『月影の魔法 』
ルミナスの街では、もう何十年も魔法の光は消えていた。
少年カイは、街外れの古い図書館で埃まみれの書物を整理していると、月明かりの日だけ光る小さな本を見つけた。
手に取ると、かすかに温かく、心臓が高鳴る。好奇心に抗えずにページを開くと、そこには影の魔法と呼ばれる不思議な術が記載されていた。
カイは恐る恐る呪文を唱えてみる。すると、目の前に小さな精霊が現れ、ひらひらと街を飛び回った。
次の朝、街の人々は小さな奇跡に驚いた。
散らかった広場はきれいに整い、子供たちの笑い声が響く。
カイは、心の中で微笑む――自分の魔法で人を喜ばせられるなんて、夢のようだ。
しかし、影の精霊が消えると同時に、カイは気づく。自分の影が少しずつ薄くなっていることを。
喜びの代償は、自分自身の存在の一部。
カイは月明かりの下で、影魔法を使うかどうか迷った。
その夜、カイはそっと決めた。
たとえ影が薄くなっても、誰かを笑顔にできるなら――月影の魔法を、そっと信じてみようと。
おしまい🌙







