_堕天使 side
部屋で一人考え込む。
あの組織邪魔だなぁ…。
そして弾かれたように立ち上がる。
『邪魔なら潰せば良いじゃん』
本部のどこかでサボっているであろう月ノちゃんを探しに行く。サボっている、と言っても、幹部には大抵任務は回ってこないで、少し間違えかもしれない。でも足立くんは空き時間があれば隊員に指導してるし、羅生くんは大体、武器の確認とかしてるし、茜くんも隊員と遊ぶって言う名目で稽古してるし、黒瀬くんは普通にパトロール行ってくれるし。幹部であんなに自由にしてるの月ノちゃんくらいじゃない?
“死神”に名に恥じないようにしてほしいのになぁ…。
っていうか、もし私が死んだら次代頭は月ノちゃんだし。なんだろう、リーダーとしての器って言うの?…まぁいいか。
私は死なないから。
『あ、月ノちゃん見つけた!!』
『またサボってたでしょ!』
月「…、いや、サボってない」
『どう見てもサボってるんだよそれは』
屋上の柵に腰かけて登っていく月を見つめていた月ノちゃん。私の声に気がついて、振り返るなり嫌そうな表情を浮かべる。
『ねぇ月ノちゃん、遊ぼ?』
そう言うと、月ノちゃんは口角を上げた。柵に手をつき、こちら側に跳ぶ。
月「勿論」
本部から出てすぐ北。整備がされている訳のない道を突き当りに進んでいくと、行き止まり。というより、見えない扉があるの方が正しいかな。そんな扉を蹴り破る。
月「うわ…、」
『なに?』
月「いやなんでも」
なんて言ったかなんて分かってるけど、正直なんだって良い。私からしても、月ノちゃんは本当に怪物だと思うから。怪物って言うかなんだろう?闇社会でしか生きることを許されない破壊神みたいな…?それこそ”死神”っていう異名、ぴったりだと思う。
扉をこじ開けた先には、到底闇社会を生きる者たちの本拠とは思えない綺羅びやかな景色が広がっていた。映画でしか見ないようなレッドカーペットや、凝視したら失明してしまいそうな程に輝くシャンデリア。そして私達を見つけたのか、大きな扉から走ってくる黒服の人たち。まぁそんなのどうでもよくて。
『さて、お仕事しますかぁ…』
視界の隅で髪が揺れる。
月「姫、あたし何すれば良い?」
『好きなように動いて良いよ』
返事の代わりと言わんばかりに、月ノちゃんが強く地面を蹴った。
流石だな〜…。
『私も頭領としてちゃんとしなきゃ』
手首につけたリストバンドの星がそよ風に吹かれて揺れる。
『暗夜、天飛、輝星、 ”夕越”』
詠唱よりも早く、私の指先から鋭い閃光が走る。それに伴って、場が一瞬凍りつく。あれ程までに主張をしていたカーペットは黒く焦げ、びりびりに破れている。あれ程まにで輝いていたシャンデリアは、本来の輝きを失い、地に墜落。そして黒服の人たちはあまりの眩しさに失明し、気絶をしていた。というけれど、先ほどまで光源としていたシャンデリアが機能を失ってしまったので、自分の能力か何かを使わないと、如何せん先が見えない。
詠唱はせずに、指先に少しの明かりを灯す。あんまりやったことないからちょっとだけ調節が難しい。そうしながら、奥へ奥へと進んでいく。
_「おや」
唐突に声が聞こえた。
『…、頭自らお出迎えですかぁ?』
_「それは君もだろう」
『今の私はただの個人だよ』
だから貴方を殺すね。言い放ち、能力準備をする。相手は少し構えるような動きをした。けど、
『”朽芽”』
相手の鳩尾をがつん、と閃光が撃ち抜いた。そしてその閃光は留まることを知らず、奥へ奥へと進んでいく。あ〜…、建物壊れちゃった。月ノちゃん大丈夫かなぁと呑気なことを考えていると、瓦礫が私の上に落ちてきそう。特に避けるでもなく、能力を発動するわけでもない。そこに立ち尽くしていると、来るはずの瓦礫の衝撃は来ない。
月「あたしのこと信用しすぎだって……」
瓦礫を一発で撃ち抜いた信頼できる相棒がそこには居た。だから私は死なないんだ。
これからもずうっと、ね。
____第二章 怪物 閉幕
____第三章 崩壊 開幕
コメント
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やっぱ俺両紅がだいすきだ おまえらもう、ほんとに、だいすきだ 相手を心から信用してる感じがたまらん、ほんとーにたまらん、すき 俺がまとめて養う