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<凌太>


本来なら八景島に行く予定だった。


しかし、目の前で小さくなって頭を下げている松本ふみ子の両親に隣に座っている瞳が「どうぞおかけになってください」と声を掛けている。


松本ふみ子がマンションで暴れた翌日、父親が連絡をしてきた。

職場の近くに借りていた部屋の冷蔵庫の冷凍室から使用済みコンドームが出てきて、その中の体液は俺の物だと伝えてきた。

納得がいかないようであればDNA鑑定をすると言っていたが、松本ふみ子の行動を考えればその通りなのだと思う。


関係があったのだからストーカーの原因は俺にもあると言いたいのだろう。だから、そっけなく答えた。


「それで?」


「娘を弄んで捨てたのだから、原因は甲斐さんにあると思ってます」


思った通りだが

「松本ふみ子さんは高校の時から俺の行動を見張っていたのではないですか?GPSまで勝手にダウンロードして。それから、語弊があるようですが、捨てたという言葉は合っておりません。そもそもお付き合いをしていたわけではないですから」


「それは・・・・しかし、体の関係が」


父親はしどろもどろになってきている。

弁護士を立てず父親本人が交渉をしようとしているようだが、他人事だが悪手だと思った。


「体の関係があったのだから示談にしてほしいということですよね?わたしとしては、事実を明らかにして今後、わたしにも奥山さんにも接触をすることがないようにしていただきたい。もし、また何かしらの接触があれば示談という選択はなくなると思っていただければ結構です」


「そうしていただきたい。娘にもこの先の人生があります」


「わたしはどうとでもなりますが、奥山さんに関しては一生残る傷、もしくは最悪であれば命を落としていた可能性があります。たまたま、知り合いが居合わせて事なきを得ましたが、とうてい許される行為ではないですし、奥山さんがどうするのかは本人が判断をすると思います」


松本ふみ子の両親は下を向いて「もちろんです」と、やや揺らぎのある声で答えた。


「ところで本人はどうされているんですか?」


謝罪と示談のお願いで本人が不在であることの説明を求めると、父親はポツリポツリと話を始めた。


どうやら部屋から高校の時からの俺の“私物”が大量に出てきたようだった。

消しゴムやシャーペンなどのこまごました物が無くなったとしても、それほど気にしていなかったが、それらは日付とコメントをつけて松本ふみ子の部屋から出てきた為、恐怖を感じた両親は翌日には医療センターに連れて行ったとのことだった。


こちらで作成した誓約書を父親に渡す。


「よく読んで理解してからサインをしてもらってきてください」

そう言って誓約書を手渡すと頭を下げながら受け取っていた。



「奥山さんにも謝罪をさせていただきたい」


そういう話だった為、今、隣に瞳がいて目の前に松本夫妻が座っている。



「娘が奥山さんにその・・・待ち伏せをしていたと聞きました」


言いたくないのはわかるが、本人も連れて来ず曖昧に濁していいはずはない。


「待ち伏せではなく、アイスピックを持って襲い掛かろうとした。が正しいです。そして、それ以前にもネットに奥山さんに対しての誹謗中傷を書き込んでいました。正く現実を受け止めない限り謝罪にならないと思います」


そう伝えると母親はさらに深く項垂れたが父親は俺を睨みつけると「そもそも、ふみ子がああなったのはあなたが」と言って一拍置いた時


「わたしがふみ子さんと関係を持ったからというのであれば、そんな相手は何人もいますし、松本さんあなたは過去に、たとえばご結婚される前には誰とも関係を持ったことがないんですか?奥様としか関係を持っていなかったんですか?」


父親は一瞬項垂れている奥さんをチラリとみてから「そんなことは・・・ない」と尻窄みな返事をした。


「でしたら、その女性がストーキングや凶行をしましたか?」


「いえ・・・・」

と答えた後しばらく沈黙が続くき


「申し訳ありませんでした」


父親は小さくつぶやいた。



「先日も言いましたが、事実を現実をきちんと受け入れてください」


隣で黙ってやり取りを聞いていた瞳は、松本ふみ子の父親に過去の女性の話をした時、俺の足を軽く蹴って止めようとしたが、この場ではきっちりと伝えるべきだと思った。


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