベからの飲みの誘いに二つ返事でOKをした。ヨンベとこうして2人で飲むのは好きだった。昔からの付き合いだが、彼とは大きな喧嘩も衝突もない。いつも俺を影で支えてくれている。大切な仲間で、友達。彼とはいつまでもそんな関係を築いていける気がする。
「なんか食べる?…って言っても大したものはないんだけど」
「いや、ご飯は軽く食べてきたから」
ヨンベの答えに、冷蔵庫の中を見ながら適当にツマミになりそうなものと酒出した。俺の家で飲むことになったわけだが、急だったのもありもっとちゃんといろいろ揃えておけばよかった。
「ならいいけど…もし減ったらなんか取るから言ってね」
笑顔で頷く彼に、俺は座り直すとまたグラスを煽った。
俺たちが話すのはもっぱら音楽の話か仕事の話。真面目なヨンベの思いを聞くのは純粋に好きだし楽しかった。
「ところでさ、」
「ん?」
「ジヨンは会いに行かないの?タプヒョンに」
酒もだいぶ胃に入って話題がひと段落したころ、ヨンベがサラッと言った言葉に俺の動きが止まる。
「……」
「…今、実家に戻ってるらしいじゃん。この前テソンが行ったってさ」
「…そう、だったの」
酔ってボーッとしていた脳が一気に冴えていった。厳密に言えば酔いきれていなかったのだが。あの日からそうだ。彼が俺たちの元を去ってから、俺はいくら飲んでもどこか酔いきれない。綺麗な月を見ながら彼とワインを飲んだときのように、ふわふわとして幸せな心地になれない。身体の中から、心が全部こぼれ落ちてなくなっちゃったみたいに、あの日からずっと空っぽだ。
「……」
「歌で伝えたって、直接言わなきゃな?」
「………やっぱ、気づいてたんだ」
「……まあ、なんとなく」
はあ、と大きく息を吐き出してから水を飲む。ヨンベは優しいのに、物事をはっきりと言ってくれる。きっと今だって、俺が身構えないように何事もないかのように話を振ってれたけど、きっといろいろ考えていたに違いない。
「……会いたいって思ってるのが、俺だけだったら寂しいから」
「………拒絶されるのが怖いから、待ってるのか?」
言われてから、そうなのかもしれないと思った。会いに行って、会いたくないって言われたら嫌だから、それならずっと待っていようって思ってるのかもしれない。俺は小さく頷いた。
「……俺は、さ。ジヨンとタプヒョンがいつも不思議でならなかった」
「…?」
「なんかこう、言葉にするのは難しいけど…2人って、ある程度の距離を保ってるなーって思ってたのに、ふとした瞬間ぴったり重なって見えてた。2人にしかない空気というか、関係?みたいな…少なくとも俺にはそう見えたし、そういった感覚に囚われてた」
「…」
「タプヒョンが、もう俺たちと活動しないって聞いたときの、ジヨンの顔が忘れられないんだ。感情が全部抜け落ちたみたいに無表情で、まるで身体のちょうど半分がなくなって、人の形を保てなくなったように見えた」
彼はそこで1度言葉を区切ると、ゆっくりとこちらを見た。
「……きっとタプヒョンも今、同じだと思う。お前と同じこと思ってお前と同じこと考えてる。2人とも、強そうに見えて弱くて臆病者だから」
胸のあたりがグッと痛くなる。空っぽだと思っていた身体に、久しぶりに揺れ動く心を感じた気がした。
side.トップ
テソンが家に来てから、もうすぐ2週間が経つ。
俺は変わらず実家にいたまま、曲作りをしながら姉の子どもの相手をする毎日を送っていた。家を出るのはまだ怖くて、でも彼が家に来てから明らかに身体に重みが増した気がする。それは物理的なことではなく、空っぽだったと思っていた身体に、徐々になにが入っていくような感覚だった。
相変わらず毎日のようにジヨンの夢を見る。あの夜、月の綺麗な夜、ワインを飲んだあの日の夢。それはそこに全てを置き去りにしてきてしまったことを忘れないようにするようだった。
“僕は昔から、あなたたち2人が不思議でならなかった”
テソンのあの言葉を聞いたときは心底驚いた。のに、同時になぜか納得もした。無意識下に俺は同じことを思っていたから。だからあの夜、ジヨンからのキスをなんの疑いも躊躇いもなく受け入れたのだろう。
「……ちょっと休憩」
ペンを置いて一息つく。充電器に繋いでいた携帯を手に取って、休憩がてらに様々な音楽の動画を漁っていた。
「……ぁ」
関連動画にジヨンのものがあり、思わずスクロールしていた指を止める。この前までのワールドツアーの動画。見たいような、見たくないような。よく分からない感情がぐるぐると渦巻く。
俺は散々迷った挙句に、結局タップしていた。ファンが上げたであろうそれに映る彼を見たとき、またしても身体が重くなる。歳をとっているはずなのに、時が止まったかのように変わらない彼。
『…残念だけど、次で最後の曲』
悲しみの声を上げるファンの声。ジヨンは優しく微笑むと、マイクを握り直した。
『歌う前に、この曲について、話したいことが。あ、そんなに身構えないでください、僕が話したいだけなので』
『実はこの歌詞を書いたときのこと、あまり覚えてないんです。いつの間にかできてた、みたいな。不思議で、でもとても……思い出深いんです』
『伝えたい相手がいて……その人が聴いてくれてるといいんだけど。どうかな、わかんないや』
『これは僕のメッセージであり、後悔でもあります。僕にもっと勇気があったなら…と、歌う度に思ってます』
『待つことしかできない、こんな弱い僕だけど……でも、』
『きっと……いや、絶対に…僕は、懲りずに待ち続けるんだと思います。』
『………ごめんね、少し長くなっちゃった。そろそろ歌います。聴いてください』
後半は、ぼやけて画面が見えなかった。溢れ出した涙は拭っても拭っても止まらなくて、俺は声を押し殺すように泣いた。
「く、ぅ……ふ……じよ、ん」
相変わらず高音が綺麗な声。なのに自分の嗚咽がうるさくて半分も耳に届かない。動画のコメント数はとてつもない数になっていて、様々な憶測が飛び交っていた。こうなることは彼もわかっていたはずだ、それでも伝えたかったのだろう。俺が見るかなんてわからないのに、全てを賭けたのだ。
“……ふは、なんだそれ”
“そんな回りくどい言い方じゃなくて、はっきり言えば?”
“俺が好きだって”
何度も見た、夢の中の自分のセリフが蘇る。
お前だけじゃないよ、弱いのは俺も同じ。お前に全部背負わせてごめんね。もし願いが叶うなら、俺もそれ半分背負っていいかな。
俺は動画を閉じると、電話帳を開いた。躊躇いもなく番号をタップする。しばらくの呼出音のあと、音が止んだ。
「……もしもし、テソナ?悪いな忙しいときに。ちょっと頼みたいことがあって」
今日は天気がいい。夜にはきっと、綺麗な満月が見える。
side.ジヨン
携帯の呼出音に目を覚ます。今日は久しぶりの1日オフで、昼からぐっすり寝ていた。夕方から夜に変わる頃。俺は目を擦って表示された相手を見た。
「………もしもし、」
「もしもしジヨンヒョン?今大丈夫ですか?」
「うん大丈夫だよ」
「……もしかして寝てました?ごめんなさい起こしちゃって」
「んーん、もうだいぶ寝てたから」
可愛い弟のテソンからの電話となれば起きないわけにいかない。というか彼から電話があるのなんて珍しい。なにかあったのだろうかと心配になる。
「なんかあった?」
「あの、近々空いてる日ありませんか?話したいことがあって会いたいんですけど…」
「それは全然いいけど…テソンの都合いい日は?」
「え、いや…僕は割といつでも大丈夫というか…ジヨンヒョンは?」
「んー……じゃあ、」
チラッと時計を見た。偶然にも今日は休みだし明日も夕方から打ち合わせが入ってるがそれまでなにもない。
「急だけど、今日の夜とかどうかな?」
「えっ、今日ですか?」
「あ、ごめん都合悪かった?」
「い、いや全然!ヒョンがいいなら…」
「うん。ちょうどなんもないし」
本音を話すなら、今日あたりトップの家に押しかけようかと思っていた。この前ヨンベから背中を押されたこともあるが、そろそろ俺も前に進まなければとも思っていたから。
でも察するに、テソンもなにやら急用で話したいことがあるらしい。声に少し緊張が混じっていたし、会えると伝えたときに明らかにホッとした声をしていた。
「じゃあ…僕から誘っておいてなんなんですけど、場所もこちらで決めていいですか?」
「もちろん」
告げられたのは何度か泊まったことのあるホテル。てっきりテソンの家か俺の家かと思っていたから些か拍子抜けした。仕事の都合だろうか。それともなにか畏まった話題なのか?
「…わかった」
車で行くかどうか迷う。行ったら酒を飲まないという選択肢は俺にはないだろうし。タクシーを使おうか。
散々悩んだ結果、どうせ泊まればいいやと思い、車を走らせることにした。
車に鍵をかけてから、運転中にテソンからきていたメッセージを確認する。
『ホテルに着いたら僕の名前とジヨンヒョンの名前を言ってもらえれば部屋に案内されると思います。フロントには話はしてあるので。部屋で待ってます』
今着いた、と返してから携帯をポケットにしまった。彼の言った通り話は通っていたようで、名前を言えばすぐに部屋までの行き方を説明された。フロントの女性の笑顔に軽く頭を下げてからエレベーターに乗る。
彼が待っているであろう部屋はすぐ辿り着いた。今更ながら手ぶらだったことに気づく。ルームサービスで頼めばいい話なのだが、せっかく久しぶりに会うならシャンパンの1本でも持ってくればよかった。
コンコン、とノックする。かけていたサングラスを外しながらドアが開くのを待った。が、中々開かない。送ったメッセージに気づいてないのかな。
「テソン?俺だけど、いるんだよね?」
声をかけてからもう一度ノックしようとした瞬間、ドアがゆっくりと開いていく。
「ごめん、おまた…せ………、」
思わず動きが止まった。ドアの向こうから現れたのはテソンではなく、
「………え…?」
俺より高い背、長いまつ毛に大きな瞳。綺麗な鼻筋に薄い唇。少し痩せたのか、顔の輪郭が前よりもほっそりとしている。
「…………タプ、ヒョン?」
声が上擦った。名前を呼ぶと、彼は目を伏せて、ゆっくりとその身体を端にずらす。
「…………………入って」
久しぶりに聞いた声に、身体が重くなっていく。空っぽの身体に徐々になにかが入っていく。
「…………うん」
俺は小さく頷くと、彼の横をすり抜けるように部屋に入った。
座るように促され椅子に腰掛ける。カーテンの隙間からは真っ暗な空が見えた。立ったままの彼を見上げる。やっぱりあのときより頬が少し痩けた。
「………悪い、驚かせて」
「いや…全然…」
「…テソンにお願いして、連絡とってもらった。どうしても………ジヨンに、会いたくて」
呟くように言わた言葉に、胸のあたりが熱くなっていく。じわじわと、身体の内側から燃えていくように。
「……………ごめん」
トップは深々と頭を下げる。その肩が小さく震えていた。
「迷惑かけてごめん。みんなにも、ファンにも…ジヨンにも。許されないことをしてしまったのはわかってる。こんな俺が、お前に会う資格ないってことも…わかってる。けど……どうしても、謝りたくて」
「……」
「どうしても………会いたくて。本当に、ごめんなさい」
しん、と部屋が静まり返る。ふと、頭の奥で、自分の歌が流れた気がした。
「………顔、上げて?」
彼は体勢を変えない。から、俺は立ち上がってその頬を撫でた。初めてキスを交わしたあの夜みたいに。
「…タプヒョン」
ゆっくりと名前を呼ぶと、彼はそろそろと顔を上げた。不安に揺れる瞳。きっと俺も同じくらい揺れてる。
「………そんなに何度も、謝らないで」
「…ジヨン、」
「俺が今聞きたいのは、それじゃない」
「……」
「…だって、君のために歌ってるんだもん」
「っ、」
『ねぇ全部許すからさ』
『一つだけお願いがある』
『早く僕の元へ帰っておいで』
「……ねぇ、タプヒョン」
彼の顔が少しずつ歪んでいく。瞬きの拍子にその目から涙が1粒こぼれ落ちて、そのあとを追うようにポロポロと流れた。その雫が落ちて俺の中入っていくみたいに、身体の中が満たされていく。
ああ、久しぶりに身体が重いな。
「……………………………ただいま」
様々な感情が一気に流れ込んできて、頭の先から指先まで通っていくような。まるで血が流れるように全身が熱くなって、あの日に置いてきた全てが帰ってきたような。無くしてしまっていた半分が戻ってきて、久しぶりに一つになったような。なんだか上手く表現できないや。
「…………うん、おかえり」
ずっと待ってた。あの日からずっと。
「君が好きだよ」
月が綺麗だね。
皆様お付き合いいただきありがとうございました!すれ違う2人何回擦んねんてくらい書いてる。でもそれが好物。今回はいつも以上に矛盾点ありありのご都合主義でしたが書いてて楽しくはあった。
読んでくださりありがとうございました♡