合わせると、まぁ、最初よりはマシだけど、俺やドラムもダメ出しがあり、修正しつつ何回か合わせるんだけど、キーボードが悪浮きし始めた。何度やっても涼ちゃんの負の部分がありありと音に乗ってくる。
大森「…。ストップ。……。涼ちゃん…、今日は…出てくれる?」
藤澤「えっ…。」
大森「今日はもう弾かないほうがいいよ。ってか、弾けないでしょ?今日はその音しか鳴らせないだろうから、スタジオ出てくれる?」
部屋の中に緊張が走った。元貴が涼ちゃんに怒っている。…ように見えているんだろう。
大森「みんなに迷惑だよ。俺達の為に集まってくれてるの。見て。沢山来てくれてるよね?…意味のあるものにしたいから、今日は、…出て。」
涼ちゃんは元貴を見つめて…立ち上がる。
藤澤「…はい。…皆さん、ご迷惑をお掛けして大変…申し訳ありません。後日、また…よろしくお願いします。」
涼ちゃんは深々と頭を下げてスタジオを出ていった。
元貴の言うことはもっともだけど…ちょっと厳し過ぎないか…?
若井「元貴。」
大森「何?若井。」
真っ直ぐ俺を見返す。
あ、これは…。決して涼ちゃんにイラついてキレたわけじゃない。…涼ちゃん…。愛されてるな。
でも、今の涼ちゃんに伝わるかな…。
大森「ごめ~ん、みんな。キーボード抜けるけど、今日の予定までやっちゃうよ〜。」
いつもの調子に戻して緊張を和ませる。
このバンドは元貴が中心だから、元貴が和めば雰囲気はある程度戻る。ヒラヒラと動く元貴の手が目に入る。
気ぃ使いめ…。震えてんじゃねぇか。
スタッフ「キーボードは無しで行きますか?」
大森「…俺弾くよ。」
スタッフ「藤澤さん居なくても大丈夫なんっすね!大森さんで行きますねー。」
っ!アイツ!いちいち何なんだよさっきから!
俺はあからさまに不機嫌に元貴に近寄る。
若井「なぁ、本当に弾くのか?」
大森「…今日の涼ちゃんよりマシでしょ。」
元貴…。もう少し肩の力…抜けよ…。
若井「分かった…。」
俺はそれ以上、何も言えなかった。
流石としか言いようがない。元貴はほぼ弾けた。
でも、それは涼ちゃんの、俺達の音ではない。俺達の曲は、涼ちゃんの音で成立するように元貴が作っている。
ただ、実際、涼ちゃんが抜けてからは驚くほどスムーズだった。あっという間に合わせを終えて、
大森「んん〜。調子とかリズムとかはいい感じじゃない?」
サポメン「そうね〜。」
大森「じゃ、今日は終わりっす〜。お疲れでした〜。」
サポメン「涼ちゃんに、大丈夫だって言っといてくれよ。俺もボロボロだって。」
大森「…ありがと。伝えておく。喜ぶよ。」
元貴は少し肩の力が抜けたように見えた。
大森「スタッフ様々達も、今日はお騒がせして申し訳なかったです。次の藤澤は大丈夫なので、またよろしくお願いします!では、解散して下さーい!」
と、頭を下げた。
みんなが片付け始めるのを見計らって、俺はスタジオを出る。
…あそこにいるはず。
二話、三話連投ですが、読んで下さい!
コメント
3件
もう本当に大好きです🫠🫠 どうしたらそんなに上手に書けるの😭😭