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スタジオを出た俺は急いで外階段に向かう。
俺と涼ちゃんが落ち込んだら行く場所。元貴は…全然来ないけど。
やっぱり、いた。階段に座って、膝を抱えて顔を埋めて、小さくなって…
俺と同じくらいの身長なんだけど…ちんまり丸まって…。
若井「…涼ちゃん。」
顔を上げた涼ちゃんは、泣き腫らした目をしていた。
藤澤「…っぅ…っ…わ、わか、いっ…!」
俺を見て、またボロボロと涙を零す。
俺は涼ちゃんを抱き締めながら、
若井「…うん、うん、元貴も…」
分かってるから。と、言おうとしたら、
藤澤「俺っ!、お、れっ!元貴…元貴に、あんな…こと…っ、言わせて…元貴っ…違うのに…俺…っう…うっ……。」
俺呼びになっちゃってるよ。自分を責めてる時はこうなる。無意識みたいだけどね。
俺は黙って涼ちゃんの頭を撫で、背中をさする。
藤澤「…っ、俺が…ダメっ…だか、ら…できない…っから…元貴っ…俺…かばっ、て…っ、うっ…冷たい…奴…みたいにぃ……」
あぁ…元貴…大丈夫だよ。俺達の涼ちゃんは、本当にキレイな生き物だね…。
若井「うん…うん…大丈夫だよ。大丈夫。ね、深呼吸しよう。」
すぅ~はぁ〜…一生懸命、呼吸を整えようとしている。散々泣いたので、中々落ち着いてはこない。
藤澤「…ぅ…若井…っ…元貴…とこ…っ…行って…っ…スタッフ…さん…っ…たち…元貴…変に…っ…思われ…ない、ように…言って…」
しゃくりあげながら、俺の肩を掴んで言う。
若井「今は元貴の印象より、涼ちゃんの方が心配なんだけど…。」
藤澤「っ…ダメっ…行って…っ…お願い…っ…」
そう言って、俺を押し返す。
頑固なんだよね。どいつもこいつも…まぁ…俺も?
若井「分かった。でも、待っててよ?一人で帰んないでね?」
藤澤「…っ…ぅん…」
涼ちゃんの頭をポンポンとしてスタジオへ戻る。
途中の廊下で、スタジオの方がやけに騒がしいことに気付いた。
ガタン!ドンっ!
マネージャー「大森さん!落ち着いて!」
!元貴!?
俺は急いでスタジオに入る。
元貴があのおかしなスタッフを壁に押さえつけて胸ぐらを掴んでいる所だった。
若井「おい!元貴!何してんだよ!?」
腕を掴んで離させると、俺の手を振り払いスタッフを睨みつけて言った。
大森「お前、二度と顔見せんなよ。」
元貴が俺達以外に感情をぶつける事は今までに無かった。特にスタッフさんは短い付き合いの人も多いため、表では何でもサラリと流して、要らぬ悪評が立たないようにコントロールしていた。
若井「待て!元貴!」
俺の言葉を無視して、自分の荷物を手に取るとスタジオを出ていった。
残された俺はマネさんから事情を聞いて、残りのスタッフさん一人一人に頭を下げて、帰ってもらった。
今日は俺もマネさんも謝ってばっかりだな。
最後に、あのおかしなスタッフについては、精一杯の笑顔で、
若井「元貴も言ってたけど、もう二度と来ないでね。顔見たら殴っちゃいそうだからさ。」
と、言って追い出してやった。
マネさんが、
マネージャー「…ふぅ…。今日はバタバタしましたね。」
と、俺の所にやってきた。
若井「マネさん、ごめんね。」
マネージャー「これも仕事のうちですから。」
そう言って笑う。
若井「もう一つ、あの変なスタッフ間違っても入らないようにお願いできる?」
マネージャー「はい。もちろんです。あの人、本当に失礼でしたよね。大森さんにやけに馴れ馴れしくて…。」
若井「結果、キレられて…何だったんだろう。」
マネージャー「…あの。大森さんなんですけど。」
若井「?」
マネージャー「藤澤さんの事、辞めさせたりとか…無いですよね?」
元貴、大成功だわ。もっとやり方あっただろうけどな。
若井「無いよ。絶対無い。…あれね、涼ちゃんの事、守ってんだよ。」
マネージャー「えっ?でも、あんなに怒って…。」
若井「怒ってないよ。あれ以上、弾けなくて自分を責めがちな涼ちゃんが壊れないため、周りの皆んなにあれ以上できない奴って思われないために、追い出したんだ。」
そう。涼ちゃんも分かってた。元貴を怒らせたって言うかと思ったけど、違ってた。
涼ちゃんと元貴の仲をみくびりすぎてたな。
若井「涼ちゃんに嫌われるかも、周りに酷い奴だと思われるかもしれないのにね…。」
マネージャー「…大森さん。怖いと思って申し訳なかったです。」
若井「マネさん。元貴の作戦成功だから、引っ掛かってくれてありがとう。今日はもう上がって下さい。ほんっと、お疲れでした。」
マネさんも帰した。