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__神様はこの世には存在しない。

九つにして、少女はそれを心得ていた。

哀れみの目だけを向けて、ただ通り過ぎていく街の住民。

愛など、同情など、生きていく上ではなんの役にも立たないことを、九年の生涯で思い知らされた。

産みの母親の顔も知らず、真冬の寒い夜孤児院のそばに捨てられた。 母親は少女に名前すら与えなかった。 一言も話さない彼女を、孤児院の孤児達は不気味だと嘲笑い、挙句の果てに孤児院を追い出されてしまった。

唯一の寝床を失った少女に残された道は、身体を売ることのみだった。

今日も、少女は売り物として街の外れに座り込む。 疲れた旅人が通りかかれば、声をかけて、身体を重ね、代金を貰う。それが少女にとっての日常だった。もはや痛みも、悲しみも感じることはなかった。

少女は一生、孤独に生涯を終えるのだと絶望していた。

_彼らに出会うその日まで


「そこの貴方。」


声をかけたのは、身なりを正した一人の女性だった。茶髪に茶色い目。胸元に紫色のブローチを付けたこの人は、人目で位の高い人なのだと分かる。 彼女の背後に立つ青年が、この人の主なのだろう。

少女は目だけを彼女に向ける。


「こんなところで何をしているの。お母様やお父様は?」


少女ら小さく首を振った。

青年が少し目を見開くのが見える。


「そうなの」と女性が驚いたように言った。「もし良かったら、私達と一緒に家へ来ない?」


女性は少女に手を差し伸べた。

しかし、生まれてこの方誰かの愛情を感じたことのない少女に、その女性の行動は理解できなかった。 感じたことのないこの感情は、少女の中で「恐怖」に置き換わる。

少女は女性の手を振り払って、路地裏へと消えてしまった。


***


しばらく走ったところで、少女はピタリと立ち止まる。

何日もものを食べていないので、体力の限界が来てしまった。まった。少女はその場に座りこむ。

そんな少女を、住民たちは見向きもせず歩いていた。

少女は俯きながら住民たちの声に耳を傾けた。

そこに、二人の女性が通りかかる。


「聞いた?夜が、この市場にやってきたんですって。」

「ええ?あの方はもう随分前に亡くなったのでしょう?」

「あれは先代。あの方の後継よ。」

「何をしに来たのかしらね。」

「さあ?攫う子供の品定めでもしに来たんじゃない?」

「ああ、怖い。うちの子にも外に出ないように言っておかないと。」


少女はぱっと顔を上げて、話をしていた二人の女性に顔を向ける。俯いていた少女がいきなり顔を上げて驚いたのか、物乞いとでも思ったのか、女性たちは小走りでその場を去ってしまった。

二人が話していた、「夜」というのが、一体誰のことなのか少女にはわからなかった。でも、どういう訳か”夜”と聞いて頭に思い浮かんだのは、さっき会ったあの青年の顔だった。

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